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かくれんぼ

作者: ゅぅ

※この作品はGREEにも掲載しております。

「なぁ、かくれんぼしようぜ!」


親友のAが放課後に提案してきた。

明日は土曜日。

しかも週明けもGWの休日で、明日からは5連休だ。

僕は明日から家族で旅行に行く予定だったから、本当は早く帰りたかった。

周りのみんなも実際はそうだったのかもしれない。


でも、Aは母親と二人暮らしでこの連休も母親は仕事でどこへも連れてってもらえず、僕等と遊ぶこともできなくて暇になることを僕等は知っていた。


きっと今のうちに遊んでおきたいんだと少し同情して、「5時までならいいよ」と言った。


「じゃあ、職員室と校長室と女子トイレと校庭は隠れちゃダメだぜ!4時50分になっても全員見つけられなかったら鬼の負けな。鬼はスタートから5分経ったら探し始めるんだ!」とAがルールを決める。


僕等はじゃんけんで鬼を決めて一斉に校内へ散らばった。

さて、僕はどこに隠れようか…と考えながら、体育館の方へと走っていた。

体育館に入ろうとしたら、中ではバレー部が練習していて顧問のゴリ山に怒られてしまった。


まぁ、体育倉庫は怖い噂をよく聞くから隠れたくはなかったし、体育館が使えないなら仕方ないかと思い、Uターンして別の隠れ場所を探すことにした。


僕等の小学校の体育館は、増設する時に昔の墓地を潰して建てた所らしく、夜になると幽霊が怒って出てくるという噂でみんな近寄らない。

僕等も例外ではなかった。


その後僕は校舎の階段下の物置の中に隠れたが、あっさりと見つかってしまった。

次々と友達が鬼によって見つけられ、とうとう残りはAだけになった。


時間は間もなく4時50分。

鬼はついにギブアップして、Aが出てくるのを待った。

しかし、Aが来ないまま5時のチャイムがなり、僕等は見回りの先生に帰されてしまった。

仕方ないので、集合場所の昇降口のAの下駄箱に、先に帰る旨と来週も遊ぼうというメッセージを入れて僕等は学校を後にした。


帰宅すると、玄関には怒った顔をした母が僕を出迎えた。


「明日は朝早いから、今日は早く帰ってきてねって言ったでしょ!!それに最近この辺も物騒だから遅くまで遊んでちゃダメって!!」


最近、この辺では小学生の誘拐事件が続いている。

誘拐というか神隠しのように忽然といなくなってしまうんだけど…


僕は遊び疲れてその日は早く寝た。

翌日からの連休は、水族館に行ったり遊園地に行ったりですごく楽しくて、連休最後の日に帰宅してポストの中を覗くまではAのことをすっかり忘れていた。


ポストの中には僕宛ての名前と差出人の欄に、


『 HYRN

   ∥

  0430』


と書かれている茶封筒が入れられており、中身は一枚のDVDだった。

僕は部屋に入るなり、そのDVDをプレーヤーに入れた。

映像に映った所は見覚えがあった―…。


…そう、学校の体育倉庫だ。

しかも、夕方で不気味な雰囲気が醸し出されている。

部活中なのだろうか、微かにボールが床を撥ねる音や、児童の掛け声など聞こえている。


しばらくすると、倉庫の扉が静かにゆっくりと開き、誰かが入って来た―…Aだ。

Aは何かを探すかのようにキョロキョロと辺りを見回している。

探していたものを見つけたのか、おもむろに跳び箱の一段目を外すと、Aはその中に入ってしまった。

そして、自分でまた一段目を戻した。


…―そうか、Aはあの日ここに隠れていたのか。

僕はようやくこのDVDの意味を理解した。

明日、Aは自慢げにこのDVDとあの日のことを僕に話すつもりなのだろう。

DVDは最初の映像のまま変わりなく、時間だけが過ぎていく。

僕は映像に変化があるまで早送りした。


しばらくすると何人かが重そうな長いものを持って、体育倉庫に入ってきた―…あれは、バレーコートの支柱だ。


あっ!!


ゴンッ!ゴゴンッ!!


