ハレな会話、ハレな時間乙
「…」
あの顔を見て一旦自分は撤退しました。
テステス、こちらテルミー、地雷潜行中くれぐれも気をつけてくれ。
話しかけるだけでも一苦労、三鶴城ファインプレーも虚しく桜庭さんは座り咲いてしまった。
やっぱり綺麗だよな。
陽の光…いや、シャワーをだな浴びている読書好きな女子ときたら、素晴らしいアングルで写真が撮れそうだ。
自分のクラスに帰った僕は落書き帳のように扱っているノートを一冊出し、さっきのアングルとやらを描いていた。
うむ、我ながらグロッキーの才能を認めざるを得ない
か。
爪をもう少し綺麗に見せた方がいいんじゃないかな、微調整。
もちろんグロッキーに時間をかけたのは休み時間だけできちんと数学の授業は受けさせて頂きました。
(内容を理解したとは言ってない)
昼休みに隣のクラスを伺ってみた。
三鶴城はいないことを確認済み。ならば行くしかないと。
「桜庭さんいますか?ちょっと話したいことがあるんですけど?」
すると、桜庭さんはあっけなく、
「いるわよ。勝手に入ればいいじゃない。
どうせ三鶴城先生がいないかコソコソしていたんでしょう?」
何挑発かましてきてくれとるのですか桜庭さん?
「えっとさ、電車で最近すれ違うよね?物珍しくてジロジロ見ちゃってごめんなさい。
よかったら学食で何か奢ろうかな、お詫びに。」
あー、奢るはちょっと勢いつけすぎちゃったかな。
土下座でいいなら軽い頭下げますけど。
「ふーーん、それなら学食のデザート一品ずつ奢りなさい。ところで何?その悔しそうな顔。自分から蒔いた種なのに。」
ふーーんて、君は鼻息を溜めてだすタイプなのか、キツくない?
桜庭さん、貴方は早くも自分のSっ気を自覚して習得しているのですね。
あれ、なんで敬語なんだろう?
「そういうことになるな。まぁ、一品ずつというそちらのペースに合わしてあげるということでどうか?」
「…小さい男ね。」
あームカですな。紳士たる我傷つきますぞ。
「じゃあ、また明日。」
「ああぁ、また明日っだ。」
少しどもってしまった。
これは負けではない。
戦略的撤退であり。仕切り直しということに…
「春巻くんだな、どうしたんだ私の教室に何か用か?」
振り返ると恐怖の三鶴城先生、キラッ
時間を見誤ってました。撤退不可能乙。
よし、今日も俺は帰ろうと思った矢先、学級委員の三上さんに頼みごとをされてしまった。通称愛菜さん。
「春巻くん、今手空いてる?
私今から妹を迎えに行かなければならないの。
多分、そんなに時間かからないからほかのクラスの委
員の子の話とか聞いて従事してくれたらいいから、お願い!」
頭を下げられては、時間がないとは言えないイエスマン。
さて、その集いとやらに参加しようか。
「大丈夫だよ、妹さん思いなんだね、行ってあげなよ。
そう、三上さんは違う。妹の扱いが、神レベル。
「ありがとう、助かるよ。じゃあね。」
そう言って足早に自転車置き場へと去っていった。
さて集いにGOTOなんだが、
「なんでお前がいる?」
「奇遇ね。私は仕事を正式に頼まれたのよ。」
桜庭さんもといSクラバさん、いやSさんでいいか。
「おい、さっさと始めるぞ。」
他のクラスのどうやら学級委員長らしい。Sさんも大人しくしている始末。
仕返しは突然にって。
「あなた何笑ってるの?別に楽しくないわよ。」
あちゃ、こっちもお叱りは突然にときっちり両成敗。
「いいえ、僕は委員長ではないんですが代理としてきまして、他の人たちの話を聞いて出来ることをやっていきたいと思っています。
これはその表情というか気持ち作りです。」
こんな感じで挽解ならぬ弁解をして皆さんの視線を集
めてしまったのだが、そのせいで今のあいつの表情筋は誰もノーマークじゃないか。通称未来めっ、
クソっ、俺としたことが。復讐のS憎し。
そこからは、周りの話を聞いてなるべく各自の教室から黒板消しやチョークの備品を足したりだとか、今月の朝会のテーマの発表などを案を出していた。
そもそもチョークとか新しい黒板消しとか授業が一瞬止まるハプニング要素じゃないか。
よもや、それを自ら整理整頓して整えられた状態にしてしまうとは不覚。
しかも朝会のテーマってあれ話長くなるだけだろ。深くなくていいんだ。
校長の話はまどろみのウィスパー声だ。なに言ってるか分からん。
聞こうとしてもどうせ周り煩いからな。
そして、アイツは嬉々として参加してる。
あれ?Sが急にMに返り咲きですか?
この話題楽しくないんですけど。別に。
…こら、君のせいで発言がデジャヴったぞさっきの。
アイツが真面目モードだと話しかける僕アウェイじゃん?
別にアイツとケリをつける自己欲求があるわけでもないけど。
急ぐのは良くないなーとのんびりだよのんびり。
…これここ最近の朝の俺を否定する言葉じゃないか。
あー詰んだ、もう無神経に作業しよう。ロボだロボ。
委員会のクラス委員代理をきちんとこなし、帰ろうとするとやはりあいつが。、
いやね、そらそうでしょ。同じ委員会で顔合わせしてたんだから。
どちらかが先にやっても終わる時には揃って終わるんだよ。最悪だよ。俺の方が遅かったし。
で、同じ方面の電車。早歩きで一足先に着くまでギリギリで乗れず。
後からノコノコ歩いてたMさんはSさんに早変わり。フフフとかさもうめっちゃ嘲り。
取り敢えず、そんな雑念を振り払って今日の委員会を労ってみた。
「えっと、お疲れ。とんでもない巡り合わせだったけど、これでやり方分かったし、なかなかためになる体験だったよ。」
どうよ、巡り合わせという皮肉に、やり方を理解した
という僕の実践要領の良さを体験という1stStepで発
揮した度量を纏めてお疲れ様だゴラァ!
「あなたの要領の良さは分かったわ。
でも、日常でそれが全然見えないのは、それが限定的
かつ瞬間的にしか使いきれない未熟さというところかしら。
少しは自分を見直せたでしょう。ご苦労様。」
な、なんと、コイツ俺の口語文テクニックにフルカウンター機能を持っていただとぉ!俺の心にゲイボルグ!グサっ!
あいつは僕の降りる駅の先だったらしく、俺は早く降りてやりたい気持ちでいっぱいいっぱいだった。