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第四話



 脳内で音が響き渡っている中、俺は目を閉じ佇んでいた。


「身を挺して守ってくれた、すごいな、ほんとに」


 召喚獣の献身さと召喚士としての無力さを同時に味わった気がしていた。身近な命の生き死にってのはなかなか心にくるものがあるな、と小さな声で呟く。


「きゅ〜」


 立ちすくむ足元にフーリィは寄り身体を擦り付けていた。僕もいるよ、と慰めてくれているようだった。


「落ち込んでばっかじゃいられないわな」


 気持ちを無理やり切り替えて、レベルアップしたステータスを確認した。


名前『レンタ』

年齢『25歳』

職業『召喚士Lv.1』

称号『鬼王殺し』

レベル『5』

スキル『腕力強化(大)』『魔力増幅(特大)』『魔力成長』『威圧』

HP『140/140』《30上昇》

MP『300/1700(500+1200)』《300上昇》

攻撃力『590(90+500)』《30上昇》

防御力『90』《30上昇》


 注目すべき点は何点かあるが、MPが元に戻っていない。これはどういうことだろうと考えていると、


【召喚士ヘルプ】召喚獣が死亡した場合はその召喚獣の必要MP分は復活クールタイムが過ぎるまで元に戻りません。復活クールタイムに関しては召喚獣の種族、レベルに応じて変わります。(例 土人形 : 24時間)






 復活するんかーーーい!!!!






 思わずそんな声を上げて泣き笑いしたのは内緒の話である。





 さて、落ち着いたあとはステータスの確認を再開する。『鬼王殺し』ってなんか物物しい感じがするな。


『鬼王殺し』・・・キングオーガを討伐したものだけに与えられる称号。オーガと対峙した際、『威圧』を使用することにより隷属させることが可能。同様な効果は期待できないがその他の種族に対しても使用可


 なんとも強そうなものが手に入ってしまった。いや、この世界でのオーガの立ち位置次第なのかもしれないが『威圧』スキルは凄そうだ。

 

「フーリィも新しいスキル覚えてたみたいだな」


名前『フーリィ』

種族『火狐』

召喚者『レンタ』

レベル『3(5/40)』

スキル『火纏い〈強化(小)〉』『狐火【陽炎】』

HP『30/30』《5上昇》

MP『40/40』《10上昇》

攻撃力『25』《5上昇》

防御力『25』《5上昇》


『狐火【陽炎】』・・・(必要MP:5)大気に作用して幻影を見させる。相手の攻撃の命中率を下げる。


 なかなか良さそうなスキルだ。フーリィは撹乱して手数で攻撃していくタイプだな。そんなことを考えながらフーリィを撫でることで癒されるのであった。





「この死体・・・どうするかこれ」


 3mもの巨体で重く皮膚もかなり硬いキングオーガはどう考えても持ち歩けるような代物ではなかった。ふと胸に空いた穴を覗き込んでみると、キラッとした石のようなものが埋もれていた。


「これは、いわゆる『魔石』ってやつ?」


「きゅ、きゅきゅるきゅー!きゅっきゅ!」


 フーリィが必死にジェスチャーで何かを伝えようとしている。うん、とりあえず持っとけってことだな。


「きゅ・・・きゅ!」


 まあ、いっか!的なノリでフーリィもジェスチャーを終わらせ、我々の会話は終わりを告げた。


「あとはこの角だな。これはなんか良い素材になりそうな気がするから持って帰ろう」


 角を根元から掴んで毟り取る。魔石は胸から抉り取る。なんかすごい脳筋な気がする。


 少しだけ虚しい気持ちになりながら森の外を目指すのであった。





 フーリィとともに魔物を倒しながら歩いていると木々の間が開け、明るくなってきた。恐らく出口も近いのだろう。

 フーリィは火纏いが少し強化されたことや陽炎が使えるようになったおかげでより多くの魔物を倒すことができるようになっていた。


名前『フーリィ』

種族『火狐』

召喚者『レンタ』

レベル『4(3/45)』

スキル『火纏い〈強化(小)〉』『狐火【陽炎】』

HP『35/35』《5上昇》

MP『50/50』《10上昇》

攻撃力『30』《5上昇》

防御力『30』《5上昇》


 俺もフーリィが討ちもらした魔物は倒していたがレベルはなかなか上がらない。特に召喚Lvは全く音沙汰がないので苦悩しているところだ。


「もしかしてフーリィとバンダル両方のレベルを一定以上上げる必要があるのか?」


 まだバンダルの復活クールタイムは終わらないので解決策は見当たらない。この近くの街に召喚士の情報とかあるかな。そして今更だが、俺はこの世界の人と会話はできるのだろうか。

 そんな悩みに悶々としながら歩いていると視界が開けた。目に入って来る光景はあまりに広大な草原地帯である。


「こりゃ、圧巻だな」


 前世では見たことのなかった景色に心を奪われしばらく見入っていた。


「あの。この森の中から出てきたんですか?」


「!?」ビクッッッ!!


 完全に無意識のところへ声をかけられたためとんでもなく気持ち悪い動きを見せる。

 声をかけてきた相手は金髪青眼で肌は色白、中性的な顔をした少年だった。


「お、驚かせてすみません。今の時期にこの森から出て来る人がいるとは思っていなくて思わず声をかけてしまいました」


 そんなこと言いながら僕もここにいるんですが、と少年は付け足す。


「今の時期?なにか時期によって森の様子が変わるのか?」


「え、知らないで森の中にいたんですか!?よくご存命であられましたね!」


 よほど衝撃的だったのかユニークな言い回しで心配をしてくれる。そして少年は自己紹介が遅れました、と言って話を続けた。


「僕の名前はミトスと言います。ここから近い辺境城塞都市ウェルノースの魔導薬師ギルドに所属しています。貴方はどちらのギルドに所属されていますか?」


 街では見かけたことがないもので、と心底不思議そうな顔で質問してくるミトス。俺はどうしたもんかな、と熟慮し答える。


「それが、なんで俺もここにいるのかわからないんだ。いわゆる記憶喪失ってやつなのかな。訳もわからずこの森の中を彷徨っていた。なんとか切り抜けてきたよ」


 大変だったよ、このフーリィと一緒に頑張った。俺はレンタと言う名前だ、とミトスに話す。ミトスは腕を組み目を瞑りひとしきり考えた後、ゆっくりと話し出した。


「そう、でしたか。正直に言わせてもらえれば怪しいことこの上ないですが、レンタさんには悪い気の流れが見えません。信じましょう」


 そうか、ありがとう。と言ったがなんだか腑に落ちない気もする。まあ、いいか。


「ところでミトスはなんでここにいたんだい?」


「僕はですね・・・。魔導薬師ギルドでの特級依頼があってここにいたんです」

 

 でも、とミトスは続ける。


「依頼品が特別というか、難易度がS級のもので正直僕1人じゃあ到底無理な依頼なんです。だけど、僕らのギルドの上級者はみんな出払ってまして」


 辛うじていたのがC級の僕でした、と泣きそうになりながら話をする。


「無理ですよ、どうしたって死にます。だけど断るわけにはいかない依頼なんです」


 そんな依頼があるんだな、怖すぎ。と勝手に震えていた俺をよそにミトスは早口で話を続けた。





「そしてその依頼の品っていうのが『キングオーガの角粉』なんです」





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