片付け方が悪かったのか、支柱がいくつか跳び箱の上の方に立てかかるように落っこちた。


うわぁ、Aびっくりしただろうなぁ…。

それから数分としないうちに5時のチャイムが鳴ったかと思ったら、固定されていたビデオを誰かが取ったのか、映像はアングルが変わり体育倉庫の床が映り、ガチャッという音とともに映像は終了した。


DVDを見終わり、よくあんな怖い所にAは隠れられたなぁと僕は関心した。

明日、きっとAはニヤつきながら僕のもとに来ること間違いなしだ―…





















【解説】

最初に結果から申しますと、恐らくAは死んでいる(もしくは殺されている)と思います。


・Aが4:50になっても集合場所に来れなかったわけ

→跳び箱の上の方にバレーコートの支柱が数本落ちてしまい、重くなって出られなくなってしまったから。


・"僕"はゴリ山に怒られたのに、Aは体育倉庫に隠れられたわけ

→"僕"が来る前に既にAが来ていたから。

⇒ゴリ山は生徒を狙っており、一人ずつ体育倉庫に閉じ込めていた。


・体育倉庫の噂

→噂はデマの可能性有り。

⇒増設の部分は『~らしく』なので、根拠なし。


・ビデオを撮っていたのは誰か?

→体育倉庫に児童を閉じ込めようと狙っていたゴリ山。


・最近の誘拐事件

→ゴリ山が児童を次々と体育倉庫に閉じ込めて殺害していたから。

(近所の小学生が被害者⇒同じ学区⇒"僕"と同じ小学校の児童)


以上を踏まえて、話の全貌を解説します。

最近多発していた誘拐事件の犯人はゴリ山でした。 ゴリ山は"体育倉庫の噂"を流し、体育倉庫に人を寄せつかせないようにします。

そして、そこを犯行現場へと…。

たまたま体育倉庫を隠れ場所に選んでしまったAを、ゴリ山は次のターゲットとして選びました。

ビデオはいつも仕掛けており、いつでも犯行現場を撮影できるようにしていました。

今回はたまたまバレーコートの支柱が倒れ、Aは跳び箱の中に閉じ込められてしまいました。

しかし、ゴリ山はそのことを利用しようとしたのです。


Aの家は母子家庭。

苦しい家計を何とかするために、Aの母親は稼ぎの良い夜の仕事を主としています。

つまり、朝に帰宅する母親とAはすれ違いが多く、Aはほとんど一人暮らしのような生活をしていたのです。

そんな生活をしていることをゴリ山は知っていました。

夜にAが帰宅していなくても母親は気付かない。朝にAがいなくても気にしない。

だから、Aを直接殺したりはせずに閉じ込めたままにしたのです。


そして、かくれんぼしたのは連休前の金曜日。

気付かれないまま連休の間、ずっと跳び箱の中だとAの生存率は大分低くなってますね…。


さて、ビデオを撮っていたのはゴリ山だということは、DVDにして"僕"んちのポストへ入れたのもゴリ山です。

では、何故そんなことをしたのか…


それは"差出人欄の暗号"がキーになっています。


『 HYRN

   ∥

 0430』


この数字は日にちを表しています。

つまり4月30日のことです。


ここで思い出してもらいたいのが、"かくれんぼしていた日が金曜日で、明日からGWの5連休だ"ということ。

ちなみに、本文には"週明けもGWの休日"と書いてあるので、土日から始まる5連休ということは、祝日の3、4、5日は月曜日~であることが分かると思います。


そこから逆算すると、4月30日は金曜日であることが分かります。

つまり、"かくれんぼしてAが体育倉庫に閉じ込められた日"です。


その"4月30日"="HYRN"。

僕がポストで封筒を発見したのは連休最後の日、つまり5月5日…ですが、僕がAを探しに体育倉庫に行くであろう日はその翌日の5月6日。


6日後ということで、"HYRN"の各文字の6つ後の文字を抜き出すと、


H→N

Y→E(Zの次はAに戻る)

R→X

N→T


つまり、"6日後に体育倉庫に来る次のターゲットはお前だ"という、ゴリ山から僕に宛てられたメッセージだったということです。

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