第一戦記 片腕の行方
目が覚めた。
ここはどこだろう。
判断が追いつかない。
体が鈍い。
動きたくない。
だるい。
私はもう一度眠る。
目が覚めた。
ここはどこ?
私はもう一度考える。
あれ?異変に気づく。
なぜか左腕の付け根が痛い。
「うそでしょ」
私は目を疑ったけどホントらしい。
人間にはじめから備わってる腕というものがなかった。
正確にはあったのだが...すでに腐敗し始め虫がたかっている数m先にある物体がそうらしい。
私は何故か痛みを感じなかった。
なぜだかわからないが。
すごく軽かった。
今まで何が起こったかを思い出そうとしてもわからない。
考えたくもなかった。
さて、これから何が始まるのかな?
全然ワクワクしないことをつぶやいてみたところで私はまた眠っていた。
「ぉぃ」
「ぉぃ」
私が三度目に目を覚ましかけたとき。
「ぉぃ」
何かが聞こえた
その何かははっきりとした人の声へとかわる。
「おい、目をさましたか!」
嗚呼もううるさいな、ほっといてくれ。
私は左腕をなくしてそのまま死んだはずだ。
だとすればここは天国ってやつなのか?
それとも地獄ってやつなのか?
なんだなんだ、なんなんだよコンチクショウ。
もう死なせてくれ。
理由はわからないけど必死に死にたがってる自分がいた。
なんなんだなんなんだ、ほんとに何なんだ。
何をしていいのかわからない。
何をするべきなのかがわからない。
そしてもう一度声が聞こえる。
「おい、死ぬんじゃねえぞ!今水を持ってくるからな」
ああもう鬱陶しい。
殺すなら殺せ。
私は半目をはっきりと開けた。
そこで何を見たのかは思い出せない。
「おい、シャーリー!しっかりしろ!」
呆然としていた私はふいに気づく。
隣で銃をかまえてる男に。
「なにやってんだよ!シャレットはどうする!こんなところで死んでいいのか?」
私はその後のことは覚えてない。
と私はゆっくり食べ物を持ってきてくれた男に言った。
「やれやれ全く、覚えてない覚えてないじゃなんにも力になれないぞ。せめてなんでお前の左腕がなかったのかぐらい教えてくれよ」
「...」
一つわかったことがあったが無言を貫いた。
きっと彼にもわかってる事実だろう。
「ところでお前、foxの戦闘員だな」
「...」
「もし何も喋らないのならこのまま司令部に突き出すぞ」
彼はいった。
「殺すなら殺せ。」
私は初めて彼にものを話した。
「まぁ落ち着けよ。今のはただの嘘だ。お前みたいないい女を突き出すほど男として腐ってねぇよ。」
「何が目的だ」
「おっとそっちからか。まぁそういうのは食いながらにしようぜ。自己紹介がまだだったな。俺はラックス。武器商人をやってる。お前みたいな危ないやつを匿ったりするのも仕事にしてる。」
ラックスと名乗った男は更に続ける。
「お前の名前はなんだ」と。
「名は忘れた。」
「嘘だな。foxの部隊は戦闘員ひとりひとりの士気を高めるために名前を大切にすると聞いた。それを忘れるはずがない。どんなに頭を叩かれて記憶を失ってもな...」
私はそれを聞いて仕方なく話す。
「救済に感謝する。私はシャーリー。第21期特別前線派遣班の指揮役だった。はずだ」
「特別前線派遣班ねぇ。エリート兵士ってとこか。まぁ女なのにそんな人生を歩むとは珍しいな。まぁじゃんじゃん食ってくれ、毒は入れてないからよ」
ラックスは言った。
私は事実腹が減っていた。
目の前に置かれているスープとパンに毒が入っていたとしてもこれを食べて死ねるなら幸せだと思って食いついた。
「おいしい。」
本音が漏れた。
ラックスは笑っていた。
ラックスは更に言った。
「当たり前だろ?うちの近くで取れるとうもろこしは他の奴らのものとはわけが違うからな。」
「なぜ私を助けた?」
私は訪ねた。
「さっきも言ったろ?お前みたいな美人さんを見放したり殺すほど男は腐ってないって。それだけだ」
「しかし私はfoxだ?もし私が弓を持っていたら喉元に刺していたかもしれない」
「うん?この時代に弓使ってんのか。珍しいな。」
「まぁ多少悩んだが目の前で腕がちぎれて今にも死にそうなやつがいたら敵だとしても見捨てられんだろ」
「...」
私は無言で絶句していた。
このご時世に敵に情けをかける人がいるとはな。
「安心しろ近くにいい感じにテクノロジーアームを営んでるやつがいる。腕なら元通りになるさ。」
「あと残念だが弓はうちで売ってないんだ。残念だが別の店で頼んでくれ。」
私は何がしたかったのだろうか?
この惑星の人たちの土地を壊し、殺し、平穏を得るために今まで戦ってきた。
間違っていたのだろうか私は?
いくら自分に訪ねても答えは帰ってこない。
「ふふふ」
不意に笑いがこみあげて来る。
私はあのとき死んだはずだった。
思い出してきたぞ。
「ラックス、思い出してきたぞ」
「どうした?」
「私はな、私が偵察を怠ったせいで部隊の4人が死んだ。
残りの一人は私を隠して一人で前線に突撃した。
私は立派な人殺しだよ」
冷たい沈黙が部屋の中全体に染みた