表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

閑話ー1 和子の誕生とその波紋

 閑話になります。


 上里松一の長女、和子が産まれたことは周囲に波紋を広げます。

 プリチャとに間に産まれた和子を初めて自分、松一が抱いた時、自分は嬉しかった一方で、頭を抱え込みたい想いが奔ったのが現実だった。

 まさか、プリチャと愛人になって1年も経たない内に、子どもが産まれるとは。


 プリチャと初めて会った時、正直に言って、プリチャは私の目からすれば、余りにも痩せすぎていて、子どもを無事に産んだことがあるのか、と疑いたくなる程だった。

 これでも2人、子どもを産んだことがある、と聞いて、女体の神秘と言う言葉が頭の中で浮かんだ程だ。

 その一方で、義父の張敬修の言葉もあり、自分はプリチャを側室、現地妻として迎えることにした。

 とはいえ、自分には婚約者の張娃がいる。

 プリチャとの間では避妊を心掛け、子どもを作らないようにしようとも自分は想った。


 でも、実際にプリチャとの同居生活を自分が営む内に。

 プリチャの連れ子タンサニーは、自分に弟妹が欲しい、とせがむようになった。

 もし、その願いを叶えるということになると、プリチャとの間に自分は子どもをつくることになる。

 また、プリチャは安楽な生活を営めるようになったせいか、徐々に健康的に(怒られそうだが)太るようになり、本当に魅力的な体型になっていった。

 そうした流れの中で、プリチャは妊娠し、和子を産んだのだった。


 ともかく、流石に和子が産まれては黙っているわけには行かない。

 私は頭を抱えつつ、張娃らに子どもができたことを伝える羽目になった。


 張敬修にとって、この展開は少し意外だった。

 まさか、こんなにすぐにプリチャが子を産むとは。

 それこそ約9年間の夫婦生活で、プリチャは2人しか子どもができなかったのだ。

 それなのに、こんなにすぐ松一の子を産むとは。

 とはいえ、マニラに張敬修はいてアユタヤの現状を知らないので。

 プリチャの連れ子(タンサニーら)と婿(松一)は、上手く行っていないだろう。

 何れはその子をこちらで引き取れば、二人は円満に別れて済む、と楽観視していた。


 一方、張娃は荒れ狂った。

(この時代なので)夫が愛人を持つことくらいでは、張娃は(少なくとも表面上は)気にかけなかった。

 だが、いきなり子どもまでできるとは。

 しかも、結果的にだが、子どもが産まれたという知らせを、いきなり受ける羽目になったのだ。

 更に追い打ちを掛けたのが。


「お父様が、その愛人を勧めたですって」

 張娃は声を低くして、いわゆるドスの効いた声を出す羽目になった。

 真徳が、プリチャが松一の愛人になった経緯について、うっかり口を滑らせたのだ。

 真徳にしてみれば、松一から積極的に愛人に作った訳ではない、という想いから話したのだが、張娃にしてみれば、父が自分を裏切ったことに他ならなかった。


「どうしてよ。私が一緒に行けばよかった。そうすればこんなことには」

 張娃は泣き喚いた。

 真徳は張娃を懸命になだめた。

 まだ、10代前半の幼いといってよい身空ではないか。

 言葉が通じず、しかも戦乱がいつ起きるか分からない所に、婚約者を連れて行かない方が通例だと。


 とはいえ、理屈ではその通りだが、そんなことで荒れ狂った感情が収まるものではない。

「アユタヤに何としても行きたい」

 と張娃は主張し、真徳は、張娃が松一から琉球政府に預けられた人質の立場だという、張娃の公式の立場を持ち出して、張娃のアユタヤ行きを拒むことになった。

 そのために数日にわたって、張娃は涙にくれる羽目になった。


 そんな荒れた事態が、琉球にいる張娃と真徳の間では起こったが。

 アユタヤでは、逆に和気藹々という雰囲気が流れた。

「私の妹なのね。本当に可愛い」

 とタンサニーが和子を可愛がり、松一とプリチャは、それを心から温かい想いで見守るという事態が起きたからだ。

 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