“嫉妬”されています?
結果的に国王陛下との夕食は、王妃殿下も同席していたので、これは緊張することになった。しかもさりげなく国王陛下がこんなことを言ったりするのだ。
「シャルロンが領地内の村で起きた火災で焼け出された村民を支援するため、わざわざ現地まで物資を届けに行った話を、カシウス皇子から聞いたぞ。勇敢な女性だと、いたく皇子も褒めていた。リドリーも『賢妻だ』と褒めていたぞ」
カシウスが国王陛下に話していたことも驚きだが、リドリーにまで話が伝わっていたなんて! リドリーとは、ヒロインの攻略対象でもあった王太子のことだ。
というかそんなに私、すごいことをしたのかと思ってしまったが……。
防火樹のことまで提案したことが、高評価につながっていたようだ。
私の話題はもういいと思ったところで、ウォードの事故に話が移り、捜査の状況について、国王陛下は教えてくれたが……。
「王都警備隊で捜査を今も行っている。だが全く、犯人は分からない。あの日は雨も降っていたので、人通りも少なかった。橋を一日中監視しているような人間もいない。いたずらで置いたのか、王都郊外で起きている窃盗事件と同一犯なのか、検証は進めているが……」
やはり犯人捜しは難しいと思ったが、その通りになっていた。目撃情報はないわけではない。ただ、情報提供による報酬目当ての不届き者もいて、当てにならない情報が多いと言う。
結局この夕食会では、地方領にいるウォードの両親に代わり、国王陛下夫妻がアルモンド公爵家の次期当主の無事を確認した、私的な夕食会という形で終了した。
「……カシウス皇子は、わざわざシャルロンのことを国王陛下に話すなんて、どういうつもりなんだ……」
馬車に乗り込むと、ウォードは少し落ち着かない様子で、そんなことを言い出した。
確かに驚きではあったが、カシウスの立場を考えれば、国王陛下と食事をする機会はあったはずだ。その中で、ソアールの教育係を任せている私のエピソードとして、クーヘン村のことを話しても……特におかしくない。
そう思い、ウォードに説明すると。
「皇女の教育係をすることは、構わない。だが皇子まで、なぜついてくる?」
「それは皇女がまだ幼いですから、保護者の代わりに同席しているのかと」
「……そうなることなんて、想定できだだろうに。どうしてわたしは、皇女の教育係をすることを許したんだ……?」
これには「え!」である。今さらそんなことを言われても、と思う。その一方で、あの時はウォードが教育係の件を認めるように、ちょっとしたテクニックを使ったことは、自覚している。つまりはズルをした。それでも一度認めたのだから、撤回なんて言い出されたら困る。
「だがしかし。一国の皇子と皇女相手に結んだ契約だ。今さらどうにもできない。だが……カシウス皇子とは、あまり親しくしないで欲しい」
「!? 何をおっしゃっているのですか!? 親しくしないって……。外交問題になりますよ!?」
「では言い方を変える。シャルロン、君はわたしの妻だ。わたし以外の男とは、あまり馴れ馴れしくしないで欲しい」
これには衝撃でフリーズ状態。だって今のこの言葉。どう考えても……。
思わずその顔を覗き込むようにして尋ねてしまう。
「まさか愛のない結婚をしたのに、“嫉妬”されています?」
するとウォードは、碧眼を恥ずかしそうに細め、なんとも切なさそうな表情で私を見つめ返した。その顔つきにドキッとする私に、ウォードは告げる。
「愛のない結婚だなんて言い方、しないでくれ。わたしはシャルロン、君のことが好きだ!」
「まさか」「本心だ!」
心臓がドクドク言っている。
これにはどう反応していいのか、分からない。
黙り込んだ私を見て、ウォードは遠慮がちに尋ねる。
「わたしは君が好きだ。君は……わたしのことをどう思っている?」





















































