88話 謎の少女
入場後、俺たちは外にある選手控え室にて待つことになった。その場所からは結界の中が非常に見やすい。第1試合の人たちが準備をしている。何をしているのかよく分からないが……係りの人先導の下、結界には入らず、手前にある円の上でじっと待機をしている。しばらくすると光の線が結界からのびて、選手の胸あたりにあたり消えた。それを終えたら結界の中へと入場、合図を待っている。
俺達の第1試合は一番最後だ。ゆっくりと観戦する事にしよう。
「ねぇねぇそこの君!」
「ん? 俺か?」
「ぼくの番始まったら起こしてね! 君達のひとつ前なんだ!」
「え……? あ、いいけど……」
「やった! ありがとうね!」
そういって綺麗なピンク色の髪の少女は禍々しいオーラの放つぬいぐるみを抱いてその場で寝始めた。
いや……少女じゃんこの子!! こんな小さな子が選手なのか!? 一般的な目から見てそれは俺らもだったか……。
ひとつ前ってことは、俺らが勝ったら次はこの子と戦うのか……本気を出しにくいな……。
「では!! 早速第1試合!! スタートだああああ!!」
大きな鐘の音が鳴り、俺ははっとした。こんな少女に構っている暇は無い。試合を見なければ。
第1試合は4人対4人、お互い近距離2人遠距離2人のバランスのよいチームだ。
近距離同士がぶつかり合い、お互い一歩も引かない状況になっている。その間、後方の魔法士が魔方陣を描き攻撃準備を行っている。
ほぼ同時に魔法士それぞれが魔方陣を描き終えた。
流石に試験の時とは違う。描くのは格段に早いし、位置取りも上手い。まぁそうは言ってもネビアと比べれば……って感じだが。
魔法が飛び交い、剣士が剣を打ち合っている際に、一人の魔法士が隙を見てナイフを投げ、それが相手の剣士に突き刺さった。
「ぐっ!!」
「ナイスだ! 叩き込め!」
「シールドバッシュ!!」
ナイフで刺された剣士にシールドバッシュを叩き込み、くらくらしている剣士にそのまま鎧の隙間を突き刺した。
「ぐうう!」
剣士が倒れこむと、結界から複数の光の線がのびて剣士に触れた。そのまま剣士は綺麗に光り輝き、最初に待機して何かを行っていた、円状の所へと出てきた。
なるほど……通常の結界であれば、誰かが負傷した時点で全部光って、全員元に戻ってしまう。しかし、これは特別な結界で、負傷した人だけが外に出されるようになってるんだな……。すごい技術だな、完全に仕組みは謎だけど……。
一人減るとあとはかなり厳しい、剣士二人で一人の剣士を攻撃、そのままダメージを与え、後方の魔法士へ突撃し、そのままやられてしまった。
「勝者! 3番チーム!!」
わーっと会場が沸いた。集団戦ってのも見ていて中々楽しいものだな……。やるのが一番楽しいけど……。
「つづいては!!」
・・・
そんな感じで試合がどんどん進んでいった。試験の時よりレベルが遥かに上がっているが、俺達からすればやはり物足りない感じだ。
「7番の方! 出てきてくださーーーい!!」
「あっやべ! おい! 7番って君だよな! 起きて!!」
「ふああ……あ! ぼくの番きたかな! まちくたびれたよおー」
その少女は目を擦りながらひょいっと会場に出てきた。非常に眠そうにしている。あんな様子で勝てるのか……? というより、あいつ……一人で出場するのだろうか。相手は二人だぞ?
それぞれ準備を終えて装備等もばっちりだ。少女はぬいぐるみを持って、普通の服を着ているだけの状態だ……。むしろパジャマに見えるなあの服。
「えー……では役者が揃った所で……! お互い構えて!」
「あなた……そんな装備でしかも一人で……。申し訳ないけど速攻決めさせてもらうわ!」
「うーん……君達はつまらなさそうだなぁ。どう思う? ターン君」
少女はそんな事を言いながら禍々しいぬいぐるみに話しかけている。心ここにあらずって感じだ。
「では……第7試合! スタートーー!」
鐘がなると同時に魔法士が魔方陣を描き始め、女剣士が閃光脚にて飛び出した。結構早いな。
「はぁぁぁぁ!!」
これは終わったな……そう思った瞬間、少女の方から大きな力を感じた。
「ターン君いけー!」
閃光脚で真っ直ぐ突っ込んできた女剣士の目の前にぬいぐるみをぽいっと投げた。その瞬間……
「ぎっ!! ああああ!!」
ぬいぐるみから無数のとがった骨が大量に出現し、突っ込んできた女剣士に無残に突き刺さり、ずたずたになった。……そのまま女剣士は退場になった。
「あはは☆ 今の姿はちょっと面白かったよー!」
「ひっ……」
少女の異様な雰囲気に後方の魔法士は完全にびびってしまっている。
「うーん……君はこれでっ☆」
少女がぬいぐるみを前方に突き出すと、瘴気の様なもので光り始め、魔法士の下に魔方陣が展開された。というかさっきぬいぐるみは骨でズタボロになってたのに、綺麗に治っている……。
「なんだ……!?」
魔法士がそういった瞬間にはもう発動しており、魔法士は恐ろしく濃い瘴気で包み込まれた。
「ああああ! くる……ぐるしい……!」
そういって声が出なくなり、真っ黒の瘴気に包まれた魔法士はそのまま倒れた。
「うーん、今のは微妙だったねー……。はぁ、つまらない」
「え、えーーっと……。勝者! 7番!!」
会場は何ともいえない雰囲気に包まれ、少女はそのまま控えに戻ってくるとまた寝てしまった。
一体何なんだこいつは……。




