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創造空中都市『サイバーメタトロン』。  作者: 破魔 七歌 


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1/2

1.飛行少女ユーナ。

 




 ──時を数える概念など、とうに滅びた。


 命には限りがある……。

 久しい言葉だ。伝承は古びた。忘れ去られた記憶。今、網膜に浮かぶ光る言語は何処からやって来たのか。


「ユーナ、おはよう!」

「おはよう……。レシカ」


 そう聞こえる。現実の音とは違う。〝脳〟とか〝コンピューター〟とか。旧世界──古代の言語では、そう呼ばれていた〝何か〟。認識するもの。……言葉が音に変わる。


「どうしたの? ユーナ? 浮かない顔して?」

「顔? 鏡みたいだよね。皆、無表情で」

「あ、感情の表明? 忘れられた言葉って奴?」

「違うよ、レシカ。心……だよ」


 何かの希望だったのか願いだったのか。

 私とレシカは、街の地下に根を張る『共同生活施設コロニー』と呼ばれる居住空間で生活している。ほかの仲間たちとともに。今日も〝学校ハイスクール〟と呼ばれる、かつての成人に満たない〝人〟が通ったとされる場所に向かう。


 透過システムが張り巡らされた居住空間の壁に、青く浮かぶ空。そう見える。かつての、そう呼ばれていた。

 

 ……自動認証扉が、ピッと音を鳴らし小さく光る。それは、網膜に浮かぶ文字の色に似ている。

 

 レシカと私は、旧世界に存在した生命──〝種〟の模倣モデリング。ナンバー『001』〝人〟と呼ばれる存在──その〝皮膜〟で覆われていた。それも、識別保存ナンバリングは『17』──年端のいかない少女として。

 

 創造主は、誰もが知らない。見た者は……居ない。私たちを作った、〝存在〟。

 私たちの生活圏は失われた記憶を元に創造デザインされた空中浮遊都市『サイバーメタトロン』。

 なぜ、空に浮いているのか。誰もその答えに辿り着けない。体内に埋め込まれた〝知識〟と呼ばれた部位が反応する。それは、〝天国〟とも〝楽園〟とも。


 ──光る言語が網膜に浮かび上がる。

 

 青空にはかつての〝鳥〟が飛ぶ。それは、太古より創造デザインされ自動繁殖能力を保有する。私たちとは違う〝生命〟と呼ばれる存在だ。


「ユーナ、見て見て! 可愛い! 鳥さんたちは、羽根や羽毛でお空を飛ぶのね!」

「レシカは、鳥さんが好きなんだね」

「街に生えてる大きな森の樹も好きよ!」


 飛び跳ねるレシカの姿が網膜に映る。レシカは、〝人〟が喜ぶ動作プログラムをそのまま模倣している。

 空中浮遊都市は、かつての存在〝人〟が住んでいた〝街〟そのままに創造デザインされている。そして、私たちの行動基準は概ね〝人〟の模倣モデリングに委ねられる。けど──。


「ユーナって、良いよね? 視えない翼があるんでしょ? 背中に。鳥さんみたいな」

「レシカ。それは内緒。識別保存ナンバリングの大きな〝人〟に見つかったら大変だから……。それに、他の皆が怖がるといけないからね」

「怖がる? レシカはユーナのこと怖くないよ? でも、良いな……。レシカもお空を飛んでみたいな。ユーナみたいに!」

「ありがとう。レシカ。けど……。お空は危険だよ」

「なんで? 鳥さんたちは、あんなに元気で幸せそうなのに?」

「知らないことの方が、幸せだってこともあるから」

「どういう……こと?」


 レシカの網膜を宿す、大きくて水分を湛えた〝クリスタル〟。その部位が、不意に私を覗き込む。……〝海〟に似ている。それは、空の外側にある旧世界の──。

 〝心〟の正体は、私の中に埋め込まれた〝知識〟でも分からない。……レシカの言う感情の表明。忘れられた言葉。それが、震えている。私の中で。


 レシカと私。

 その姿を見れば……。まるで、記憶の中の世界を歩いている様に見えるだろう。もしも、かつて居た存在──旧世界に生きたとされる〝人〟が、今居る私たちのこの場所を見たなら。

