第17話 感動の再会☆ ~おにいたまは妹よりポンコツ~
見覚えのあるテディベア。
それを持っている意味は一つしかない。
いったいどういうことか。尋ねる前に、紫色のテディベアが突如飛び掛かってきた。
「おにいたま!」
「ポロリ!」
ひしと抱き合う二匹。そう、なんと二匹は兄妹だったのだ!
異世界での感動の再会!
二匹は異世界での再会に涙を流していた。
だが野乃花にとってはどうでもよかった。スーンって感じの表情で、茶番が終わるのをひたすら耐えている。
ちなみに葉月は「あらあらまぁまぁ」と二匹を微笑ましく見ていた。
(え、なんで葉月先生が妖精を持っているの?)
その答えは一つしかない。
「まさか葉月先生も魔法少女なんですか?」
「そう、そのまさかですわ」
葉月は一切躊躇わずに答えた。魔法少女なんて隠したいものだと思っていたので、平然と告白する様子に野乃花は衝撃を受けた。
(え、大学生で魔法少女ってアリなの? 確か大学四回生でしょ? 二十歳越えてない? 少女って年齢じゃないじゃん。てか男遊びとか激しそうだし、そういう意味でも絶対少女じゃないでしょ……って、こんなこと考えてるの宗介みたいでキモイ! でもなんか色々と絶対にアウトでしょ!)
野乃花は「高校生でも少女扱いはキツイ」と思っていたので、妖精たちの判断基準が気になった。
(あ。でももしかしたら、もっと若い頃に魔法少女になったとか。最近魔法少女アニメにやたらとOGが出てくるし、ベテランの葉月先生が代わりに戦ってくれるなら心強いかも!)
気を取り直して、野乃花は尋ねた。
「葉月先生は、いつから魔法少女をやってるんですか?」
「ワタクシは一昨日から始めましたわ」
(はい無駄な期待でしたー!)
表には出さないものの、野乃花はガッカリした。
現在魔法少女は三人いるが、一番のベテランが萌音、僅差で野乃花、少し空けて葉月といった具合だ。
(よくもまあ、何匹も送り込んでくるわね、妖精界)
だがよく考えたら、ポロンの妹(年少者)が異世界に来たということは、よっぽど向こうも切迫した状況なのだろう。しかしまあ、ポンコツと名高いポロンの妹が送り込まれるなんて、皮肉というかなんというか。野乃花はそんなことばかり考えていた。
「えっと、ずいぶん思い切りましたね。いや、年齢的にキツイってわけじゃなくて、大学との両立が大変なんじゃないかって意味で!」
つい本音がこぼれてしまったが、葉月は気にしていなかった。
「ワタクシも最初は戸惑いましたわ。どんなにポロリさんが可愛らしくても、教育実習も近いですしね。でも体のいいバイトだと思えば、ありがたいご提案でしたわ」
「バイト?」
(葉月先生ったら、何を言ってるんだろう?)
バイトと魔法少女なんて、最もかけ離れた存在だ。無償活動を強いられているのだから、むしろ損しかないのに。
野乃花は小首をかしげた。
だがこの時、ふと視界にポロンが映った。ポロンの顔は明らかに強張っている。何か隠している時の顔だ。
葉月がいることも忘れて、野乃花はポロンの顔面を鷲掴みした。
「てめぇ! まだ隠し事してやがったな!」
「い、痛いポロン! 妹の前ではやめてほしいポロン!」
「おにいたまを離ちてほしいでちポロリ!」
野乃花の腕に、ポロリが飛びつく。
「うるせー! だいたい乳が飛び出す擬音みたいな名前しやがってよ! お前ら妖精は猥褻物ばっかりか!」
「む、むずかちい話はやめてほちいでちポロリ!」
ギャースカ騒ぐ野乃花たちを見て、葉月は困ったように尋ねた。
「じゃあ野乃花さんは、願い事契約しか聞いていないということでしょうか?」
「願い事契約?」
また知らない単語が出てきて、野乃花は一瞬思考が飛んだ。
その隙に、ポロンが野乃花の手のひらから脱出した。
息を整えるポロンに、ポロリが抱きついた。
「おにいたま、ポーたんはダメな子だポロリ。ポーたん忘れてて、はづきに報酬契約しかお話ししなかったでちポロリ」
「まぁ、ワタクシは即金でもらえる方が助かりますので、ありがたい申し出ですけれどもね」
「やっぱりはづきは優しいでちポロリー!」
兄にすがりついて、ポロリはおいおい泣き出した。
妹がそんな状態なのに、ポロンの表情はやっぱりどこか固い。
少し冷静になった野乃花は、話の早そうな葉月に質問した。
「あの、報酬契約と願い事契約って何ですか? 私、その説明を受けてないんですが」
「あら、そうでしたの? でもそれだと困ったことになりません?」
葉月はポロリを見た。
「その場合だと、契約自体が不成立になるでちポロリ」
「え、契約が無効になるの?」
野乃花は目を見開いて驚いた。