45話 黒幕は…… ★
屋敷に戻った私は、タツヤを研究室の部屋へと連れて行き寝かせた。
治癒師の癒しに依って傷は癒えた。
しかし依然として危険な状態は続いている。多くの血を流したタツヤは昏睡状態のまま、
生きているのすら奇跡のような状態なのだ。
「水分と栄養価の高いものを流動食のようにして少しずつ与えて下さい」
「はい、畏まりましたお嬢様」
私はメイドにお願いした。
固形物は嚥下してくれないだろう。それだけ弱っている。
少しでも早く血液を増やさなければ死んでしまう。そんな状態なのだ。
──頑張るのよ、タツヤ……。
私はタツヤの冷たい手を取りながらそう祈った。
「お姉様、お父様とお母様がお呼びです。広間に参りましょう」
「……分かりました」
妹のキャンディーが、呼びに来た。
父と母が広間で待っているらしい。母も学校から呼び出されたのだろう。
タツヤの様子を見守っていたかったのだが、報告が先だろう。
私は後をメイドに任せ、後ろ髪惹かれる思いで広間へと向かった。
「ミルキー、彼の容態はどうですか?」
広間に入ると母が心配そうにそう問いかけて来た。
広間には父と母、衛士長のケント、それにメイドのミッチェルがいた。
「はい、依然危険な状態です。今晩が山かと……後はタツヤの生命力にかけるよりほかありません……」
「そう……」
私の答えに母は残念そうに瞳を伏せた。
「お嬢様……申し訳ございません。全てわたしの責任です」
「ミッチェル。もう動いて大丈夫なのですか?」
ミッチェルが沈痛な面持ちで謝罪してきた。
治癒師の癒しで怪我自体は回復しているのだろうが、まだ起き上がって行動できる状態ではないはずだ。無理をしているのだろう、顔色が良くない。
「はい、癒しを頂きましたので大丈夫です……それよりもわたしがタツヤに無理な訓練を押し付けてしまい、疲弊させ逃げることもできない状態にしてしまいました。あまつさえ賊に倒されてしまい、お嬢様が大切になされている裸猿二匹を奪われるといった失態を引き起こしてしまいました……ここは責任を果たしたいと思う所存です」
ミッチェルはそういいながら床に両膝をつき、すっ、と準備していたであろう短剣を鞘から引き抜いた。自らの喉を突き贖罪とする積りらしい。
「なにを血迷っているのですか⁉ 私が貴女を責めることはありません。むしろ怪我まで負い、命懸けでタツヤとマロンを守ろうとしていたのでしょ? それにそんなことをしてもタツヤが良くなるわけでも、マロンが帰ってくるわけでもありません。むしろ私にとって大きな損失になるのですから、お止めなさい!」
「しかしお嬢様──」
「──これは命令です! まだマロンを救い出す仕事が残っているのです。そんなに罪悪感を抱いているのであれば、マロンを救い出して恥辱を雪ぎなさい」
「は、はい、畏まりました……」
ミッチェルは私の叱責で短剣をゆっくりと鞘へと戻した。
まったく、なにを考えているのやら……。
「ミルキー、ミッチェルから話は聞いたよ。それにケントから証拠の品も預かった。これで犯人は別として、この件を依頼した者を捕らえることができそうだ。マロンもすぐに見つかるだろうね」
父がテーブルの上に置いた証拠品のナイフと依頼書を前にして、複雑な表情でそう言った。
黒幕はゲイリッヒ侯爵、それを告発できるのだから嬉しそうな顔をしてもよさそうなものだが、なぜか顔色は優れない。
貴族同士の争いになることを憂慮しているのかもしれない。まあぽっと出貴族が大々的に上級貴族を告発するのだから、元来庶民であった父には荷が重いのだろう。小心者の庶民ですから。
だがここで私に懸念がないわけでもない。
「お父様、告発は少しだけ待っていただけますか?」
「ん? どうしてだい? 早期解決なら早めに告発した方が良いのではないかい?」
「ええ、でもなにか引っかかるのです」
屋敷に戻るまでに色々考えた。その中でどうも腑に落ちない点がある。
確かに証拠が発見できて喜んだのは事実だ。だがあまりにもあっさりし過ぎていやしないだろうか?
「引っかかる? なにがだい?」
「はい、犯罪者組織と黒幕が、こうも簡単に露見するでしょうか?」
「まあ、犯人も急いでいたんだろう? 証拠を残していたことも忘れるほどに」
「確かにそうですが、どこか意図的に置かれていたのではないか。そう感じるのです」
手際の良い手口と、危険を察知する慎重さを持ち合わせていると思われる賊。そんな賊が、態々足跡を残すような真似をするだろうか?
