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わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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未来の皇太子妃にピッタリなのに!

「それであなたのことを忘れてくれたらよかったのに」


「え……」


「ウォード様は、シャルロン様の正しい価値を分かっていませんでしたよね。それならばいっそ、シャルロン様のことを忘れていただいた方が、気が楽ではないですか? 『彼女が自分の妻とは思えない』となり、もし離婚ともなれば……。シャルロン様は自由になれたのではないですか?」


 カシウスが私の手を取り、甲へとキスをする。

 これには驚き、言葉が出ない。


 その時だった。


「シャルロン!」という声と共にノックが聞こえ、扉が開く。


 決して慌てた様子はなく、でもカシウスは私の手を離し、扉の方を見る。


「ウォード、どうしましたか!?」


 応接室へ入って来たウォードは、そのまま、まずは私のそばへ来たと思ったら……。まさかの腰をぐいっと抱き寄せられ、ビックリしてしまう。


 その上でカシウスを見ると、左手を自身の胸に添え、頭を下げる。簡潔に自己紹介した後、ウォードはこんなことを話しだした。


「カシウス皇子、先程、お見舞いの花とワインを受け取りました。珍しい黒ブドウから作られた白ワイン、そして貴国の砂漠で栽培されたブドウで作られた実に希少性の高い赤ワイン。どちらも国同士の贈り物で使われるワインです。そんな最高級品をわたしのために、ありがとうございます。妻と楽しませていただきますよ」


 ウォードがさらに腰を引き寄せるので、私は彼の胸にもたれるような状態になっている。一方のカシウスはニコニコと秀麗な笑顔を浮かべ、自己紹介をした後、ウォードの言葉に応じた。


「ワインにお詳しいのですね、ウォード様は。敢えて説明を添えず、送ったのですが……。どちらも市場で普通に出回るワインではありません。知る人ぞ知る、ワインなのですが」


「先日、国王陛下夫妻と、妻と共に夕食をいただく機会がありました。そこで、砂漠の赤ワインを頂いたのですよ。すぐに貴殿からの貴重な贈り物を、陛下がわたし達のために用意くださったと分かりました」


 ウォードの言葉に、そういえば確かに砂漠のお酒が~と国王陛下が話していた気がする。緊張している私は、お酒の話は完全に流してしまったが。


 そこにノックの音がして、ソアールとチャーチャが戻って来た。するとウォードは、同行していたワイリーが持っていたキャラメルを、ソアールにプレゼントしたのだ。


 そのキャラメルは、大変可愛らしいブリキ缶に入っている。そのボックスとキャラメルの美味しさで、王都の貴族の子ども達に大人気だった。ソアールも缶に描かれたメルヘンな馬車の姿に、大喜びだ。


「取り急ぎお礼を伝えたかったので、これで失礼します」

「わざわざありがとうございます」


 ウォードとカシウスの交わされた視線に火花が飛んだように思えたのは……気のせいかしら!?


「シャルロンお姉さま、早く流し入れないと、蝋、固まりませんか?」


 ソアールの声に我に返り、ボタニカルキャンドル作りを再開。


 その後はソファに座り、用意されたお菓子を楽しみ、お茶を飲む。同時に今回使った花について、図鑑を開き、ソアールに紹介した。ソアールだけでなく、カシウスも熱心に紹介する花について聞いてくれる。なんでもラエル皇国は緑に恵まれたエリアもあるが、そこは樹木が多く、花はそこまで多くないという。よってこれだけ沢山の固有種があることが「すごいことだと思います」とカシウスは感嘆している。


 こうして数時間が経ったので、ボタニカルキャンドルが固まっているか、確認することになった。ソアールと私が横並びでソファに座り、ローテーブルを挟み、カシウスもソファに腰かけていた。そしてそのローテーブルに、ボタニカルキャンドルが置かれている。


 容器を見ると、いい感じで固まっている。


「取り出しましょう」


 容器から取り出すと、分かりやすい完成品となった。


 ソアールのキャンドルは黄色の花が中心。私のキャンドルはピンクと紫の花。カシウスは真紅や濃い紫の花だ。それぞれ蝋の乳白色に溶け込み、淡くいい色合いになっている。


「すごい素敵! 沢山の花の名前を覚えたわ。私の宝物よ」


 完成したボタニカルキャンドルを手に、ソアールは大喜びだ。


「ではソアール皇女、私が作った分もプレゼントします」


「いいのですか、シャルロンお姉さま!」


「ええ。お持ちください」


 するとソアールは、私にぎゅっと抱きつく。

 そして小声で、こんなことを言う。


「シャルロンお姉さまが、お兄様のお嫁さんだったらいいのに! 随行している家臣のみんなも、そう言っているのよ。賢く、優しく、美しくて。シャルロンお姉さまだったら、未来の皇太子妃にピッタリなのに!って」


 もう心臓がドキリと跳ね上がる。

 チラッとカシウスを見ると、彼は植物図鑑をパラパラめくっており、こちらの会話には……気づいていないと思う。


 夢の中に出てきてくれたカシウスは「鳥籠から出て、僕のところへ来ませんか?」と言ってくれた。私の願望を反映したカシウスの言葉だと思う。


 少し前の私は、カシウスと逃げ出したいという気持ちが……あったのかもしれない。

 それが現実的にできることなのかどうかは別にして。


 でも今は違う。


 今はウォードが記憶喪失になり、私に対して理解もあるから……。


 でもウォードの記憶は、いつ戻るか分からない。例え記憶が戻っても、ウォードは私を愛したいと言ってくれている。そうであっても、今のウォードが消え、昔の彼に戻ったら……。


 今のウォードが契約書にして残してくれていること。それは守られるだろう。守られても、今みたいに一緒に食事をしたり、会話をしたり、それはなくなるかもしれないのだ。あの碧眼と目が合うこともなくなり、また無反応・無関心にさらされるかもしれない。


 記憶喪失により、失われた記憶が戻るのか、どうか。

 とても不確定な事象の中、私は葉っぱで出来た小舟で、漂っている気持ちだった。

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