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5話 光の外へ

 二人とも俺という事が分かってからは、こんな事試したいけど凄く大変だから……とか一人で悩んで遠慮するなどはあまりしなくなっていた。

 一度提案して、意味があると分かればやってみたし、二人の修行に関してはクオリティが間違いなく上がったと思う。その間にヒーリングも覚えた。

 ヒーリングの触媒紙自体は両親の部屋のタンスにたくさん仕込まれていたので、それを1枚拝借し、魔方陣をまるまる描いたらすぐにできた。

 なぜタンスにいっぱいあったのかは察しの通りだ。驚いたのは、ヒーリングも球体にして、射出することができた。大体の魔法は丸めて飛ばすことができるのだろうか? まぁ実用性があるかどうかは別だが。

 そんな事を思いながら色々実験を繰り返していた。魔法の実験はネビアがまず色々失敗を繰り返して、成功したらその成功例を俺もやってみるというのが基本になっていた。俺は失敗も含め、魔力を使いすぎるとばててしまうからね!

 基本的に魔方陣さえ描ければ、魔法を放つことができるのは初級までだった。中級からは描いても発動しないことが増えていた。

 魔方陣が非常に複雑化しており、少しの綻びで発動しなかったりするのだ。

 また、上級に関しては完璧に魔方陣を描いたとしても、発動しなかった。

 ネビアいわく上級になると魔方陣に対して、それぞれ魔力の送り方を変えるそうだがいまいちぴんと来ない。言葉で説明するのが難しい感覚のようだ。


 どちらにせよ、俺は中級以降魔方陣を描くのに結構な時間を要してしまう。光球も4つまで操れるようになったが、それでも時間と成功率を考えると、なんとも使い勝手の悪い感じだ。

 俺の場合は、初級魔法までを即時で発動させながら、剣術メインで戦うスタイルのが向いているようだ。だからといって、魔法の勉強は辞めないけどな!

 さて、ここで俺はある話を提案してみた。


「光の線の外に行って見ないか?」

「僕も思っていた所です」


 勉強の時間に魔物とシャドウについては学んでいた。まず、この世界は瘴気と魂片と呼ばれるものが大気に溢れている。生物は死ぬと魂片となり、消滅するそうだ。

 シャドウは大気の瘴気や魂片が変異し、現れると言われている。核を持ち黒い影のようなもので覆われた姿をしており、人や動物を認識すると襲ってくるらしい。

 シャドウは殺した動物の魂片を吸収し、その能力を身に宿すか……

 生きている生物に直接憑依し、影を纏わせ操る……その2種類を一般的に魔物と呼ぶ。生き物が混ざったりすれば魔物、純粋なシャドウだけで構成された奴はシャドウって呼ぶ感じだ。


 シャドウはゆらゆらと動いて、ゆっくりな歩調で襲ってくる。

 強い光を嫌がる特性上、暗くなってからしか殆ど活動しない。魔物になると光を嫌がらないが……。

 村は光の円で囲われているのはそれが理由だ。円は浄化の光……シャドウ等を寄せ付けない加護の陣になっており、大抵の魔物やシャドウは入ってこないのだ。

 つまり、加護の外……光の外に出るとシャドウや魔物が普通に出現するのだ。ここはずっと薄暗い森の中……昼夜問わず出現する。

 ……とまぁ十分に光の外が怖い事は学んでいるが、森の奥の洞窟を探さないとならないし、出るのは決定事項だった。試しに両親にチラッと言ったことがあるが、もの凄く反対された。もうコッソリ行くしかないのだ。


「じゃあ、次の休みの日に行ってみよう!」


 その日が来るまでに色々準備をした。あまり奥に行く予定が無いが、念の為、軽い食糧とヒーリングの魔方陣を少し拝借した。

 剣術練習に使っていた木と革で作った、籠手と剣も持って行く事にした。

 木の剣はそのままだとかなり貧弱だが、剣術守型で覚えた魔装魂(まそうこん)で木の剣を纏う事でかなりの硬度になるので、それでとりあえずは十分だった。込めすぎると、木の剣が耐えれないのか壊れてしまうが……。


