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わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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あなたを想うと……

「……眠れないのですか?」


 衝立を隔て、隣で横になっているカシウスが、小声で尋ねた。


 私は壁際で寝ており、その隣にカシウス、護衛の騎士、船頭三人組と川の字のように並んで寝ていたのだ。


「ごめんなさい。今の音で、目が覚めてしまいましたか?」


「いえ、眠れずにいました」


 なんだ、カシウスも。

 でもそうよね。普段、ふかふかのベッドで休んでいるのだ。こんなすのこの上に布を敷いたような状態では、眠れないだろう。


「床に直接寝るようなこと、カシウス殿下は初めてですよね」


「そうでもないですよ。私は騎士見習いを経て、正式な騎士に任命されています。皇太子として必要なのは、頭脳だけではなく、武術も含まれます。訓練で野営の経験もあるので、地面に眠るのは、これが初めて、というわけではありません」


「な、なるほど……。そうだったのですね」


 それではなぜ、今、起きているのだろう?


 その疑問はカシウスに伝わったようだ。


「隣にシャルロン様がいると思うと、寝付けません」


 それはつまり……うーん、普通は女性が隣にいる状態で眠るなんて、既婚者でなければないことよね。カシウスは未婚であり、婚約者もいなかった。そうなると横に女性がいるというのは、いろいろ緊張してしまうのだろう。


「私がいるばっかりに、無駄に緊張させてしまい、すみません」


「甘酸っぱい緊張感ですけどね」


「!?」


 カシウスは何を言っているのかしら? 甘酸っぱいって。

 驚く私に彼はこんなことを提案した。


「我が国に伝わる、眠りを促す、手のマッサージを伝授しましょうか?」


「ぜひ、お願いします!」


「分かりました。では手を貸してください」


 毛布からもぞもぞと手を出すと、衝立の下の隙間に手を差し入れる。

 カシウスが私の手を取った。


「温かい……」


「シャルロン様の手は、随分冷たいです。これでは眠れないはずですよ」


 そう言ったカシウスは、手の平のあちこちをマッサージしてくれる。左右、順番に。そうしてもらっているうちに、手だけではなく、なんだか全身が温かくなったように感じた。さらにとてもリラックスできている。


「安心して、眠ってください。シャルロン様」


 カシウスの優しい声が合図だったと思う。手のマッサージをしてもらいながら、私は眠りに落ちていた。



 翌朝。


 海鳥たちの鳴き声で目覚め、窓から射し込む陽射しから、晴天であることを実感する。


 目覚めると、船頭三人組の姿はない。

 どうやら起きてすぐ、洞窟の入口の様子を確認しに行ってくれたようだ。


「カシウス殿下、おはようございます! 昨晩はありがとうございます。おかげでぐっすり眠ることができました」


「おはようございます、シャルロン様。ちゃんと休めたようで、よかったです。とりあえず残された我々は身支度を整え、片づけをして、朝食の用意をしましょう」


 身支度……と言っても着ているのは、昨日と同じ水色のワンピース。髪は手櫛で整えるが、海風によりバサバサしてしまっている。それでも顔を洗い、体裁を整えた。


 こうして準備を進めていると、船頭三人組が戻って来たのだ。

 赤髪にそばかす、日によく焼けた精悍な体つきのトーマが、笑顔で告げた。


「朗報だ。洞窟の出入りができそうだ! 狼煙を上げよう!」


 丁度、朝食の用意で竈に火を入れていたので、そのまま合図となる狼煙をあげることになった。


「船が洞窟にくるまで、まだ時間がかかります。ひとまず朝食を食べましょうか」


 こうしてカシウスと私と護衛の騎士で用意した朝食をいただくことにした。

 トマトの缶詰と肉の缶詰で、昨晩とは違うスープを作っている。

 さらに瓶詰のピクルスもあったので、それも並べることになった。

 パンは乾パンで、やはりスープに浸していただく。

 デザートは桃のコンポート。カシウスがまた美味しい紅茶を淹れてくれている。


 備蓄されている食料を食べているのに。

 桃のコンポートと、カシウスの淹れてくれた紅茶のおかげで、なんだか高級宿で食後の一時を楽しんでいる気持ちになれた。


 食後の片づけをしている間、トーマは港の様子を見続け、そして――。


「船がこちらへ向かって来ています。洞窟へ向かう準備をしましょう!」


 この言葉に、皆の顔に安堵が浮かぶ。

 冬になるとリアベラ海の波は、高くなることが多い。

 もしかすると数日待ってもその日が来ない可能性もあった。それがわずか一泊で戻れるのは、僥倖だと思えた。


 こうして準備を整え、洞窟へと降りて行き、二人乗りの手漕ぎボートに乗り込んだ。


 既に洞窟の周囲には、二艘の船が来てくれている。


「では、洞窟を出るぞ!」


 トーマのこの言葉には、思わず皆で「「「「「おーっ!」」」」」と叫んでいた。


 洞窟から出る順番は、トーマと私の乗った船が一番目だ。

 既に陽射しが射し込み、ガラージオの洞窟は幻想的な空間になっている。


「お客様、大変お待たせいたしました。いよいよ洞窟を出ます」


 トーマが改まった口調で言い、眩しい程に輝く入口を抜けると……。

 洞窟の暗さに目が慣れており、外の明るさに目を開いていられない。


「シャルロン!」

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