ハレ秋の何たら ハレでもない
朝の陽ざしは、時に人のやる気を奪い、時に傘の準備を忘れさせる。
ということで、立ち直った湊は傘を持たずに学校を出た。天気予報が雨だと分かっていたのにだ。
まあ、こういうことは誰にでもあるだろう。玄関前にもの忘れる感覚と一緒だ。
湊は、周りが傘の用意をしているのを見て、不安になる顔模様だった。
えー、そうですねぇ。今内心やばいとか思っちゃってます。だって明らかに少数派だからです。
一応、折り畳みはあるけれども、年季が入っているために、この頃の台風とか強風とか一瞬でフライアウェイ。
そこまで強くならないとは思うけど、不安。なんか転ばぬ先の杖、玄関に忘れたみたいでいやでしょ。
だから、そわそわしてたというか、雨嫌だなーとか女々しいこと思ってたんじゃないんだからねっ、チラッ。
やめましょう、慣れないことはするもんじゃないよ自分。傘なんて贅沢。常に冷静であれ湊。
まあ、学校に入ってから、四時間目までなんて前哨戦みたいなもんですわ。
実際、保険かけてもこのときに帰っておきたいのは山々だが、普通に六時間目まである。
んー、今日は全体的に暗いな、自分が。かわいそす、自分。自業自得、自分。
さて、前哨戦は終わりました。ここまで雨予想を全くにおわせない午前選手。
午後選手、ニュースキャスターの有言実行のため、ラストスパートをかけるのか。
その前に、昼休みを挟みますね。ここくらいしか気の休まることはない、栄養補給だ。
さてと、お昼はなんだと、おーさつまいもか、そう、さつまいm、てなんで?
炊き込みご飯はおいしそうだ、冷めているけれども、きんぴらごぼうもうん、ヒジキみたいな立ち位置。
さつまいもというとなんか料理的に語弊感があるが、干し芋だし、同じような物だろ。
きんぴらごぼうとヒジキよりは近しいね。似た者同士感が。芋は芋。
秋の旬なものではあるし、おいしいけれども、そこまで食欲沸いてないのだ。
さぞかし妹も、芋のめぐりあわせには困ったものだろう。ガスをため込むようなものだ。
母さんの奇天烈なおかずに戸惑いながらも、心に余裕が出てきたのはいいことだ。
そう、いいことだったと今五時間目の雷の音を耳にして思う。今年は豊作だな、ハハッ。
そうだね、今五時間目だっけ、物理の話とかしなくていいから、天気と結びついちゃったんじゃないの?
午後選手、まさに神がかっております。ごめんなさい、神様、そんなに小垂れ流さないでください。
あれだね、すべては傘から始まった。そして今亡き傘によって、僕の帰宅は絶望的だ。
折り畳みがある?そんなこと言うやつは、誰かビニール傘買って交換して。僕の傘9年目だから。
そして、今日のニュースキャスターは〇〇だな。覚えておこう。記録的普通の雷雨。
六時間目、収まる気配もなし。最近はにわか雨の傾向があるはずなのに、クソが。
そして、下校の時刻、改めて担任から雷雨の注意、もう遅い。
先生の電車or車事情は知らない。車?乗せろや。
みんなが普通のサイズの傘を持って帰っていきますね。人が唐傘お化けの行列のようだ
さて、僕的にはここは、焦らず、少し待ってみることにしよう。堅実堅実。
ついでに、僕と同じような状況、あるいはそれ以下の、ガチ万事休す的な人物でもいれば面白いのだが。
とりあえず、隣のクラスとかね、ほら、チラッ。うん?チラッ。??いる。あいつが。Sが。
あいつ席端だから頬杖ついて、ふぅ、とかやってるわ。これはこれで巡り合わせだ。
正直、他に、三鶴木おそらく帰ったし、誰もいないし、話しかけてみるか。
ガラガラッ、チラッと視線向けて、興味なさそうにして。ふぅ、はやめろよ!本人の前だぞ!
遠慮がなさ過ぎて黙る。しかし、こちらもSクラバ認定は取り下げないのだよ。腐ハハハ。
電子書籍を読むのがおそらくこの状況の最適解だが、どうせ二人だし、通話のこともあるし、丁度いい、
「桜庭さん、まさかいるとは思わなかったよ。どうしたのかな?こんな天気の日には早く帰りたいものだね?」
「そうね、あなたの顔が雨で絶望しているような顔だったし、、今日の天気予報をきちんと見ていればわかるもの。」
「へぇ、まぁ、べーつに、自分だって折り畳みくらいはあるんだ。だから、もう少し勢いが収まったらでいいと思うんだよね。」
「たしかに、今出て行って交差点で傘が込み合う状況を見ていたら、時間をずらしてっていう発想にはなるわね。あなたにしては冴えてるわ。及第点を上げてもいいくらいよ。」
「ぐっ、痛いとこをつくというか、言いたいことをバシバシいうね。あまりクラス仲になじめていなそうだけど、そこについてはどう思う?」
「あなたに言うことじゃないけど、正直他人は他人よ。どんなに仲良くても、本当の意味での助け合いは学生の間じゃ難しい。かといって、大人になって借りでも作れば、印象は最悪よ。」
「確かに、そうだけれども、、友達であることに非はないよ。それは、桜庭さんの視点以外から考えてみればわかること。さすがに、自分と桜庭さんは友達というかは微妙なところだけどね。そっちも納得できないって感じじゃないか。」
「私は明確な答えを出していないだけ。貴方とは違う、友達ついては否定しない。けれども、それは仕事を始めてからのビジネスとは別物で、要らない関係だったりすることもあるわ。
要らないは言い過ぎだけれども、大体が卒業アルバムを見て思い出すか、同窓会の引きに出されるかで、懐かしんで遊ぶ時間まではないのよ。みんな大人になる、不条理じゃないわ。」
「何と言おうと、桜庭さんは周りを見てみるべきだと思う。おそらくだけど、中学生の桜庭さんもそんな感じだったんじゃないかな?それが続いているとなると、やっぱり見直してみるべきだよ。
こうして友達でもない自分と話しているのも、桜庭さんに何らかの変化が起きているはずだよ。
なんとなく、桜庭さん、人と付き合うのが不器用だって感じることあるからさ。」
「…いいでしょう。私が不器用なことは認める。それであなたは満足するのかしら?」
「今のところは、ね?この話いやだったら本でも読めばいいんだ。そうでしょ。」
「…。」「そろそろ僕は教室に帰るよ。待っても雨止まなそうだからね。」
そういって話を終えました。うひょー、内心緊張していたわ。
途中から説教だったからね。他人からの説教は、いい人とそうでない人で感じ方が真逆だからな。
あー、敵認定だな。久しぶりにやっちまった失陥。これから、俺の周りが攻撃されていくのだ。
友達じゃないなんて言わなければ、、、言ってないな、、、嫌ーん言ってた。
もうドンマイだね、雨やまないし、らちが明かないので帰r、
タッタッタッ、
あれ、今の桜庭だよな、もう帰るの、えーどうしてだ?だって外は雨、あいつも待ってた、だかr、
あれ?車が見えるよ?誰のかなー?
呆けてると、桜庭らしき女子生徒が乗ったのがわかった。
そして、律儀にもうちのクラスにニヤッて、キー、あいつ、もう、許さん。
結局、水たまりが多いのと、折り畳みの傘の部分が力尽きて家に帰ることができました、はいお疲れ!






