↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/71

考える

 牢屋と言われる部屋がある場所に連れて行かれる前に、一畳ほどの物置のような部屋に連れて行かれ、身に着けている宝飾品、ドレスを脱ぐように言われた。代わりにネズミ色のワンピースを渡され、それに着替えることになった。


 ただ、ウォードがくれた青い真珠のピアスだけは、渡したくないわ。


 そこで隠し持っていた金貨で、部屋の見張りをしていた女に交渉した。するとあっさり応じてくれたのだ。安心したのも束の間。ワンピースに着替え、部屋の外に出た瞬間、ここまで私を連れて来た目つきの怖い男に脅され、結局ピアスも取られてしまった。見張りの女が男に告げ口をした結果だ。


 悪党は、どうやったって悪党なのだわ。信じてはいけなかった。


 その後、連れて行かれた部屋。そこにはソアールくらいの子どもから、私ぐらいの年齢まで、幅広い年齢の女性たちが、閉じ込められていた。窓は板で塞がれ、日中とは思えない程、暗い。


 その部屋にいる女性は皆、手枷や足枷をつけられているわけではなかった。でも全員、無気力な顔で床に座り込み、無言だ。


 その部屋に入ると、程なくして私を騙した女が、昼食を持って来た。しれっとパンとスープの載ったトレイを渡し、部屋を出て行く様子に、悔しくてならない。でもどうにもできなかった。


 武術の覚えがあるわけでもなく、ここから逃げた後の算段もない。頼みの綱はソアールだが、この場所に連れてこられる時、ソアールは私に抱きつき、周囲の様子はろくに見ていなかったと思う。そして警備隊の屯所近くで放置されるまでの間、眠った状態だと思うのだ。


 そうなると、私がどこに攫われたかなんて、カシウスに伝えることはできないわね。


 ため息をつき、渡された昼食を食べるかどうか、迷うことになる。


 というのも、部屋にいる女性達の様子を見るに、何か薬を飲まされている気がしたのだ。そのせいで全員、無気力になっているのではないか。


 もしそうなら、食事にその薬が混入されている可能性が高いわ。


 ひとまずパンをちぎり、確認するが、こちらに薬が混ざっている気はしなかった。そこでパンを食べながら、一緒に出されたスープを観察することになる。


 具などない、まずそうなスープかというと、その真逆。


 沢山の刻んだ野菜に、一口サイズのベーコンが沢山入っている。その香りといい、湯気といい、食欲をそそるものだ。しかも私は昼食を摂っていないので、お腹が空いている。


 間違いないわ。ここに薬が入っている。でも美味しそうだから、みんな食べてしまうのね。それが今の状態。


 食べたら、私も彼女達と同じ状態になってしまうと思えた。でも食べない選択肢はないと思った。食べないと、無理矢理でも食べさせられる可能性がある。


 どうするか迷っていると。


「!」


 驚いた。

 無気力だと思っていた、少し離れた場所に座る女性が、私が手をつけずにいたスープの入った深皿を、手に取った。その上でスプーンも使わず、いきなりお皿に口をつけ、あっという間に飲み干してしまった。


 その顔を見ると、やはり瞳に輝きはない。

 ただ、スープを飲んだことに満足しているようだった。


 飲まない方がいいと思っていたスープは、思いがけず、見知らぬ同い年くらいの女性が飲んでくれた。こうなると後は、あの女が空になった皿などを下げに来た時、きちんと食べたと思わせることが、肝心だろう。


 つまりは私もこの部屋の女性達と同じように、無気力になったフリをしないといけないわね。


 それは多分、できる。


 ただ、そのフリをしたところで、夜までに助けが来ないと、私はお終いだ。競売せりにかけられてしまう。つまりは人身売買だ。自力で逃げるのは無理に等しい。


 そのことを認識すると、フリをするまでもなく、表情は暗くなり、目から光が失われる気がする。同時に、気分も沈み込む。


 やめるのよ。


 今はネガティブなことを考えないように。


 そこでなんとか別のことを考える。


 まさかリアベラ海に面したこの美しい街で、人身売買のようなことをしているなんて。これは完全に人を攫い、競売にかける、闇ビジネスだ。


 何より、あのリーダー格の大男の元、このビジネスにこの辺り一帯の人間が全員、関わっていた。完全に組織的な犯罪であり、この一画に連れ込まれたら、助かる見込みはない気がする。


 きっと私はもう助からないわね。


 そう考えると、ここにいる他の女性のように、無気力になった方が楽だったのではないか? 正常に思考できる状態で、競売にかけられるなんて。


 そこでノックもなく、いきなり鍵を開ける音がして、あの女が部屋に入って来た。そしてトレイの上の皿を見る。口元がニヤッとした女は、そのままトレイを手に、私を一瞥して部屋から出て行った。


 今の様子からも、やはりなんらかの薬は、スープの中に入っていたことを実感した。


 実感はできたけれど……。


 ネガティブな感情が湧き起こりそうになり、歯を食いしばる。


 私は競売にかけられ、誰かに売り飛ばされるのだ。もうそれでおしまいだろう。後になってウォードが見つけてくれるかもしれない。だがその頃には手遅れになっている。


 仮にそうなると、私はこの闇組織に、資金提供することになる。私という人間を売り払ったお金は、闇組織の懐に入るのだから。


 そこであの大男の顔が浮かび、「負けたくない!」という気持ちが強まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

●胸キュンな恋物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。