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わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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いつかの逆

 一番仰天してしまったのは、王室から届いた手紙&花束&フルーツだ。


 アルモンド公爵家のルーツは、王族にある。よってこの配慮は当然のこと。とはいえさすがに御礼の手紙は、私が代筆しましたという、他の貴族と同じ対応をするわけにはいかない。これはウォードが直接返事を書くべきと判断し、すぐに執務室へチャーチャに届けてもらっていた。


 そんなこんなもあったが、もうすぐお昼になる。そこでダイニングルームへ向かおうと、文机を離れると、チャーチャが、足早に部屋に入って来る。「若奥様宛のお手紙です!」と、カシウスとソアール、両親からの手紙を届けてくれた。部屋を出る前に、手早く手紙に目を通す。


 カシウスとソアールはウォードの身を心配し、そして私を励ましてくれている。教育係の件も、無理はしなくてもいいと書かれていた。ひとまず今日は、午後から王都内にある動物園にソアールと向かうから心配ないとのこと。かつ明日は、王女が主催する刺繍のサロンに二人で参加する。その翌日は元々、教育係は休みの日だ。よって三日後。お見舞いも兼ね、屋敷へお邪魔しますと書かれていた。


 今はバタバタしているが、ヘッドバトラーがニュースペーパーに最新情報を渡すことで、このお見舞い手紙&花束ラッシュも落ち着くだろう。三日後、屋敷に来てもらえるのは、丁度いいかもしれない。というか多分、そこら辺を配慮してもらえたと思う。


 両親からの手紙では、ニュースペーパーを見て、我が家に訪問することも考えたが、私の手紙で思い留まることになった。そして私がいろいろと対応に追われているだろうし、ウォード自身が執務を再開できるぐらい元気であるなら、アルモンド公爵夫妻の帰館に合わせ、訪問すると気遣ってくれた。


 いろいろと安堵し、ダイニングルームへ向かうと……。


「え……」


 昼食なのに。テーブルには様々な料理が並んでいる。

 チキンの丸焼き、魚丸ごと一匹を使ったアクアパッツァ、ホールのミートパイなど、一人で食べる昼食の量ではない。


 なぜという疑問はすぐに解消される。


 本来いないはずの人物が、そこにいるからだ。


「ウ、ウォード、どうして……?」


「昼食なんだ。そしてわたし達は夫婦なのだから。一緒に食べて当然だろう?」


 いや、当然ではない。この離れで一度しか、昼食を共にしたことはなかった。それなのになぜ……。


 そこで深呼吸をする。


 記憶喪失だからだ。ウォードがこれまでと違う行動をとるとするなら、すべてはそこ! いちいち動揺するのは、やめよう。


「そのチキンの丸焼きは、『プラト・ド・チキン』から取り寄せた。出来立てものだ。シャルロンは婚約式の後、ここのレストランで、このチキンの丸焼きを食べて『美味しい!』と喜んでいた。そしてそっちの蒸し野菜は、砂漠の国から伝えられたもの。十七歳の時、スクールトリップでシャルロンが『ソースによって味が変わるから、野菜なのにパクパクいけてしまうわ』と喜んでいたものを作らせた。あとこれは……」


 どうして……?

 ヒロイン登場以前でも、そこまで仲が良かったわけではない。私が何を食べて喜んでいたとか、覚えているの? しかも私自身、忘れているようなことばかりを。


「……よく、そんなこと、細かく覚えていますね……」


 席に着きながら、思わず独り言のように呟いてしまう。


「それはもう昨日のことのように覚え……。えーと、ほら、好きな相手のことは、何でも覚えているだろう? ……いやそうなるとまるで……」


 ウォードは何やら小声でブツブツ言っているが。


 私に無関心・無反応だったのに。

 突然、こんな風に豹変されても。

 しかも「好きな相手」が私……?


「そうだ。思い出したんだ。バロス兄弟の海賊船。これは一攫千金になる。どうして君に言われた時、すぐに投資しなかったのだろう。さっきワイリーに、すぐ着手するよう命じた。まだ誰も手をつけていないといいのだが……」


「……海賊のお宝なんて、誰かから盗んだもの。由緒正しき公爵家は、そんなものには手を出さないのでは?」


 短く祈りの言葉を捧げ、スープを飲むためスプーンを手に取る。

 ウォードは慌てて自分でも祈りの言葉を捧げ、スプーンを手に取った。


 なんだかいつかの逆みたいだわ。


 私がいるのに、勝手にどんどん食べすすめていたウォード。

 それが今、私が彼より先にスープを飲み、オードブルを食べていた。


「確かに海賊船の宝なんて、誰かから盗んだものだ。よって私利私欲で使うと罰が当たりそうだ。どうだろう。領地の教会や時計塔の修繕に使うのは。あとは村に学校を建てる」


 メイドが切り分けてくれた、チキンの丸焼き肉が載ったお皿。それを受け取る動作が、思わず止まってしまう。


 夢の中の、ウォードとの会話が思い出される。


 一方のウォードは、懸命な様子で話を続けていた。


「わたしが遊学先で訪れた村。そこは村なのに、皆、貴族のような屋敷に住んでいる。その村の子ども達は皆、学校に通っていた。卒業後、首都に出て事業を始め、成功している。そのことを手紙に書いて送ったら、シャルロンは『村の子どもの中には、頭がいい子も沢山います。でも彼らは学びの機会がない。だから親と同じように生きて行くしかないのです。領地内の村に、学校を作った方がいいと思います』と書いていただろう? それを実行するのはどうだろう?」

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