 魔装魂は全身を薄く魔力で覆い、熟練度によっては斬撃等も通さない程の硬度を持つ。


 魔装魂を武器に込めるのはなかなかコツがいる技らしい。いわゆる木の剣が魔法剣のような状態になるのだ。武器によっては感度がよく、込めやすくなったりもするそうだ。

 俺は思いついてからあっさり出来てしまったが、ネビアは通常の魔装魂は出来るものの、武器に込めたりするのは全く出来なかった。

 魔法はさっとなんでもできるネビアがだ……やはり魔力と言えど何か決定的な違いがあるらしい。今度女神に聞いてみよう。


 そうこうしている内に、休日になった。

 両親にいつも通りに挨拶して、森に向かった。


「このまま光の線までいこう!」


 俺の閃光脚でネビアを背負って、直ぐに光の線の淵までやってきた。


「ここから先は、シャドウとか出現するんですかね……」

「だな。気を引き締めて行こうか」


 ワクワクとドキドキが混ざって、少しばかり高揚した感覚で光の線の外をでた。


「あ、迷子には……ならないか。光の壁が思いっきり見えるもんな」


 まっすぐ1キロメートルほど進んだら、森全体が薄暗くなってきた。そして、ついに前方10m程の所にシャドウが現れたのだ。


「ぼやっとしてて幽霊みたいなの想像してましたけど、ハッキリと黒いですね……。真ん中あたりの赤っぽいコアが弱点ですね」

「とりあえずさっそくエンゲージして見ようぜ! 方法はさっき決めた通りで行こう!」

「分かりました。では僕から」


 俺達は、シャドウを見つけてもし1匹だったら一人づつ迎え討とうとさっき決めていたのだ。まずは遠距離攻撃が出来るネビアからそして、見てる方はしっかり周りを警戒しやばそうなら援護、もしくは俺の閃光脚で退却と言う感じだ。

 初めてのシャドウ討伐、ゲームでは無い命のやり取り。そんな事を考えながら二人とも手に力が入っていた。


「では行きます」


 ネビアは間髪居れずにシャドウの前に姿を現し、シャドウはそれに気づいた。そして、ゆらゆらとネビアの方に歩くようなペースで向かい始めた。


 ネビアは剣は持たず、籠手のみ装備している。

 籠手で少しガードするような構えをとり、相手を凝視しながら右手を上げ即座に魔方陣を二つ、光球(15個)で描いた。

 描いたのは二つとも風の中級魔法ウィンドスピアーで、竜巻が槍状になり飛んでいく魔法だ。

 それをシャドウ目掛けて二本同時に放った。


――ザシュッ


 二本とも綺麗にコアを貫き、シャドウは一瞬で消滅した。


「すげえ、余裕じゃないか!」

「この辺なら、魔法も一本で十分ですね」


 シャドウが消滅した所に近づくと、無色のガラスの欠片の様な物が十個くらい落ちている事に気がついた。


「これ、なんだろ? とりあえず持って帰るか!」

「フィアン、変な物は拾わない方が……両親にバレないようにしましょう」

「そうだな、これが何かは、タイミングみて拾ったとか言って聞こうぜ!」

「フィアン、あっちにまた居ます。少しでかいですが……次はフィアンどうぞ」


 指差した方向にシャドウが徘徊していた。何だか大きいような……。


「少してか、2倍くらいでかくない?」

「そんなくらいでビビっていたらシャドウナイトなんて夢のまた夢ですよ。僕がいるから安心して下さい!」


 ネビアも俺なのに凄い自信だ。きっと一度倒したからだろう。まぁ死なない限りはネビアがヒーリングしてくれる! やってみるしかない!

 そう思って俺は魔装魂を剣まで拡張し、ばっとシャドウの目の前にでた。近くに来るとやっぱりでけえ、さっきのが2メートルくらいで、こいつは5メートルくらいある。

 こんなに個体差があるのかと思いながら、歩く速度位でやって来るシャドウを前にしながら脚に力を入れた。

 そして、閃光脚で瞬間的に寄りながら、魔装を纏った剣で垂直に剣を振る柔型初級の魔装・一閃を放った。

 少し相手と距離を取った所で放ったが、射程は剣を振る際に少し伸びるので、余裕で届いた。大体剣5本分くらいの長さだろうか。

 とにかくその技で、シャドウのコアを真っ二つにし、シャドウは消滅した。そして先ほどでてきた欠片をまた落としたのだ。


「無色の奴と薄黄色の欠片もあるな……綺麗だ」

「すごいですよフィアン! 正直、閃光脚で寄った際あまり見えませんでした……見られるようにならないとですね……」

「まぁ今の速度が見られるようになった頃は俺はもっと速いぜ?」


 それから、最初の手に汗を握る感覚はなくなっており、その後も大小様々なシャドウを狩りまくった。

 油断はしないと心で思いながらも、まるでアリを潰す様にシャドウを狩っていたのだ。

 無色なものも薄い黄色の欠片が袋一杯になった所で帰ることにした。


「シャドウナイトもいけそうじゃない?」

「フィアン、油断はしないように……ですが、いけそうな気はします。まだ魔物を見てないので、それを倒せたら考えましょう」


 たしかに、あれだけ狩っても魔物は見なかった。もう少し奥に行かないとだめなのだろうか。

 そう思いながら、家に到着した。

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