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わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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あなたのことを忘れてくれたら

 ソアールとカシウスが屋敷を訪ねてくれた。


 約束通りの訪問に合わせ、私はモーブ色にパールホワイトのレースが飾られたドレスで二人を迎えることにした。


 エントランスホールで二人の到着を待っていると……。


「シャルロンお姉さま!」


 サンシャインイエローの明るいドレスを着たソアールが、待ちきれない様子で私に駆け寄り、抱きついた。本当はこんな風に駆け寄り、抱きつくのは、おおやけの場ではNG。でも今はプライベートタイムだから目をつむる。


「シャルロン様、お久しぶりです」


 黒髪に近いダークブラウンの髪、瞳はわずかに深緑色を帯びたブラックオリーブ色。前世でトーブと呼ばれる、砂漠の民の民族衣装をアレンジした服を着ているカシウスは、優雅に声をかけてくれた。今日も白の貫頭衣に、腰には繊細な文様があしらわれたシルバーのベルトを身に着けている。


 二人の後に従者が続き、彼らはお見舞いの花とワインを差し入れてくれた。既に執務に戻っている状態だが、気を遣ってくれたのだと思う。


 有難く受け取り、そのまま応接室へ案内する。


 応接室へ入ったソアールは、部屋の一角に置かれたテーブルに目を向け、「わあ、沢山のお花! シャルロンお姉さま、これはどうしたのですか?」目を丸くした。そのテーブルには、この国の固有種と呼ばれる花を置いていた。しかもそれは全てドライフラワー。


 ウォードのお見舞いのため、多くの花を受け取った。そしてこの国の慣習で、お見舞いの花には、自国の固有種を混ぜると、病気が回復するというジンクスがある。よって自然とこの離れに、ソアールが見ないような花々が集まった。


 ならばこの花を使い、前世の知識を生かし、ボタニカルキャンドル作りを思いついたのだ。


 というのも前世でギフトとして、ボタニカルキャンドルをもらったことがあった。とても美しいもので、手作りできると知り、挑戦してみたのだ。結果、ロウが固まるのに時間はかかるが、ちゃんとそれらしいものを作れた。


 キャンドルの材料ならこの世界にも存在している。それにキャンドルであれば、ソアールも母国に持ち帰ることができた。さらにボタニカルキャンドルを見る度に、花の名前を思い出せると思ったのだ。


「今日は、お菓子を楽しみ、そしてボタニカルキャンドルを作ろうと思います」

「ボタニカルキャンドル!?  シャルロンお姉さま、それは何ですか?」


 ソアールの瞳が好奇心で輝いている。

 そこで私はボタニカルキャンドルが何であるかを説明した。


「なるほど! この容器にキャンドルを入れ、その周囲にドライフラワーを飾る。そこへ溶かした蝋を流しいれ、固まるのを待てばいいのですね!」


「その通りです、ソアール皇女様。蝋が固まるのには時間がかるので、お菓子を食べて待ちましょう。もし固まれば、そのまま宿へ持ち帰っていただきます。もしまだ固まっていなければ後日、お渡しますよ」


 私の説明を聞いていたカシウスが「僕も挑戦したい」と名乗りをあげてくれる。


 こうしてチャーチャも協力し、ボタニカルキャンドル作りが始まった。


 まずはキャンドルに使う花を選び、次に容器の中にドライフラワーを配置する。この時、注意することがある。それはキャンドルに火を灯し、蝋が解けるとできるプールと呼ばれる窪み。ここにドライフラワーがあると、燃えてしまう。そこに注意するよう促し、作業を進めた。


「ではソアール様。チャーチャと護衛の騎士と一緒に、厨房に行って、湯煎で蝋を溶かしてきてもらえる?」


「はーい!」と元気よく返事をしたソアールは、チャーチャと護衛の騎士を連れ、厨房へと向かう。私とカシウスは残りの花を片付けながら、ウォードの事故の件について話した。


「では本当に、ニュースペーパーで書かれていた通りの事故だったのですね」


「そうなんです。国王陛下から捜査状況をお聞きする機会がありましたが、残されたボールとフード付きのロングローブだけでは、犯人を見つけるのは、難しいと言われました」


 残っているドライフラワーは新聞紙にくるみ、チャーチャに渡し、離れの装飾に使ってもらうつもりだった。ドライフラワーは香油を垂らしてレストルームに飾ったり、シューズボックスに置いたりと、使い道は沢山ある。


「確かにそれだけでは難しいでしょうね。もし紋章などがあればと思いますが、さすがに犯人も馬鹿ではないでしょうから、残さないでしょう。それに事件だったのか、事故だったのかも、分かりにくいですよね。子どもの悪戯だった……なんてこともありそうですしね」


 これまで、事故か窃盗事件との関連を考えていたが、子どもの悪戯は考えたことがなかった。でも馬がいななき、馬車が止まるのを見て、子どもなら面白いと感じる可能性もある。慌てる大人たちを見て、くすくす笑いあう子どもの姿は、想像できてしまう。


 もしかすると悪戯だったのかしら……?


「しかしウォード様は、馬車から投げ出されたのに、大きな怪我はなかったなんて。まさに奇跡ですね」


「ですが川には落ちましたから……」


「川に落ちても溺れることもなく、川岸で力尽き、そこで頭を打ったのですよね? それでもたん瘤程度で済んだとは……強運の持ち主です」


 カシウスは「鍛えている騎士でも、こうはいかないのでは!?」と驚いている。確かに目立つ怪我はなかったが、記憶喪失になっているのだ。今回、生活に支障が出るような記憶は喪失していない。だが一歩間違っていたら、どうなっていたことか……。


 それをカシウスに伝えると、彼はドキッとするようなことを言う。


「それであなたのことを忘れてくれたらよかったのに」

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