あの場所がアジト的な場所だったとしても、依頼書を持ち込むようなヘマはしないと思う。もし個人的に持っていたにしろ、仮に自分が捕まったり倒されたらその証拠は白日の下の曝されてしまう。赤猫盗賊団ともあろう大犯罪組織が、そんな稚拙な行動をとるはずがない。
よっぽど腕に自信があっても、捕まったり倒されたりすることはあるのだ。そこに依頼主を露見させるような証拠を持ち歩く、とは考え難い。
「意図的に? 何のためにだい?」
「そうですね、しいて言えば、捜査を攪乱させる意図があったのではないかと」
犯人は自分達に向く捜索の手を、他に向けたかった。
その隙にマロンを本当の黒幕に引き渡し、自分達は何食わぬ顔で逃亡する。そう考えるのが筋である。
しかし、それはただ予想に過ぎない。
「でもこの証拠と、今まで絡んで来ている者達とは一致しているよ?」
「問題はそこなのです。こうもあからさまにゲイリッヒ家を匂わせる証拠が出て来るのが、怪しいのです」
「怪しくないよ。侯爵に依って依頼されたことを裏付ける証拠でしかない」
確かにそうだ。ゲイリッヒ侯爵家の印影はごまかしがきくものではない。それは確かにゲイリッヒ家の印で間違いないのだ。でも、だからこそ怪しい。
「とにかくタツヤが目覚めるかどうかわかりませんが、三日、いえせめて二日でもいいので告発は待って下さいませんか?」
「うーん、ミルキーがそう言うなら、それはいいが、こういったものは早めに上にあげないと、対応が遅いとお叱りを受けるからね……」
「それは分かっております。ですがこうもあからさまな証拠を簡単に信用してもいいとは思いません。幸いにもハイド様に探りを入れてもらっています。少なくとも明日にはゲイリッヒ家の動きが明らかになるでしょう。それまでお待ちください」
実際告発してしまえば早期解決の糸口にはなり、よってマロンも早くに戻ってくる可能性はある。しかしそれが事実でなかったら、捜査は振出しに戻る。
それに告発したとなれば、タツヤとマロンの事が王にまで伝わってしまう。そうなれば、もしもタツヤが助かりマロンを取り戻したにしろ、今後多くの邪魔が入る可能性もある。
そうなれば厄介極まりない。満足な研究は出来なくなってしまう。
「うーん、分かったよ……でも明日一日だよ。それ以上は待てない。こうも明らかに我が家に攻撃を仕掛けて来ているのだから、黙っているわけにもいかないからね。我が家の沽券にかかわる」
父もやはり密かに怒っているようだ。
下手に出てばかりでも貴族としてなめられてしまう、そう考えての事なのだろう。
「分かりました。明日一日で結構です。それまでには証拠を集めたいと思います」
マロンは早く見つけ出したい。でも、告発したからといってすぐに出てくる可能性もない。遅くても五日、それまでに見つけなければマロンの命も危ぶまれる。
突然変わった環境に適応できるだけ裸猿は順応性がない。それに今まで一緒にいたタツヤが側にいないとなれば、マロンは精神的におかしくなってしまうかもしれないからだ。
「お父様は引き続き街の警戒と、街の外に出る者たちの荷物を検めて貰えますか? おそらくまだマロンはこの街から出ていないと予想しています」
「うむ、分かった。ケント、よろしく頼んだぞ」
「はっ! お任せください」
あの地下室にタツヤがいた以上、一時あの地下室にマロンもいたと考えられる。そして私達の追跡を知って、急いで別の場所に移されたのだろうと推測できる。
そうであれば街の中のどこかに捕らわれているのだろう。
きっと明日になればハイドの報告も入ってくる。そうなればゲイリッヒ家の動きも明確になり、マロンの居場所も分かるかもしれない。
「お嬢様」
ミッチェルがおずおずと話し掛けて来る。
「どうしました?」
「はい、犯人はおそらくタツヤとマロンを勘違いしている可能性がございます」
「勘違い?」
「はい、言葉を話す珍しい裸猿はどちらだ? と言っていました。しかしあの時点で言葉を発したのは、タツヤではなくマロンでした。マロンを珍しい裸猿と認識しています」
「なるほど、それでタツヤは考えて、ミッチェルのナイフで自分の手を傷付けたのね……でもなんでタツヤはその時言葉を話さなかったの?」
「は、はい……少し厳しく特訓したせいで、声を出すこともできない程疲弊させてしまったので……申し訳ありません……」
「まぁ! それはやり過ぎです。タツヤは幼児並みの体力しかないのですよ……でも、それが功を奏したということでしょうか……代わりにマロンが攫われたのも許せませんが……」
タツヤ自身もやり過ぎだ。あんなに血を流さなくても良かったものを。
でもマロンを助けたかったのだろう。私達に居場所を教えるために無理をし、そして命の危機に瀕している。まったく優しいものだ……。
とにかく猶予は一日しかない。明日できるだけの情報を集めなければならないだろう。
ミ「タツヤ! この物語にレビューが貰えたそうよ!」
タ「ほ、本当ですかご主人様!」
ミ「ええ、本当よ、裸猿のタツヤを見てくれている人もちゃんといるってことね」
タ「この最底辺の僕を応援してくれているのですね! ならばランキングにも早々に乗れるってことですね?」
ミ「甘いわねタツヤ。ランキングはそう甘いものではないわ。レビューを貰っただけで乗れる世界ではないのよ」
タ「なんてことだ……この異世界同様、ランキングも厳しい世界ということなんですね……」
ミ「そうね、最低でも10人の読者様が評価を入れてくれないと、ランキングには名を連ねることができません」
タ「なんてことだ……そこまで厳しいのか。くそう、無能な僕はどこまでいっても底辺ということなのか……一度でいいからランキングという場所に乗ってみたくても……」
ミ「諦めちゃだめよタツヤ! こうして応援してくれる人はいるのだから、精一杯生きるのよ!」
タ「そ、そうだ! 僕は諦めない、この厳しい世界から成り上がるんだ!」
ミ「そうよタツヤ! そのいきよ!」
タ「みんな! 僕に力を貸して下さい! 最終話↓に評価欄があるので、そこをぽちっとして下さい! それで僕は最底辺からランキングという世界にいけるかもしれないんです! ですから僕に力を~!」
レビュー頂きありがとうございました<(_ _)>




