6話 発見
次の休みの日、早速前回の続きという事で、光の外へ出かけることにした。準備は怠らないように、食糧とヒーリング触媒紙はしっかりと持っていく事にした。
この日は両親は休みではなく、二人で外出するようなのだが、ガッツリと装備を着込んでいたので少し気になり、聞いてみた。
「父さん母さん、今日はどこへ行くの?」
「ああ、今日もお仕事だよ。ちょっとだけ危ないかもしれない場所へ行くから、こうやって念の為、着込んでるんだ。あ、帰りも今日はちょっと遅くなるかもしれないな」
そういえば二人は何の仕事をしてるんだろうか。危ない場所へ行くなら少し、不安だなと思っていたが……。
「二人とも大丈夫よ! 実はそこへは仕事で何度も行ってるのよ! 安心して森で遊んできなさい!」
そういって、二人は出かけていった。
「フィアン。あの二人の後をつけてみませんか?」
「え、光の外で洞窟を探すんじゃないのか?」
「あの二人、その探してる洞窟に行く気がするんです。この辺であんなに装備を着込むでしょうか」
ネビア、俺なのに鋭いな。やはり知力はネビアに寄ってるんだろうか。
「そうだな。一回つけてみようか」
「ではフィアン、僕を背負ってシャドウウォークで尾行してください」
シャドウウォークは柔型の中級剣術で、自分の周りに魔力を纏い、辺りに溶け込む移動術だ。
魔装・一閃って名前だったりシャドウウォークだったり、統一性が無いな気もするが、柔型と言うだけあってそういう拘りも無いのだろうきっと。
音も最小限、気配もほぼ断ち切れる。両親の夜のプロレスを見る際には必須のスキルだ。試しにかなり近づいてみたこともあったが、本当に気付かれない。
まぁ意識が完全に向いてないからだろうけど……。ネビアにも何度もやってみたが、視認されるとさすがに気付かれるみたいだ。とにかく、この方法での尾行なら安心だろう。そんな訳で俺たちは両親を尾行することにした。暫くすると、予想通り光の外へ踏み出した。
そのまま尾行しながら進んで行くと、異様に瘴気が濃い所までやって来た。
その間、シャドウがぼちぼちでて来ていたがティタの剣とゼブの魔法でさくさく倒していた。両親も普通に強いようで安心した。
そして、瘴気の濃い所を進んで行くと、遂に洞窟が姿を現したのだ。
「フィアン! やはり想像通りでしたね……」
「両親は洞窟に入って行くんだろうか?」
すると、洞窟の脇から二人の男女が姿を現した。
「おうゼブ、ティタ! 待っていたぞ」
外見はガッシリとした、感じだった。あれは本で見た、ドワーフ族と言われている種族だろう。
「こ、こんにちわ」
少し小柄でおどおどしているのはエルフ族だろう。真っ白な肌ですげえ可愛い。ぎゅーってしたくなるような愛らしさだ。
「二人とも来てくれてありがとう! 助かるわ!」
ティタが駆け寄り、小柄なエルフ族をぎゅーってしてた。羨ましい。
「カレナ、モトゥル! 忙しいのにありがとう。報酬はきっちり払わしてもらうよ」
「何を言っているのだ。お前さんの触媒紙で我々の住むドワーフの国はどれだけ生活が良くなったか! 何かあったらいつでも助かると言っておるだろう。気にするんじゃない!」
ドワーフのモトゥルは笑いながらゼブの肩を叩いていた。
「カレナもティタにはいっぱい助けてもらったです。報酬なんていりません!」
ティタにもぎゅっとされながら答えていた。
「二人ともありがとう。じゃあせめて、ダンジョン内で手に入れたものは多めに貰ってくれ」
二人ともそれを聞いて軽く頷いた。
「そういや。ゼブ、ティタ先に聞いてくれい。この数年で魔力について一つ解明されたことがあるんじゃ。剣術と魔法を使用する際に我々は今まで一括で魔力を使用すると認識しておったじゃろ?」
「うんうん! それで!」
ゼブの目がかなり光っていた。そういう新発見とか研究者だから目が無いんだろうな……。
モトゥルはそのまま話を続けていた。俺たちもそれをじっくりと聞いていた。
・・・
モトゥルの話を要約すると、魔力と一括されていた力は明確に二つに分かれており、魔法に使用する「魔力」と、剣術や己の肉体に使う力を「闘気」と呼ぶようになったそうだ。
殆どの人は魔法を使用する際は魔力8:闘気2、剣術の際はその逆といった形で、意識せずに発動すると混ざってしまうらしい。
それを魔法の際は魔力10:闘気0、剣術の際は闘気10:魔力0。この形で使用できれば本来もつ最高威力の技が使えるとの事だった。
自分がどれほど混ざってしまっているかの測定も出来るそうだ。
それは闇魔法中級のドレインマジックに魔法を放つだけだった。元々魔法を防ぐバリアとして使用されたりしていたが、上級者の魔法はほぼ消滅出来るが、初級者の放つ弱めな魔法は少し減衰させるが通してしまったり、何かと謎が多かったのだが……闘気の存在が公になり、魔法の中に混ざっている闘気の部分が消えずに通り抜けていたと解明されたのだ。
つまり、ドレインマジックに魔法を放ち完全に消えたら高純度な魔法を使用出来ているという事だった。
ドレインマジックで吸収できる量を越えていたら純度100%でも貫いてしまうそうだが……。
