エピローグ
前世で事故死した私は、乙女ゲーム『ヒロインは恋するお年頃』の悪役令嬢に転生していた。悪役令嬢として断罪されたくないと願い、回避行動をとるもことごとく失敗。もう諦めてウォードの婚約者に収まり、婚約破棄&社交界追放の断罪に甘んじる覚悟でいたが……。
まさかの『ヒロインは恋するお年頃』という乙女ゲームの独自システムにより、断罪どころか婚約破棄まで回避できた。そして本来婚約破棄されているはずのウォードと見事ゴールインできた。
そう思ったが。
始まったのは不幸せな新婚生活。
ウォードは私に無関心・無反応だった。
でもこれは覚醒したウォードによると、彼なりの過剰な気遣いだったことが判明している。婚約者がいるのに、別の女性に気持ちが向かったことを、真面目な貴族であるウォードは心から恥じていた。ヒロインに目が向いてしまうのは、ゲームの強制力もあり、仕方ないのに。
結局は浮気者の自分と結婚した私に対し、申し訳ない気持ちが募り、どうせもう愛してもらえないと思っていたその当時のウォードは、空回りをしていただけだった。ウォードは決してシャルロンが嫌いなわけではなかったわけだ。
大きな変化はない。まるで鍾乳石が形作られるように。小さな変化がウォードとの間に起きていた時に、馬車の事故が発生。結果的にそれが大変化をもたらすことになった。
でもまさか、ウォードが……。
これは本当に驚きだった。
でももう、これで記憶が戻ることに、怯える必要もなくなった。ウォードと私は、間もなく本当に夫婦として結ばれることになる。
そう。
もう一度。
やり直しの結婚式を挙げることにしたのだ。二人だけで。リアベラ海を望む美しい教会で。
新たな幸せに向け、私とウォードは歩み出している。
ではその後、あの大男ミズードと闇組織はどうなったのか?
まず、地下に連れて行かれた女性たちは全員救出され、病院で治療を受けている。投与された薬を体から完全に抜くようにして、後は自分自身を取り戻すことから、始める必要があった。うまく間に合えば新年は、家族の元で迎えられるかもしれない。
次に闇組織は、逮捕した男達を尋問することで、壊滅的な打撃を与えることができた。ミンナント地区は強制執行で建物の取り壊しの案が浮上し、ここで一網打尽となりそうだ。そして大男ミズード達の裁判はこれからだが、極刑は免れないだろう。
ソアールとカシウスとは、王都に戻るまでを、ウォードを含め、楽しく過ごせている。
ただ、カシウスがライバルだと分かっているので、ウォードは気が抜けない。私への溺愛が高まっている気がした。
ソアールは変わらず私を慕い、懐いてくれている。いつかはラエル皇国に帰ってしまうソアールだが、今は実の妹と思い、可愛がっていた。
「シャルロン。本当にウェディングドレスはレンタルでいいのか?」
「ええ。二度目の結婚式ですし、王都に持ち帰るには、かさばり過ぎるわ」
「そうか。……新しい指輪もいいのか?」
「大丈夫。ウォードの愛があれば、他には何もいらないわ」
「シャルロン……」
二度目の結婚式は明日なのに。今日のウォードは、水色のシャツに白のスーツを着ているから、まるで新郎みたいだ。かくいう私も白のワンピース姿なのだけど。
冬なのに、まるで夏のような陽射しが降り注ぐこの街で。
ウォードと私はもう一度、夫婦として再スタートを切ることになった。
今度こそ、本当に身も心も結ばれ、幸せになるために。
「では買い物は終了だな」
「ええ。ブーケは明日、直接、教会へ届けてもらうわ」
海鳥の鳴き声が聞こえ、優しい風が、私とウォードのそばを吹き抜けた。
~ fin. ~
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いつもと作風違う作品でしたが、お楽しみいただけましたか?
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まさかのヒロインの行動により、一切の断罪回避行動に失敗した悪役令嬢の私。せっかく大好きな乙女ゲームの世界に転生したのに、このままでは終わってしまう……!
八方ふさがりで婚約破棄された悪役令嬢は、さらに翻弄され、まさかのバッドエンドから溺愛ルートに辿り着きました――!?
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