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第4章ー1 プリチャと上里松一の夫婦生活(?)

 第4章の始まりになります。

 プリチャが和子を産んだことは、プリチャに対する周囲の見方をかなりの程度に変える力があった。

 更に言えば、上里松一が、プリチャを和子が産んだことから、プリチャを側室だが事実上の正室であるかのように、プリチャをそれなりに表に出すようになったのもあった。

(松一にしてみれば、自分の子を産んだ以上は、それなりにプリチャの扱いを変えねば、というように考えて、そのように振舞ったのだが、周囲の見方はそれによって更に変わったのだ)


 こうしたことから、プリチャは松一の事実上の正室と、周囲から見られるようになった。

 特に敏感に反応したのが、誰かと言えば、タンサニーに他ならなかった。


「ねえ、お父さん、お母さんと正式に結婚して。だって、子どもが産まれたのよ」

 タンサニーは、ませた口調で松一とプリチャに、よく言うようになったのだ。

 このタンサニーの言葉は、松一とプリチャ、それぞれに色々と考えさせることになった。


 松一にしてみれば、本来の年齢等から考えれば、張娃よりもプリチャの方が正室に相応しい存在と言える存在ではあった。

 そういったこともあって、松一は張敬修に、プリチャに子どもが産まれたことから、張娃が婚約破棄したい、というのなら、それを受け入れても良い、という意向の手紙を送ることになった。

 だが。


 それを読んだ張敬修は、泡を食う羽目になった。

 それこそ張娃と上里松一の婚約は政略結婚なのは間違いないが、だからこそ勝手な個人感情で破棄されるような代物ではなかった。

 それに、張敬修は表立っては言わなかったが、マニラ等にいる皇軍の食糧調達で、結果的にだが張敬修はぼろ儲けができていた。

 今後とも、皇軍、日本との関係で儲けようと考えている張敬修にしてみれば、上里松一と張娃との婚約から正室への路は護らねばならない代物だった。

 だから。


「松一との婚約を破るつもりはない。私は、あなたの正室に何としてもなるつもりです。そう直筆の手紙を書いて送れ、いいな」

「何でそこまでのことをしないといけないの」

 父と娘は、琉球、首里にある真徳の邸宅で大口論をする羽目になった。

 松一からの手紙を受け取った張敬修は首里に急行して、張娃に対して、絶対に結婚したい、という手紙を松一に送れ、と半ば無理強いをしたからだ。


「もう、あの和子という子ができたことで、私の松一への愛は冷めました。松一が婚約を破棄したい、というのなら、私も婚約破棄を受け入れます」

 へそを曲げた張娃は、そこまで口論の果てに言ったが。

 張敬修の方が上手だった。


「ほう、そうか。松一との婚約を破棄すると言うのなら、お前をマニラに連れて帰ることになるな。李金蓮とお前を同居させるぞ。李金蓮がお前をどう扱うか、分かっているのか。父の意向に反して、婚約を破棄するというのだ。お前を今後、一切庇うことはないぞ」

 張娃の啖呵を聞いた張敬修は、そううそぶいた。


 張娃は背筋が凍る思いがした。

 継母の李金蓮が、自分に対して陰に陽に苛めに奔るのは目に見えている。

 更に父が継母に加担するのだ。

 自分は一生、針の筵に座るようなことになるのが目に見えている。


「松一との結婚は、政略も絡んでいるのだ。それに松一も、お前が破棄したいならば、と書いている。自分は結婚したい、と手紙を送れば考え直すだろう。それでも手紙を送らないのか」

 張敬修は、更にそうささやいた。


 張娃は、この際、自分は何としても婚約破棄をしないでほしい、と松一に手紙を送らざるを得ない、と腹を括らざるを得なかった。

 裏返せば、プリチャと和子のことを、自分は公認することにもなってしまうが、止むを得ない。

 張娃は涙をこぼしながら、松一に婚約破棄しないでくれ、と手紙を書いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、離れていれば張娃の心も覚めますよねぇ……。 そこへ子供を連れてこられたら……。
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