72話 シャドウホール・脱出
「じゃぁ、開けるぞ!」
アルネさんのその言葉で目の前の扉を開いた。その先には大きめの部屋が広がっており、いかにも何かが居そうな雰囲気だ。案の定と言うべきが……後ろの扉には濃い瘴気が広がり、退路を断たれた。もうこの状況には慣れてしまったな……。
「にゃあああ! 退路が断たれたにゃああ!」
「シャドウフォレストウォーカーが5体ですね!」
「まずい……ッ!」
5体のウォーカーは脇目も振らず、リッタとオリアに向かっていった。構えが少し間に合っていない……!
俺が飛び出そうとした瞬間、先にアルネさんが飛び出していた。そして二人の前に立ち、盾を構えた。
(アルネ)――ディフェンスオーラ!
自身と自身の近くに居る仲間に対して、闘気の防御膜を張る。
「ぐっ! 中々に重い攻撃じゃな!」
「アルネさん! 助かったにゃ!」
「流石アルネさん!」
俺はそう言いながら横からそのまま突進し、ウォーカーを一体斬り倒した。その瞬間、他の4体もこちらへと意識が行った。
「一斉に見られるとちょっとドキッとするな……!」
「フィアン! 上から何か来ます!」
「なに!?」
とにかく一旦後退、上を見上げた。
「なんだあれ……。木片がまとまって舞っているな……?」
何かは分からないがそのままふわふわとこちらに近づいてきた。敵意とか嫌な感じは一切しない。
「フィアン! 危ない! それはフォレストウィスプじゃ!」
「え……?」
その時にはもう遅かった。フォレストウィスプは俺の右手に纏わりつき、高速で木片と共に乱回転し始め、腕が切り刻まれた。
「くっ! いてええええ!」
どれだけ振り解いても離れてくれない。ずーっとザクザクと切り刻まれている。
(アルネ)――ウィンドウォール!
アルネさんはウィンドウォールを俺の腕にぶち当てた。するとフォレストウィスプは吹き飛び、俺の腕からは一旦離れてくれた。
「すまんやっちまった……。これじゃ剣を振れねえ……」
(オリア)――ヒーリングライト!
(触媒紙)――ヒーリングライト!
オリアは触媒紙と詠唱で俺の腕を治癒してくれた。ズタボロだった腕を綺麗に完治した。
「ありがとう!」
そのやり取りの間、ウィスプ3体はその場で舞い続けており、ウォーカー4体はリッタとアルネさんで抑えている。何度か攻撃を当てているようだが、致命的なダメージは与えられていない。とにかく俺はそっちに応戦する事にした。
「ネビア、ウィスプには魔法しかとおらん! 火の魔法でなんとか倒してくれんか!」
「了解です!」
(アルネ)――インパクト!
アルネさんは1体のウォーカーを盾で思いっきり後方へと吹き飛ばし、ウォーカーはそのまま地面に倒れた。
(フィアン)――ソード・エクスプロージョン!
吹き飛んだウォーカーに即座に剣技を放ち、消滅させた。チームで戦うと、チャンスを自分で作らなくとも転がってくる。それを上手く拾えば致命的なダメージを与えられる……。かなり楽だな……。
「ウィスプは全部倒しました!」
「まじか! 早いな!」
知らない間にネビアはウィスプを全滅させていた。相変わらず仕事が早い……。
「よし、やっと一体倒したにゃ!」
後方ではアルネさんが2体引き付けている間に1体をリッタ、オリアでやっつけられたようだ。結構怪我をしたようで、オリアがリッタに治癒をしている。
「アルネさん! 閃光脚で思いっきり後退して!」
「あいよ! わかった!」
アルネさんは一瞬で後退し、俺が2体の前に飛び出した。
(フィアン)――魔装・剣舞8連!
俺はそのまま2体のウォーカーを巻き込み剣舞をした。そのまま2体はその場から動く事もできないまま、魂片となった。
「ふう。これで全部じゃな。ちゃんと魂片を回収するんじゃぞ! これで終わりなら外へ吐き出されてしまう!」
「おお……また忘れるとこだった。急いで回収だ!」
さっさと散らばった魂片を回収している内に辺りは暗転し、シャドウホールに入る前の所へ戻ってきた。アルネさんの言っていた通り、外に出されたようだ。シャドウホールもなくなっている。
「なんとかクリアじゃな! 皆お疲れ様じゃ!」
「お、朝に入場された方ですね。シャドウホール消失を確認致しました。お疲れ様です」
警備をしている人が駆け寄ってきた。
「こちらは証明書になっておりますので、依頼報告時にお持ち下さい」
「わかった。長いこと警備もご苦労様じゃったのう」
そういって俺達はその場を立ち去り、冒険者ギルドへと戻る事にした。言うまでも無く帰りもあの高速移動装置だ。リッタは疲れもたまっていたせいか、思いっきり吐いていたがそれはまた別の話……。
・・・
「いやー! お疲れ様じゃった! 無事にクリアする事ができて嬉しいぞ!」
「にゃ……こ、こんなに大金を……!」
「紫魂片とか久しぶりにもちましたにゃ……」
今回の報酬は拾った魂片を含んで、一人頭「紫6,青4」これまた中々の大金だ。
二人合わせて(所持金:赤5個・紫16個・青19個・濃い黄色8個)
「さて今日は好きなだけ食うがいい! 乾杯じゃ!」
「いえーい!」
こうして依頼を達成した後は酒場で飲んで食って……飲んだのはもちろんジュースをね!
遅くまで堪能した後、冒険者ギルドの宿屋でそのまま一泊した。




