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わたしにもう一度恋して欲しい~婚約破棄と断罪を回避した悪役令嬢のその後の物語~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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そばにいて欲しい。

 チャーチャが戻って来た。と思ったら……。


「ウ、ウォード! どうして、なぜ!?」


 ウォードは、寝間着からゼニスブルーのセットアップに着替えていた。その姿を見ると、いつものウォードにしか見えない。本来、執務室にいる時間なのに。本来、執務室にいる人間なのに。なぜ私の部屋に?


 チャーチャを見ると「お手上げです」という顔をしている。一方、私の部屋に入って来たウォードは、キョロキョロと部屋の中を見渡し……。


「……いい香りがする。さっき抱きしめてくれた時と、同じ香りだ。甘過ぎず、どこか爽やかな香り……」


 ウォードが、うっとりした顔をしている。こんな表情、これまたこれまで見たことがなかった。そしてその顔は、いつものイメージとは全く違うもの。なんだか子犬のようで可愛らしい。


 思わず気持ちが緩みそうになるが、現実を思い出す。


 ウォードは記憶喪失になっている。それは一過性のものなのか、ずっといろいろなことを忘れたままなのか。それは分からない。


 今はいろいろ記憶がないから、見たことがないような表情を見せてくれるのだろう。


 でもそこで気を緩めてはいけない。もし記憶を取り戻したら……。


「わたしの記憶がないのをいいことに、馴れ馴れしくしなかったか?」


 絶対にそんな風に言われる気がした。


「ウォード。突然、部屋に来た理由は何ですか?」


 以前のウォードに対し、こんなに語気を強めたことはない。ここぞとばかりではないが、記憶が戻った時に備えた自己防衛で、かなり私は強気に出ていた。これにはチャーチャも驚いた顔をしている。


 対するウォードは、寝室と同じように、困り切った顔でもするのかと思いきや!


「かかりつけ医が『ご本人が思い入れのある物や人がそばいると、記憶が蘇りやすいこともある』と言っていたと、聞いた」


「確かにそう、かかりつけ医は言っていました。だからこそ、ワイリーとヘッドバトラーが、寝室へ向かいましたよね?」


「はい。でもわたしの思い入れがある相手は……当然、妻だろう。君のそばにいたら、記憶がよみがえるかもしれない」


「はい……?」


 私に無関心だった時の記憶、ごっそり失っているの?


 ……失っているのだろう。

 失っていないと、この発言にはつながらないわ!


 ここはウォードが私に対し、どんな態度だったのかを話すべきなのかしら? 私のそばにいても、何も思い出せないと思うのだけど……。


「シャルロン。わたしは不器用な人間だ。自分の気持ちをどうやら上手くアピールすることができずにいた。その結果、君が誤解することになったと思う」


 そう言いながらウォードが、文机の前で立ち尽くす私の方へ近づいた。

 アイスシルバーのサラサラの前髪が揺れ、その下の碧眼はとても優しい眼差しをしている。そんな瞳でウォードが見るのは、ヒロインだけだと思っていた。


「そばにいて欲しい。シャルロン」


 これは私の心を揺さぶる言葉だった。

 ウォードと結婚できたことに、舞い上がっていた頃の私は。ウォードからこんな言葉を言ってもらえると思っていた。でも現実はまったく違うもので……。


 諦めていた一言を、今こんな形で言われるなんて。

 衝撃より嬉しさが勝り、動きを止めている私の手を、ウォードがとった。

 敬うように私を見ると、甲へとキスをした。

 手の甲から伝わるウォードの温かい気持ちに、胸がキュンとしている。


「失礼いたします!」という大声とノックは同時で、チャーチャが扉を開けると、間髪を入れず、ワイリーと数名の使用人が部屋に入って来た。


「ウォード様! どちらへ行かれたと思ったら、若奥様のお部屋にいるなんて……。これまで一度も若奥様の部屋を訪れたことがないのに、一体これはどういう風の吹き回しですか!?」


 ワイリーの言葉にウォードは衝撃を受け、固まってしまう。

 するとすかさずワイリーがウォードに駆け寄り、他の使用人も彼を囲む。


「さあ、執務室に戻ってください。書類は山積みですから!」


 皆に囲まれ、ウォードは扉の方へと移動させられていく。

「少し、待って欲しい」とウォードは懸命に頑張るが、相手にされていない。


「シャルロン!」


 悲しそうな声をあげ、ウォードが振り返った。

 碧眼の瞳は、限りなく切ない哀愁を帯びている。

 それは私の胸を締め付けるものだが……。


 こんな表情をウォードがするのは、一時的な可能性が高い。ここでほだされ、ウォードに歩み寄っても、悲しい結末になる可能性が大なのだ。


 相手にしてはいけない。


「シャルロン!」


 ウォードに背中を向けるのは、申し訳ないと思う。でもこれは心を鬼にした結果だ。


 パタン。


 扉が閉じ、部屋の中が急に静かになった。

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