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第4章ー4

 そんな風にいつの間にか、タンサニーらの味方が増えていて、自分と張娃とが結婚して、張娃が正室になることに、アユタヤにいる自分の部下の面々のほとんどが、水面下では反対していたことに、商売にかまけていた上里松一は、実は全く気が付いていなかった。

 更に言えば、プリチャも同様だった。


 だから、プリチャの妊娠を、張娃にどう伝えるのが相当か、松一が思案投げ首になった末に、少しでも気心が知れていて、内密の話ができると踏んでいた自分の部下の面々に悩んだ末に、この件を相談した際に。

 松一(及びプリチャ)は、半ば腰を抜かす事態が起きてしまった。


「この際、プリチャ様の出産が済んで落ち着くまで、張娃様を呼ぶべきではないのでは。そして、張娃様を呼んだ後は、張娃様とプリチャ様、お二人と同居されるべきでは」

 松一からしてみれば、一番の腹心と考えていたアユタヤ支店の筆頭番頭までが、そう松一に直言した。


「待て待て、妻妾同居と言うのは意外と難しいと聞くぞ。張娃が正室である以上、側室のプリチャとは別居するのが順当ではないだろうか」

 そう松一が反論(?)したら、

「それなら、正室の張娃様とは別居して、プリチャ様との同居生活を営まれるべきでは」

 そこまで、筆頭番頭は松一に直言した。


 これは、と松一はいわゆるピンと来るものがあった。

 どうも自分の部下の間では、反張娃の空気が完全に広まっている。

 そもそも論から言えば、張娃は自分の部下の多くの元の主の張敬修の愛娘なのだ。

 だから、自分の部下の多くが張娃を歓迎するのが本来なのに、真逆の態度を示すとは。


 これは、プリチャを私の側室に張敬修が勧めたこと、更にプリチャが身を慎んで、完全に私、松一の正室に相応しい力量を示しだしたこと等から、自分の部下の多くが、プリチャを自分の正室に、と望んでいるようになったことを意味しているのではないか。

(更に、その裏にはタンサニーがいるのだが、そこまで松一は覚れなかった)


 松一は、自分の部下の空気を、プリチャと密談の際に伝えた。

 プリチャも驚き慌てる羽目になった。

 自分が、松一との間の二人目の子を妊娠したことが、そんな事態を引き起こすとは、プリチャには思いも寄らない事態だったのだ。


「私は、張娃様がアユタヤに来られるのを機に、別居生活を営んで、通いの側室になろう、と考えていたのですが。部下達は納得しないのですか」

「ああ、お前と張娃とも同居するか。お前と同居を続けて、張娃とは別居するか。その二者択一らしい」

 プリチャと松一は頭を抱え込みながら、そんな会話を交わした。


「私は張娃様と同居するのは、どうにも気詰まりです。私から身を引かせていただきます」

 プリチャはそう言ったが、

「待て待て。それは困る。完全に部下がそっぽを向く事態になる」

 松一は、そう言わざるを得ない。

 

 実際、松一が考えれば考える程、張娃と同居するのは気詰まりだから、とプリチャが自分から別居を言い出したら、そう言う流れになる。

 部下達は、主は何故にプリチャ様を庇わないのだ、プリチャ様が同居は嫌だ、と言われるのなら、張娃様を別居させるべきだ、と自分を突き上げて、そっぽを向くだろう。

 完全に部下にそっぽを向かれては、商売が続けられないのが目に見えている。


「この際、止むを得ない。張娃に事情を告げて、プリチャが出産を終えて、落ち着くまで、結婚を延期しよう。勿論、張娃に何れは正室に迎えることは確約する。そして、部下達を宥めると共に、張娃にプリチャとの同居生活を受け入れるように説得しよう」

 松一は、そう最終決断を下した。

「プリチャ、それを呑んでくれ」

「分かりました」

 プリチャも、その決断を受け入れざるを得なかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ふむむ、こんな流れになっていたのですね。 こうなるともうどうしようもないですね。
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