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8話 俺たちもダンジョンへ

 次の日、ゼブと行う勉強は臨時休校だった。

 昨日二人で帰った後、その日の夜に両親が二人を連れて帰ってきた。ゼブは俺らを二人に紹介した後、説明してくれた。


「二人とも、実は今日は光の外にある瘴気が濃い所を調査してたんだ。そして、より詳しく調べなきゃならなくなったんだけど、色々準備の物品が足りなくてね……そこで、光の線の外にある少し大きな街へ行かなければならないんだ。本当は一緒に連れて行きたいんだけど、道中の濃い瘴気に触れると、体調が悪くなったり、最悪死んでしまう可能性もあるんだ。少し前に教えた魔装魂をしっかり纏えればなんとでもなるんだけどね……街へ行くために父さんたちは3日ほど、家をあけなければならないんだ……。食糧とかはしっかりと準備しているけど、心配だから短期的に隣に住んでる方に世話を頼もうかと思ってるんだけど、どうだろう?」


 ゼブは4歳の俺達にそんな事を聞いてきた。普通なら問答無用で雇って家で見てもらうものだろうけど、聞いてもらえて本当に助かった。


「父さん、僕達は全然大丈夫です。魔法で調理も出来るし、食糧も十分あるのであれば何の問題もありません。むしろ父さんたちが心配です。どうか、気をつけて行って来てください」


  丁寧な口調でネビアが説明していた。続けて、俺も


「大丈夫だよ! 3日くらいでしょ? お土産買ってきてね!」


  両親は安心したような表情で、


「本当に賢い子達だ……。安心して家を空けられるよ」


 そうした経緯があり、本日より両親達は出掛けているのだ。


「さて、3日間でダンジョン攻略するぞ」

「ええ、そうですね!」


 まさか両親もこんな悪餓鬼だとは思ってないだろうな……少し良心が痛みつつも俺達は作戦を練ることにした。


「まず、シャドウナイトが居るのは、あの洞窟でほぼ間違いないでしょう。どのくらいの深さか分からないから、食糧は大目に持っていくほうがいいかもしれませんね」


 両親が作り置いてくれたのは大鍋に入れたジャガイモみたいな穀物を一緒に煮込んだミルクのスープと干し肉、パンだった。スープは持っていけないから、パンと干し肉を動物の皮を乾燥させて作った袋に詰め込んだ。

 水や火は魔法で何処でも起こせるので、あとは現地調達でと言う事になった。毒とかあっても多少であればヒーリングで治るし、変なものを食っても大丈夫だ。

 スープを食べながら打ち合わせは続いた。


「木の装備じゃ心もとないけど、無いから仕方ないよなあ。闘気で頑張るか……」

「こればっかりは仕方ありませんね。家のどこかに剣の一本でも隠してると思ったのですが、全くそれらしいものは無いですね。厳しそうであれば戻るしかないですが、僕たちには時間がない……なんとか倒したいものですね」

「まぁ何とかなるだろ! 大きいシャドウとかでも一撃で倒せてたんだしさ!」


 そんな話をしながら準備を進めていた。

 荷物は一つにまとめて俺が全部持つことになった。戦闘が始まった際はぱっと置いて交戦すればよい。

 中には食糧約二日分、ヒーリングの触媒紙・木の剣の予備2本……とりあえずこの位か。

 一通り準備を終えて、またスープを飲みながら一息ついた。


「さて……そろそろ行きましょうか」

「だな!」


 こうして俺たちは洞窟の方へ向かった。


・・・


「フィアンの閃光脚は本当に早いですね……本当に疲れてないんですか?」


 ネビアは俺に背負われながら聞いてきた。


「今のところマジで全然大丈夫だな……お、見えたぞ、洞窟」


 より一層瘴気が漂っている洞窟の前まで到着した。


「なんだか緊張しますね……気を引き締めていきましょう!!」

「だな! 俺が先頭を歩くから後ろは任せたぞ!」


 早速洞窟の中へ入っていくことにした。


「何も出ないですね……」

「そうだな……この辺は父さんたちが処理したんじゃないか? ん、なんだ? 光ってるエリアがあるな――」


 俺たちは光に覆われてるエリアに早速近づいてみた。


「うーん、この辺は瘴気もほぼ浄化されてますね……あ、これは触媒紙ですね。父さんが設置したんでしょうか。にしても初めて見る魔方陣ですね」


 ネビアがまじまじと触媒紙に描かれている魔方陣を見ていた。


「よし、覚えました。たぶんですが、瘴気を浄化するような魔法です。街の周りにある光の線のような感じでしょうか。休憩する際はこれを描いたところですると、シャドウとか寄って来ないようですね!」


