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わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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彼の空元気

 一応、耳を傾けているが、ウォードの表情は冴えない。

 カシウスのことが話題に出ると、ウォードは途端に元気をなくしてしまう。

 彼とは何もないのに。


 でもそうこうしていると、貸別荘に到着した。


 すぐに貸別荘のメイド達が、入浴の準備を整えてくれる。


「わたしは隣室にいるから、ゆっくり入浴するといい。水分は足りていない可能性があるから、入浴前に、水を飲むように」


 ウォードは私を馬車から下ろすと、そう言って気遣ってくれる。

 確かに水分は足りていない気がしたので、部屋に戻ったらすぐに水分補給をしようと誓う。


 こうして部屋に着くと、ウォードとワイリーを残し、私はチャーチャと共に浴室へと向かった。すぐに着ていたワンピースを脱ぎ、湯船に浸かる。


 程よい温かさのお湯に、心がほぐれた。


 のんびり温まり、体と髪を洗い、お風呂から上がると……。


「若奥様、左の首筋の後ろの方に赤い痕がありますね。虫にでも刺されたのでしょうか?」


「え、そうなの?」と鏡を見て、「本当だわ」と驚くことになる。でも床に近い場所で寝たのだから、何か虫がいたのかもしれない。


「塗り薬をとってきますね。髪はしばらくアップにしないようにしましょう。キスマークだ!なんて勘違いする方がいるかもしれませんし」


「まあ、キスマークだなんて! 髪はおろすわ。チャーチャ、塗り薬をお願いね」


 バスローブを着た後は、髪を乾かし、塗り薬をつけてもらった。


 髪を乾かしてもらっている時から、あくびが止まらない。

 ある程度、乾いたところで、タオルを広げ、ベッドに横になることにした。


 昨晩は、カシウスの手のマッサージのおかげで、ちゃんと眠ることはできたのに。

 あ、でも寝付くのが遅かったから。

 欠伸をする私にチャーチャがこんなことを言う。


「ベッドではなく、床で寝たような状態だったのですよね? 熟睡、できませんでしたよね?」


「そんなことはないわ。カシウス殿下がね、こうやって、マッサージをしてくれたの」


 そう言ってチャーチャの手を取る。


「こんな風にね、すごく気持ち良かったわ。カシウス殿下って、何でもできるのよ。ティーマスターの資格も持っていて、あの避難スペースにあった安い茶葉で、とても美味しい紅茶を淹れてくれたのよ。そしてこれ。カシウス殿下と暮らしたら、リラックスして毎日笑顔でいられそうよね」


「さすが皇太子になる方は違いますね。……なんだか私も眠くなってきました」


 カシウスのマッサージを、見様見真似でチャーチャに試すと、瞼が半分閉じ掛かっている。どうやら上手くできたようだ。


「でしょう。私もカシウス殿下にマッサージしてもらっている間に、いつの間にか眠ってしまったわ」


 そんな話をしているうちに、私はすやすやと昼寝になってしまった。


 その時、寝室の扉の向こう側に。

 ティーセットを載せたトレンチを手に、ウォードが息を呑んで立ち尽くしていたなんて……気づくことはなかった。


 ◇


 昼寝から目覚め、チャーチャを呼び、ドレスに着替えた。


 麻の白のドレスは涼しくて快適だ。


「ウォードはどうしているの?」


「しばらく隣室でお茶をしていましたが、結局、ワイリー様に呼ばれ、執務をされています。なんだかんだで、お屋敷から手紙が届いているようですよ。王都に残っている商会の方や、代理でウォード様宛の手紙を確認しているヘッドバトラーからの手紙です。『年明けから動けるように、承認してほしい』とか『これだけは今のうちに決裁して欲しい』とか。いろいろジャッジが必要なようです」


 おそらく完全にオフになるのは数日しかないのね、きっと。


 とりあえずチャーチャに様子を探ってもらうと、昼食は用意させてあるので、ダイニングルームで一緒に食べようという返事をもらうことになった。


 こうしてダイニングルームに着くと。


 なんだか疲れた表情のウォードが、席に着いている。私は昼寝により、かなり元気になっていた。本当はウォードも、一緒に昼寝できたらよかったのでは? なんだかんだで、心労が溜まっていたと思う。


「ウォード、お疲れなのでは?」


「! そんなことはない。いや、そうでもないか。まあ、少し執務に追われていただけだ。……聞くと、缶詰料理ばかりだったのだろう? 捕れたての魚で作ったスープと、今朝市場で仕入れた鴨のローストを用意させた。お腹も空いただろう、食べよう」


 そう言ってウォードは、笑顔を見せているが……。

 それは頑張って作っている表情に思える。

 それを指摘したくなるが、ここはもしかすると、スルーしてあげた方がいいのかもしれない。


「ウォード、気遣っていただけて嬉しいわ。ありがとう。缶詰もなかなかいけたのだけど、捕れたてのお魚とお肉には、敵わないわよね。何よりこの焼き立てのパンの香り! たまらないわ」


 椅子に腰を下ろしながら、さらに続ける。


「そうやって私を気遣ってくれるでしょう、ウォードは。同じように私もウォードのことが気になるわ。……私で力になれることだったら、協力したいと思っているの。だからそこはお互いに遠慮なくで、相談してくださいね。いつでも待っています」


 私の言葉にウォードの碧眼は、潤んでいるように見える。


「……シャルロン、ありがとう……。そうだな。うん……そうする」


 気持ちは伝わったと思う。でもウォードは何か話そうとはしていない。つまり今、空元気を振りまいている理由を、話すつもりはないのだろう。

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