85話 今日から学生!
俺達は今、パンフ等を眺めながら相談している。
「合格者ってかなり少ないなーと思って改めて学園のパンフ見てたんですけど、冒険者枠と通常受験の学生枠って別枠になってるから、合わせると相当な人数のようですね……」
「ああ、両親とかと一緒に面接があったりするってやつか」
「通常枠で受けたら割と合格は出来るみたいですけど、学費とか半端なくかかるみたいですねー」
「あっそういえば俺らは学費とかいくらなんだ?」
「いや、驚いたんですが、冒険者枠からの場合、学費はかからないようですね……」
「まじか! 無料って事かよ!」
「ですね。だからこの狭き門にあんなに人数が集まってたんでしょう」
「特別な入学枠だったんだな……」
「貴族も通常枠で入ればいいのにな」
「通常枠より、こっちの枠の方が不正がしやすいのでしょう。貴族の中でも落ちこぼれがこっちに来てたんでしょうね」
「そんなもんなのかな~」
そんな会話をしながら、どんな授業があるのかを見ていた。基本は午前は座学、午後は実技と綺麗に分かれているようだ。午前は1日2コマまで授業を取れて、1週間の内、1日は休校日のようだ。図書館とかは開放しているようだが……。
俺たちは午後の実技はスルーのようだから、午前の授業をひたすらに見た。
「在学出来る期間は5年なんですね。結構長いですね」
「その間に午前の科目は取れるだけ取ろうぜ!」
「そうですね!」
「ルーネも一緒に受ける科目探します!」
「……テーネも」
・・・
「よし、大体半期の科目は決まりましたね……」
「そうだな。俺、英語とか古文とか苦手だったんだけど……、果たして新たな言語をまた覚えられるだろうかね……」
「まぁ大丈夫でしょう。形の分かりにくい、魔方陣とか覚えられてるんですし!」
「そうだな……! 頑張ろうか!」
「とりあえず今日は半期の授業を提出して、一旦帰りましょうか」
そういって、荷物をまとめ、図書館を後にした。
そして、二人で並んで歩いていると、ぶわっと風が吹いた。
「やぁ。こんにちは」
まったく気配も無く、本当に突然に俺らの間に現れ、肩を組まれた。その際に思わず武器を構えた。
「入学おめでとう。フィアンと……ネビアだね」
「突然いつの間に……!」
「まったく危ない子達だ……武器をしまいたまえ。別にとって食おうと言う訳ではない」
長身のエルフ族の男は俺らの顔をまじまじと見ている。
「ふふ、冷や汗をかいて……。私の気が漏れていたかな? 気をつけなければならないな」
そういいながら俺の額の汗をぺろっと舐めてきた。
「は!? おい! 何してるんだよ!」
「ふっ……少しは緊張が解れたかな?」
「あわわわわ、フィアンさんが変態に顔をな……なめ……!」
「おや、精霊さんかな……? 君も中々……良いね……!」
「ひい……! 戻りますね! フィアンさん!」
そういってルーネとテーネは姿を消した。
「さて、私はそろそろ行くとしよう」
「一体何をしにきたんですか……」
「ああ。Sランクで入学した子達は一目見ておきたくてね。私は学園長……と言うわけではないが、それなりの立場の者だ。これから学園に入学するのであれば、またいずれ会うだろう。君達には期待しているよ」
すると、目の前のエルフの男は身体が燃え出し、跡形も無く消えてしまった。
「燃えて消えた……死んだわけでは無いもんな……?」
「そうですね、てか……」
「ああ、かなり強いぞあいつは……。見え隠れしていた闘気の量が尋常じゃなかった……」
「魔力もそうでした……まさに化け物でしたね……」
「俺が出会ったヴィスターン並の力を感じたよ……」
「そういえば名前を聞いてませんでしたね」
「あ! そうだな……まぁいつか知れるだろう!」
とりあえず、先ほどのエルフ族については気になったが、半期で受ける授業の選択をし、そのまま一旦帰宅、明日に備える事とした。
・・・
「さて、今日から授業だな! 部屋とかも別々だし、一旦ここで分かれようか。終わったらデバシーで連絡するよ」
「分かりました。ちゃんと寝ないで聞くんですよ?」
「いやそれはお前もだろ! 俺なんだから!」
「あはは。そうでしたね! まぁ僕は眠くなったら自分に水魔法をぶち込みますよ」
「教室をびしょびしょにするなよ……」
そして俺たちはそれぞれ、剣の学園、魔の学園に移動した。30階以上の建物で、しっかりとエレベーターの様な物は完備されている。俺とネビア、授業内容はなるべく被らない物を選択するようにした。合体が出来るようになれば、知識の共有は容易いからだ。と言っても、剣技と魔法の授業は勿論分かれているし、一緒になるとすれば地理的な授業とかだけだが……。
何というか……入学式もないし、クラスと言う概念も無い。本当にそれぞれ好きな授業を受けて、淡々と知識や技術を取り入れている感じだ。イベント毎は色々あるが、大体実技で仲良くなって、そこからパーティ組んだりするようだ……って事は、俺らの座学だけのスタイルでは友達とか出来にくいな……!
だがまぁ、この歳になって友達など正直いらん。俺たちには学校が終わったら遊びに行くとかそんな時間は無いし、とにかくこの在学中にレッドを倒さなければいけない。一体どんな奴なんだろうか……。
そんな事を思いながら部屋に着いた。授業の流れから始まり、淡々と勉強が始まる。とにかくしっかりと聞いておこう……。
・・・
長かった。非常に勉強になる内容だったが、やはり眠くなるな……。
「おーネビア! どうだった?」
待ち合わせ場所に遅れてネビアがやってきた。
「やっぱり座学は眠くなりますね……。でもかなり勉強にはなりましたよ。これからに期待です」
「俺も剣の持ち方とか基本的なところだったけど、改めて適当だった事に気づかされたよ」
「まぁ、母さんは好きに持ちなさい! それが正しい! っていってましたもんね……」
「よし、とりあえず午前で終わりだし、冒険者ギルドに寄っていかないか?」
「そうですね。よさそうな依頼があれば受けちゃいましょう!」
そうして俺たちは学園を後にし、冒険者ギルドへと向かった。




