96話 空間移動魔法?!
「とにかく、食糧などはデバシーにいっぱい詰め込みましょう!」
「そうだな」
「フィアンさん! 授業はどうするんですかっ!」
ルーネがぱっと飛び出してきた。あんまり構ってあげられてないのに心配してくれてたんだな……。
「大丈夫だ!! 1年目でほぼ毎日受けていたおおかげか、かなり余裕があるんだ。1年休んだとしても、4年目前期には全ての課程を修了できるよ」
「す……すごいですねっ!」
「真面目にやってきたお陰だな!」
「フィアン! デバシーが鳴ってます!」
「む、神冶さんからだ! もしもーし!」
「おお! 出たか! ちょっと君達に伝えたい事があってのう!」
「ごめん神冶さん! 今すげえ急いでてさ……ちょっとトゥーカまでダッシュで戻らないといけないんだよ! また今度でいいかな?」
「トゥーカ? その国はわしらの場所寄りの国じゃないか、遠いのう」
「そうなんだよ!」
「わしはなんていいタイミングで、電話できるやつなんじゃろう!!」
「!?」
神冶さんが急に声を上げた。毎回ビックリするんだよな突然だから……。
「えーっとどういうことでしょうか……?」
「実はな!! 空間移動魔法の試作1号が出来たんじゃよ!! これで長距離移動ができるぞ! じゃが、欠点があってのう……」
「ええええ!! 天才かよ!! 神冶さん!!」
「ふぉっふぉ! もっとほめるがよいぞ!! じゃが欠点があっての……」
「Foo! 最高だぜ! 早く送ってくれよう!」
「ちょっときけい!!」
「はい!」
「これには大きな欠点がある。わしやゼブ、ティタが試したかったんじゃが無理だった理由じゃ」
「ほ……ほう」
「まず1つ目、この魔方陣を使用した時、周囲を巻き込み、大爆発が起こる。もちろんその中心には術者……つまりおぬしらがいる形になるのう」
「えっ……その爆発で俺ら死ぬんじゃ……!」
「そうじゃ! 生半可な奴なら木っ端微塵になる。じゃが! 超高純度の魔装魂で防御力を限界まで高めれば耐えれないことも無いじゃろう……(多分)」
「なるほど……でも俺は耐えられるかもだけどネビアが……! (今多分って言った?)」
「そこはぎゅーっと抱き合ってくっついてフィアンが賄うしかないじゃろうて」
「なるほど……その手があったか……」
「そしてもう一つ! 魔方陣はさいころのように6面方向に設置するんじゃが、同時に全てに、強力な魔力を注がねばならん。これまた死ぬほどじゃ!」
「つまり……最強の闘気で出来た魔装魂と、最強の魔力を同時に込める技術が必要……と」
「俺らでいけるじゃん!!」
俺はネビアと手を合わせた。むしろ俺達専用じゃね? ってレベルの敷居の高さだ。
「後もう一つ!! 場所を指定してそこに飛ぶように設定するんじゃが、近辺に高い魔力反応とかがあると、そこに引き寄せられ、軌道がずれる事があるんじゃ」
「移動が完了したらすぐにマップを開く事を進めるぞい」
「後、使用するときはなるべく周りに何も無いところを選ぶんじゃぞ! あと全ての工程を本気で! 死ぬ気でやるんじゃ!!」
「わかりました!!」
「とりあえず、座標を書き込まねばならん。どこに行きたいのか送ってくれんか?」
「了解!」
俺はマッピングしたマップデータを神冶さんにアップロードし、ここに行きたいと印をつけた。場所はトゥーカ城の周辺だ。
「よし! じゃあ追記するから少し待つんじゃ!」
・・・
「よし! 出来たぞ! 今から転送させる!」
「はい!」
少しすると、6枚の大きな魔方陣の描いた触媒紙が届いた。結構でかいな……!
「配置する位置はこれじゃ! よく見て設置するんじゃぞ! 検討を祈る! 後、結果も教えるんじゃ!」
「おっけー! 無事に生きていたらね!」
これで一瞬で行けるなら何も言う事は無い。大爆発して死なない事を祈るしかないな……。てかこんな実験よく進めるな……。やはり神冶さんその辺の道徳的な感情はあまりないようだな……。
「よし! では早速移動して、設置しましょう!」
そういって、中央都市から少し離れ、あたりに何も無い平地へとやってきた。
――アースウォール!
ネビアはアースウォールを設置し、そこに魔方陣をぺたぺたを貼り付けていった。なるほど、これで6面に設置するのか……。
「これが最後の一つですね……! フィアン! 一緒に入りますよ!」
「おい……ネビア! 俺の魔装魂の強度が足りなかったら木っ端微塵で死ぬんだぞ……?」
「何言ってるんですか。僕には失敗のビジョンは見えませんよ。フィアンを信じてますからね」
「ネ……ネビアああああ!」
「ちょっと! 何してるんですか! 自分同士ですよ!?」
「あはは! でも今から密着しなければならんからな。離れるんじゃないぞ☆」
「いや……自分だけど気持ち悪いですねこうやって見ると……そういう言動は控えなくちゃですね……」
「おい。何一人で悟ってるんだよ。そこで悟ってしまったら自分が自分でなくなっちゃうぞ!」
「てか、早く行こうぜ! 無駄話をしてる場合ではない!」
「そうですよ! 早くアルネさんの援護をしましょう」
「だな……」
ネビアは最後の魔方陣をアースウォールを展開し設置。中に入ったから真っ暗になってしまった。
「よし、しっかりと抱き合うぞ……」
「はい。僕は魔方陣それぞれに、ライトペイントで魔力を注ぎます」
男二人で密着し、何ともいえない気分だ……。ただ、肌はすべすべで男臭さを一切感じないのは、きっとまだ9歳だからだろう。9歳でよかった!
「じゃぁやるぞ……!」
――魔装魂!!
「すごい……魔装魂が赤く光ってますよ……!」
「ぐぐぐ……ネビア……早く……!」
「わかってます! はっ!!」
ネビアは魔力をかなり溜め込んだラインとペイントを散りばめた。
「ま……まだ発動しないのか……!」
「かなり溜め込んでいるんですが……!」
ライトペイントと自身の手を使って必死に対応している。
しばらくすると魔方陣6つ全てが突然青く光だし、俺達の居るところは完全に青い光で包まれた。
「何だこの感覚……!」
「い……いけるんですかね……!?」
――キィン!! ドーーーン!!
「うわあああああ!」
俺達は青い光に包まれ、そのまま大きな音が鳴り、大爆発したようだ……。




