ち、違います!
「そ……それ、私です」
「! やっぱり。同じゲームの世界に転生したなら、きっとそうかと……」
そこでいきなりベッドから起き上がると、ウォードは正座をして土下座をした。「ごめんなさい」と言った後、盛大に「痛いっ!」と叫んだ。
「ダメです! 傷口が開いてしまいますから、横に、今すぐ横になってください」
慌ててウォードに駆け寄り、上半身を起こさせ、ベッドに仰向けにしようとしたところ……
「あっ」「わっ」
ウォードの胸に飛び込むようにして、勢い余り、倒れ込んでしまった。
「ごめんなさい!」
「大丈夫……」
そう応じたウォードだが、私をぎゅっと抱きしめたままだ。
「本当にごめんなさい。……あなたの人生を奪ったのは、俺です」
「そんな……事故だったんです。それに飛び出したのは子供で、その子供を避けようとした結果なのですから……。仕方ないです」
「……!」
感無量らしいウォードが、さらに力を入れて私を抱きしめた。
そんなに力を入れて大丈夫かと心配になってしまうが、痛ければ素直に「痛い」というので、大丈夫なのだろう。
しばらく無言だったウォードだったが、再び口を開いた時は、本当に申し訳なかったと謝罪が止まらない。そこで話題を変えるため、こんな質問をしてみた。
「前世で『ヒロインは恋するお年頃』を、乙女ゲームで遊んでいたのですか?」
「!? ち、違います! 違いますけど……妹がめちゃくちゃハマっていたので、食事の時に散々話を聞かされました。アイツ、自分が気に入った物はやたら勧めてくるから……だからプレイはしていませんでしたけど、詳しかったかもしれません」
「なるほど。ではシャルロンのことも知っていたのですね?」
「そうっすね……」となんだかぶっきらぼうに答えるので、その顔を見上げると、頬が赤い。
えーと、これは……。
「もしかしてシャルロンが推しでした?」
分かりやすく真っ赤になった。
なるほど。
理解できてしまった。
前世記憶を覚醒後、ウォードが激変した理由を。
推しのキャラとまさかの夫婦になっていた。だがその関係は冷え冷えとしたもの。それはもう驚いただろう。なんとか修復したいと思ったはずだ。
「すみません。俺、まだ若いから、人を中身から好きになるより、多分、見た目で好きになったと思います。シャルロンも妹にスマホの画面で見せてもらって、『すげー美人じゃん』と思って……」
なんて素直で真面目なんだろう。前世で大学生三年生ということは、私の三つ下なんだ。
「見た目から入るって、人間の本能的な部分もあると思いますから、それは仕方ないかと」
「でも、一緒にいるうちに、見た目ではなく、シャルロン自身のことがどんどん好きになっていました。これまで散々ウォードに冷たくされていただろうに。でもちゃんともう一度心を開いてくれて……。すげー嬉しかったです。絶対に俺が、新生ウォードが、幸せにしてやるって思いました。って、中身が別人ウォードで申し訳ないです」
これには思わずクスクス笑ってしまう。
「覚醒前のウォードが嫌いなわけではないですが、でも……今のウォードの方が、私は好きです。だからそこは気にしないでください」
「……前世で俺は……あなたを」「それはもう言わなくていいです」
その唇を指で押さえると、ウォードの碧眼がうるうると潤む。
唇を押さえる私の手を掴むと、手の平にキスをした後、改まった様子で尋ねた。
「お互いに転生者であることが分かりました。その上で本当に、俺と……わたしと夫婦でいいんですか? カシウス皇子……彼は君のことを」
「聞きました。カシウス皇子が以前のウォードに、宣戦布告していたことを。でも関係ありません。私はやっぱりあなたが……新生ウォードが好きですから」
「シャルロン……!」
ウォードの顔が近づき、私は瞼を閉じる。
キスをする……そう思ったまさにその時。
扉がノックされ、ワイリーとチャーチャの声が聞こえた。
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完結のお知らせです!
【全25話、サクッと一気読み】
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生!
でも安心してください。
軌道修正してハピエンにいたします!』
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