 頭に埋め込まれた〝知識〟と呼ばれる部位が再び反応する。網膜に浮かぶ光る言語。

 〝森の樹〟と呼ばれる生きた大樹が、〝街〟の中心を覆う様にして天に枝葉を広げている。本物の〝生命〟。その中に、かつて栄えた立体金属群──〝ビル〟が、競うように乱立している。まるで、枝葉を広げた大樹を追い越さんばかりに。


「ねぇ。どう言うことなの? ユーナ? お空が危険って」

「良い? これは、お伽話の様な……昔話。そう。嘘か本当か、分からない。言っても忘れちゃうから」

「えー? 可笑しなの!」


 そう。旧世界──外側の世界のことは、私以外の誰かに話しても分からない。

 〝認識阻害〟

 その為に、この空中浮遊都市を出ようとしても、いつまでもその外側へは辿り着けない。特殊な電磁波がこの場所を包む様にして覆っているから。誰も世界に果てがあることを知らない。


「今日も、学校! 楽しみだね! ユーナ!」

「そうだね。今日の休み時間。何しよっか? レシカ?」

「ユーナと、お弁当食べる!」

「そればっかりだね。レシカは」

 

 学校──。

 形だけの〝人〟の模倣。それは、かつての〝人〟の願いなのか。それが幸せと呼ばれるものなのか……。   

 レシカの言う様に、鳥たちが幸せそうにしている──と言う事象は、〝知識〟の中にある〝情報データ〟と照らし合わせば分かる。争わないと言うことだ。けれども、外側の世界──旧世界を知る私にとっての使命とは真逆。矛盾している。与えられた理由。分からない。誰に? 詮索不可。不履行は実行出来ない。不快な〝エラー〟のメッセージ音が頭の深くで鳴り響く。

 

 有機物から得られる体内エネルギー変換と充填。レシカとのお弁当の時間は〝眠り〟に次ぐ大事な時間。その行為は、〝幸せ〟とも呼ばれている……はずなのに。


「ユーナ? 学校。つまんないの? もう直ぐだよ?」

「そうだね。ごめん、レシカ。……考えごと」


 ……私たちは、学校生活における〝制服〟と言う外装を身につけている。皮膜の露出が多くてヒラヒラと落ち着かないけど。

 これは、空中浮遊都市『サイバーメタトロン』に住む〝市民〟ならば、誰もが着用している武装変異特殊装置フィードバックプロテクターと呼ばれるもの。形態は多種多様。護身用で潜在する戦闘力を高く保有し、私たちに有利に働く。


 けれど……。制御不能な不測の事態──。

 イレギュラーや、アクシデントは、誰の身の上にも起こる。それは、何故か。想うに〝人〟を模倣モデリングされて創られた〝存在〟だから。私たちが。

 望まない争いは、常に起きている。この空中浮遊都市の内側でも外側でも。〝不幸〟と言う名の元に。旧世界より続く〝争い〟──。それに目覚め、覚醒した者の記憶は、抹消される。あるいは、その〝存在〟ごと。無かったことになる……。


「もう! ユーナ? 大丈夫? また、休み時間。良かったら話、聞くよ? ねっ! ユーナ! 元気……出して?」

「ありがとう。レシカ。レシカのおかげだよ。私が居られるの……」

「はいはい! じゃあ、ダッシュで急ごっ! あ。ユーナは飛ぶの、無しだからねー?」

「うん。分かった。ありがとう……レシカ」

 










 


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 新作ですね~。 素敵なものが書けるよう頑張って下さい! 私は今、また文字を書く&読むのが苦しくなってきたので、もしかしたらまたしばらくこちらをお休みするかもしれないです。 夏乃スミカさんが夢…
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