 流石俺……いやネビア。魔法に関しては、本当に差がついてしまったな。同じ人間でも環境とかで色々変わるもんだなあ。感心しつつも奥へと慎重に進んでいくことにした。


「本当に何も出ないな。もしかして父さんたち、最後まで到達したのか……?」

「だとしたら、装備整えに街までいかないでしょう。……でも予想以上に奥まで進んでるようですね。シャドウとかが出ないので、どれほどの奴と戦ったのかはわかりませんが……あ、また光のエリアです」


 何回目か数えてなかったが、また浄化されたエリアがでてきた。とりあえずまたそこに入ることにした。


「フィアン、この光の奥……。瘴気がかなり濃くなってますね。ここで引き返したのではないでしょうか」


 どうやら俺たちは、父さん達が進んできた最終地点までやってきたようだ。


「つまり、ここから色々出る可能性があるってことだな……」

「より一層、気を引き締めていきましょう……」


 一度も敵とエンカウントしてないのもあって、休まずにそのまま進んでいくことにした。


「うわ、すげえ濃い瘴気だな……魔装魂しっかり纏っとけよ!!」

「大丈夫ですよ――フィアン! 前方に敵の気配です。構えて!」


 ネビアは魔力感知能力も非常に高いようで、姿が見えてなくとも気配を感じ取る事が出来るようだ。

 そして、前方より現れたのは、二足歩行をしているはっきりと姿の見えるシャドウだった。


「なんだあいつ、初めて見るぞ……。明らかに人型だし、黄色っぽい色だな……」

「多分、今までのシャドウより強いです。牽制でウインドスピア撃ちます。少し下がってフィアン」


 ネビアはそういうと、頭上に4つの魔方陣を描いた。


「ウィンドスピア!」


 4本のウィンドスピアが黄色い人型シャドウに放たれ、上手く4本ともコア部分に着弾、シャドウは静かに消滅した。


「あれ、案外大した事なさそうですね……」

「あいつあれじゃないか? 父さんとの勉強ででてきたシャドウウォーカーって奴」

「ああ、でも色がなんか変でしたね……とりあえずあの位なら僕のウィンドスピアで何とかなるので、見つけたら先制ウィンドスピアで倒しちゃいますね」


 この調子ならシャドウナイトも全然いけるんじゃないか? そんなことを思いながら、奥へ奥へと向かっていった。


「にしても、一本道ですねー。もっと迷うようなものを想像してたのですが……」

「まぁ正直助かるけどね! 俺ら、方向音痴気味じゃないか!」


 そう、生前の俺は方向音痴だった。スマホという便利なものがなければ、目的地まで着く事が出来ない……そのくらいには方向音痴だったのだ……。


「フィアン、前方すぐに2体近づいてきます! 下がって!」


 ネビアの声がした瞬間、ばっと後ろに下がった。

 深い影のような所からシャドウウォーカーが2体すっと現れ、そのまま攻撃してきたのだ。俺は全く気づけなかった……。


「あぶねえ、ネビアの声がなかったら絶対当たってたよあれ……」

「次は青い色2体ですね。黄色の奴より強そうです……」

そういいながらネビアは先制でウィンドスピアを4本放った。

すると、青いウォーカーは身体にくっついている、剣状の物を振り、それぞれ、2本ウィンドスピアをかき消した。


「うお、まじか」


 俺は咄嗟に剣と籠手に闘気を溜め込んで戦闘態勢に入った。


「フィアン、2体とも動きを止めますので、その後撃破してください!!」


 ネビアは15個の光球を操作し、ウォーカー達の足元らへんで即時に魔方陣を二つ描いた。光球はある程度遠隔操作が出来るから非常に便利なものだ……。


(ネビア)――アイススパイク!


 ネビアの発動したアイススパイクは2体共に命中、一体はそれを食らって消滅したが、もう一体は生きている。


(フィアン)――魔装・一閃!


 俺はアイススパイクに飲まれていたウォーカーを両断した。


「全然手応えないな! ネビアの魔法でほぼ瀕死になるから余裕だな!」

「フィアン! 実際ウィンドスピア避けられたり、明らかに敵の格が上がってきています……。油断しないでくださいね!」


 そう言われたものの、俺は何処かで油断していた。

 油断してしまっていたんだ。

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