剣術の場合も逆で、剣先から気を放つタイプの技が、威力減衰なく、ドレインマジックを通れば、闘気10で放つ事が出来ているという事になる。
闇魔法の話が出た時、ネビアは興奮してた。まぁカッコいい響きだしな……。俺も使えるようになりたいって思ったね! 今すぐにでもドレインマジックを使って試したいと思ったが、今はぐっと堪えた。
4人はひとしきり話し終えた後、早速、洞窟に入る準備を始めた。
「さて、陣形は冒険者時代の時と同じで、モトゥルに前衛、迎撃にティタ、その後ろにヒーラーのカレナ、後衛に僕が行くよ。今日はあくまでも様子見だから、ある程度進んだら戻るからね」
そんな最終打ち合わせをした後、4人は洞窟の中に入っていった。
「さて、どうしましょうか。フィアン」
「うーん、中は未知数だしなあ……。シャドウウォークでも看破される敵とかも居るんじゃないか? しかも、様子見といっていたからすぐに引き返すかも知れない。後ろを追っていくのは得策じゃないかもな」
「どうするかとしか言ってないのに、入る前提の話を……。考えてることはやはり一緒ですね」
「まぁ逆に考え一緒すぎて、予想外の案とか出て来なさそうだけどな」
二人は顔を見合わせた。
「とりあえず今日は光の中に戻って、ドレインマジックで実験でもしようぜ! 次の休みの日にでも様子を見に行こう!」
「そうですね。僕もドレインマジックは試してみたかったので! さっきカレナさん? が使ってたのが見えたので、発動はできると思います」
・・・
「よし、んじゃあ早速ドレインマジックを使ってくれ!」
「分かりました!」
ネビアはそういいながら、さっと光球でドレインマジックの魔方陣を描き始めた。
「ふむ。中々描きにくいですね。魔力の込め方も……」
一人でぶつぶつと言いながら試行錯誤していた。多分あれは俺には描けないだろうな……。
「フィアン出来ました!」
少しの時間が経った後、ネビアは闇中級「ドレインマジック」を会得していた。
「ほう! 魔方陣自体がシールドの役割をするような感じなんだね」
「じゃぁフィアン。とりあえず、ウォーターバレットを!」
「了解!」
ウォーターバレット程度なら光球で即時に描けるようになっていたのでそれをドレインマジックに放った。これを減衰しながら突き抜けたら少し魔法に闘気が混ざっているという事になる。
そして、俺のウォーターバレットはドレインマジックにあたった時、シュウウ……っと音を立てながら、綺麗さっぱり消えていたのだ。
「えっと、つまり俺は魔力10の割合で綺麗に打ててるって事でいいのかな……?」
「そういう事ですね……!」
その後、俺は4大魔法のバレットを全て放ったが、全部綺麗に消え去ったのだった。
「ネビアのドレインマジックが優秀で、闘気ごと吸ってるって事はないのか?」
「いや、性質上無いと思いますが……。あ、フィアン。ブレードブラストを撃ってみてくださいよ」
「あ、そうか闘気の技で減衰しなければ闘気を吸収してないって事か。いやでも待てよ。単に魔力が混ざって減衰してるだけかもだな……」
「とりあえず放ってから考えましょう。さぁどうぞ」
ドレインマジックはすでに設置されていたので、俺は柔型中級のブレードブラストの準備をした。だが、この技の威力の調整がまだ分からないから、ほどほどに込めて放つことにした。
すると、ネビアのドレインマジックは俺のブレードブラストには全く反応せず、通り抜けた。そして、バリバリと凄まじい音を立てながら、木を貫通して行き、遠くのほうへ飛んでいってしまった……。
「フィアン威力高すぎです! もう少し抑えないと……村の方に向いていたら大変なことになってましたよ!」
「いや、気持ち的には3割も込めてないんだけどな。あはは……と、とりあえず闘気はしっかり突き抜けたな!」
ブレードブラストは威力がしっかり調整できるようになってから使おう。そう心に誓ったのだった。
・・・
その後、俺もドレインマジックが使えないか試行錯誤したが、うまく発動することは無かった。仕方が無いので、ネビアは自分でドレインマジックを発動し、各魔法を放っていた。
一通り全て放っていたが、全て綺麗さっぱり消えていた。
「フィアン。僕達はどうやら混ざらないで綺麗に初めから魔法を使えていたようですね……」
ネビアはそう言った。恐らく剣術の方も闘気10割で放てていると思う。ドレインマジックは全く反応していなかったからね。
とは言え、ネビアはまだ闘気を放つ技を使えない為、試せては無いが……。しかし、やはり魔力だけど違う力を使っている気がすると言うのは間違っていなかったようだ。
今まで解明されてなかったのも驚きだが、二つの力を使ってることを意識しつつ、技や魔法を放つようにしていこう。
そう思いながら、一通り実験を終えた二人は家に帰るのだった。
ここで魔力と闘気で分かれていることが判明しました。次回からは魔力で統一していた表記も二つの力でしっかりと書き分けていきます。途中で変わってややこしいかもしれませんが、宜しくお願いします。