また無関心・無反応な
気づけば声を出し、泣いてしまっていた。
「……シャルロン?」
「へっ」
寝ていると思ったウォードが、目覚めている。
朝になれば目覚めると、医師は言っていた。目覚めるなんて、思ってもいなかった。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて手で涙を拭う様子を見たウォードが「やめるんだ」と少しキツイ声音で、私の動きを制止した。
「ハンカチはないのか?」
咎めるように指摘されていると感じ、サーッと血の気が引きそうだった。
これは記憶を……取り戻したのではないか?
チラッと私の着ている服に目をやると、ウォードはベッド脇のサイドテーブルの引き出しに、手を伸ばす。一段目の引き出しにはウォードの持ち物が入っており、そこにもハンカチがあった。
「ほら、これを」
少ししかめ面のウォードが、ハンカチを差し出す。
そのハンカチを受け取ろうとして、手が震えてしまう。
「ウ、ウォード、記憶を……取り戻したのですか?」
「記憶……?」
眉をくいっとあげたウォードの様子が、かつてのウォードと重なり、絶望的になった。
記憶を取り戻したんだ。
きっともうあの優しいウォードには戻らない。
これまで通り、また無関心・無反応なウォードになってしまう。
それを思うと、涙が再び、溢れ……。
居た堪れなくなり「ごめんなさい!」と叫び、病室から出て行こうとウォードに背を向けた瞬間。
「待て!」
手首を掴まれ、「……っう」という唸り声に、私の動きは止まる。
慌ててウォードを見ると、彼は私の手首を掴み、もう片方の手で掛け布団をぎゅっと握っていた。連動して私の手首を掴む手にも力が入る。
顔を伏せているウォードだが、その表情は苦しそうに見えた。
「ウォード……どこか具合が悪いのですか……?」
まさに恐る恐るで尋ねると、ウォードはなんだかその整った顔を崩した、トホホな表情で私を見上げた。
「……こんな顔、シャルロンに見せたくなかった」
少し拗ねたような声でそう言うと、瞳に涙を浮かべている。
「ど、どうしました!?」
「……痛い」
「えっ……」
「鎮痛剤はないんだよな? すごく……痛い」
そこでじわじわと理解する。
なんだか口調がきつく、しかめ面なのは、痛みを我慢していたから?
「もしかして背中の傷口が痛み、口数が少なく、口調がきつく、しかめ面になっていたのですか?」
「そう、その通りだよ、ごめん、シャルロン」
情けない表情のウォードを見て、私は全身の力が抜けてしまう。
記憶が戻ったわけではないようだ。
それが分かったので、ベッドのそばに置いた丸椅子に、へなへなと脱力するように、座り込んでしまった。
「ごめんな、こんなトホホな顔で」
「い、いえ、大丈夫です。傷口が痛むのですから、それは仕方ないことです」
「……それでシャルロンは、どうして泣いていた?」
これにはドキッとして、なんと答えようか迷ってしまう。
でもウォードは、自身の痛みを我慢していたが、それが限界であることを、私に打ち明けてくれた。ならば私も素直に話そう。
「ウォードが深い眠りについていると、医師に言われました。通常、こんな風に寝込まないと。そこでもしかしたら記憶喪失の時と同じで、今度は記憶を取り戻すのではないかと、不安になったのです。さらにウォードにもらった青い真珠のピアスも、あの闇組織に取られてしまって……。いろいろ悲しい気持ちが溢れ、そうしたら自然と涙が止まらなくなっていました」
「そうだったのか。……青い真珠のピアス……取り戻せないか聞いてみよう。でも大丈夫だ。もし見つからなくても、新しい真珠を……そうだ。ワイリーが言っていた。自分だけの真珠の買い付けをできると。つまりは母貝への核入れ体験をして、一年間、育ててもらう。そして自身で取り出すか、取り出してもらい、出来上がった真珠を贈ってもらえるサービスがあると。二人でこの地に来た記念で、この買い付け体験をしてもいいかもしれない」
ウォードのこの素晴らしい提案には、一気に気持ちが上向いた。





















































