第二話
「ん・・・」
目を開くと鬱蒼と生い茂った森の中に放置されていた。
なんだこれ、転生先は森って異世界あるあるかよ、と前世の記憶を遡りながら起き上がる。
ギャーーォ、バキバキ・・・となにかが生命活動をしている音がするがこの周りには何もいないようだ。
「そうだ、なんかあの老人が言えって言ってたよな。んーと、ステータスオープン」
名前『レンタ』
年齢『25歳』
職業『召喚士Lv.1』
レベル『1』
スキル『腕力強化(大)』『魔力増幅(特大)』『魔力成長』
HP『100/100』
MP『1300/1300(100+1200)』
攻撃力『50+500』
防御力『50』
な、なんだこれは。前世のエンタメ知識で考えれば召喚士って後衛だよな。それに対して腕力強化とは・・・。
とりあえずどんなことができるかわからないので召喚士のアイコンを注視してみる。
『召喚士Lv.1』・・・MPを使用し選択可能なキャラを召喚する
【選択可能キャラ】
・土人形Lv.1(必要MP600)
・火狐Lv.1(必要MP800)
ふむ、召喚士という名前だけあって選択したキャラを召喚できるということだな。召喚可能は2種類ね、どうしたもんかな。
「異世界に来て初めて出会うのが土人形っつうのも味気ない。火狐にしよう」
どう召喚すればいいのかはすぐに頭の中で理解することができた。これが職業の力か。
「かの冥界より舞い降りし神の使いよ、従僕の元に顕現し力をお与えください【火狐】っ!」
(詠唱は全くいらないのに思わずノリで言ってしまった・・・。)
言い終わると同時に眩い光の元から、透き通った白色の毛並みでオレンジ色の瞳をした狐が現れた。
「きゅー」
なにこれ、めちゃくちゃ可愛いんですが。
体長40cmほどの上品なキツネがこちらを向いて座っている。この子のステータスとか見れないかな、と注視すると
名前『』
種族『火狐』
召喚者『レンタ』
レベル『1』
スキル『火纏い』
HP『20/20』
MP『20/20』
攻撃力『15』
防御力『15』
そうか、名前は俺がつけなきゃいけないのね。
「君の名前は・・・フーリィにしよう!」
「きゅーーーー!!」
とっても嬉しそうにするフーリィを見て思わずニヤける。
こいつは俺の相棒になりそうだ、と妄想を膨らませていくのであった。
◇
「さて、召喚したはいいものの、この森はどう抜けようか。というかこのステータスはどんなものなのか全くわからん」
そんなことを考えながら森の中を歩き始めた。フーリィと戯れつつ歩いていると黒い何かが飛び出してきた。
「グオオオオ」
全身が毛に覆われた豚顔の二足歩行の生物。筋肉も隆起しており目は血走っている。そんな魔物が急に襲いかかってくる。
「うわっ、あぶねえ」
なんとか攻撃を避けて横へ転がる。
ん?なんか早く動けたな、と思いながら魔物の攻撃を二回三回と避けるが、轟音を響かせて木々が真っ二つに折れていく。
「これじゃキリがないよな」
逃げながら割と頭は冷静に働いていた。召喚獣に頼ってみるか、そう思い火狐に話しかける。
「フーリィ!一瞬あの魔物の動きを止められるか!?」
「きゅー」
任せて、と言うかの如くフーリィは鳴き、尻尾から頭に向けて火を纏って豚の魔物へ突撃した。
「グ、グオッ!?」
フーリィの体当たりを受け豚の魔物は怯む。咄嗟の回避で直撃は免れたが右脇腹に攻撃をくらい、纏った毛が焼け焦げる。
よくやった、と思いつつ魔物の死角に回り込んだ。
「腕力強化、頼んだぞ!!!」
叫びながら魔物の背中に拳を叩き込む。
豚の魔物は爆散した。
◇
「な、なんじゃこら」
思わず声が漏れる。そう言いたくなっても仕方ないだろう。だって、ねえ?
必死で体当たりしたフーリィの気持ちも考えてみてよ。
だからさ、そんな目で見ないでよ。
「きゅ・・・」
豚の魔物の返り血(というか飛び血?)を浴びたフーリィがもうお前が1人でやれよ、という目をしながら寂しそうに鳴く。
「戦ったことがなかったのよ、ごめんね、ほんとに」
今度からは頼むよ、という感じで目線を交わす。
【レベルが上がりました】
脳内に直接聞こえてくる。まるでタイミングを見計らっていたかのように。
名前『レンタ』
年齢『25歳』
職業『召喚士Lv.1』
レベル『2』
スキル『腕力強化(大)』『魔力増幅』『魔力成長』『鉄鋼』
HP『110/110』《10上昇》
MP『600/1400(200+1200)』《100上昇》
攻撃力『560(60+500)』《10上昇》
防御力『60』《10上昇》
レベルが1上がるごとにステータスは基本10上昇なんだな。いまいち数値の基準が分からないからなんとも言えないんだけど魔力(MP)だけは凄まじいな。
「というか、MPって召喚獣を出したままだとその必要分だけ減ってる感じか」
どうやら火狐(必要MP800)召喚中はずっとこのままらしい。フーリィはどうかな、とステータス確認する。
名前『フーリィ』
種族『火狐』
召喚者『レンタ』
レベル『1(3/30)』
スキル『火纏い』
HP『20/20』
MP『18/20』
攻撃力『15』
防御力『15』
「あれ、レベルの横に数値が増えているな。召喚獣自身が倒さなくても経験値が入るってことか。まあでも倒せそうなやつが出てきたらフーリィに頼んでみるか」
身体を震わせて豚の魔物の血を振り払いながらフーリィはトボトボと横を歩いて行くのだった。