43話 再戦!シャドウナイト
さて、どう切り込むか。相手の動きから目をそらさず、脳をフル回転して戦闘シミュレーションをしていたが、先にシャドウナイトが動き出した。
剣を高速で3回振りかざし、漆黒の半月状の剣気を飛ばしてきた。
「ちッ!」
直ちに閃光脚を発動、左サイドに飛び出した。が、しかし、それに合わせるかのようにシャドウナイトが瞬間的に距離を詰め、腹部辺りに剣を突き刺そうとしてきた。
――キンッ!
剣と剣がぶつかり金属音が鳴り響いた。以前は同じように詰められた時は一切その瞬間が見えなかったが、今回はしっかりと感じ取ることが出来た。視える、いや感じるというのだろうか……。とにかく攻撃の来る場所がなんとなく察知することが出来る! 剣が重なり合っている、このチャンスを逃がさない……ッ!
この間コンマ数秒にも満たない時間のやり取りだった。ガードに使用している剣は本体1本だけだ……!
その瞬間、上空へ移動させていた、3本の闘気剣がシャドウナイトの背中に突き刺さった。
「残りの3本を忘れちゃダメだぜ……!」
闘気剣が深々と刺さったシャドウはそのまま消滅し魂片へと姿を変えた。
「ふうー、なんとか勝てたか……!」
「フィアンさん大丈夫ですか! 怪我はないですか!」
ルーネが心配そうにこちらを見ている。
「いや、大丈夫だよ。ありがとう。外傷はないけど魔力を使いすぎてばてそうなだけだよ!」
「そうですか、むうう……私も魔力と闘気を回復できるテーネみたいな魔法が使えれば……!」
「いやいや、それぞれ凄くいい魔法なんだから、全部出来たら凄すぎだよ?」
「とにかく少し休憩しよう! 浄化の光!」
自分の周辺に浄化の光を設置し、その場に座り込んだ。
「というか、シャドウナイト倒しても出れないね……」
「そうですね、どうやったら出られるんでしょうか……」
そういう会話をしながらデバシーに保管していた水と干し肉を取り出し、かぶりついた。
「何も無いところから物を出せるってとても便利ですね……」
「うんうん。荷物が最小限になるし、相当いいよこれ……。ただ、魂片が入れらないのがちょっと残念だね」
デバシーは何故か魂片は受け付けてくれない。魂とかはデバシーのエネルギー変換ではどうしようもないのかな……。
「にしても、相当数の魂片だな……」
袋の中をみると紫がいっぱいでちらほら赤色もある。鞄がないからこれ以上は濃縮しないと持って帰れないな……。
一息ついた後、ふと辺りを見渡すと、少しだけ瘴気が薄くなっている気がした。と、同時に目の前に新たな扉があるのを見つけた。
「あの扉が出口かな?」
「きっとそうですよ! フィアンさん行きましょう!」
よかった、やっと出られる。そう思いながら荷物をまとめて、魔装・一閃を放ち扉を開いた。
「やった! これで出られるかな!」
ルーネがそういって前に行こうとした瞬間、扉を切った隙間からおぞましい気配がした。
「ルーネ! 待て!」
そういいながら腕を掴んでルーネを止めたが、扉の隙間からおぞましい気配を感じていたのはルーネも同じだった。
「フィアンさん、この感じは……!」
「あぁ……シャドウナイトの時に感じた気配の数倍恐ろしい……!」
俺は震える拳を強く握った。
「くそ……! 勝手にシャドウナイトがラスボスと思い込んでいた! けど、そうじゃなかった……! 本当にやべえのはこの先だったんだ……!」
流石にシャドウナイトで神経をすり減らしたのと、出口だと思ったのに違った落差で絶望した。しかもシャドウナイトとは比べ物にならない禍々しい気配を感じて汗が止まらなかった。
「フィアンさん、ルーネ達はもうだめなんでしょうか……。これを越えても次まだいるんじゃないですか……?」
絶望しかないという顔をしているルーネに、正直かける言葉がなかった。
「ルーネ……ここから精霊界へは戻れないのか……?」
「え、はい……戻ることは出来ると思います。でもまたここに来ることは瘴気が濃すぎて、出来ないと思います……!」
「……お前だけでも戻ってくれ」
「え、嫌です! フィアンさんと離れるなんて嫌です!」
「正直、この気配を出している奴に勝てる気がしない。あと後ろをみてくれ」
そういって俺は来た方向へと目をやった。
「少しづつ、壁が迫ってきてる……!」
「ここでずっと待つことも出来ない。いずれ戦闘しなければならないんだ」
「嫌です! ずっと一緒にいるって言ったじゃないですかぁ……!」
ルーネがビックリするくらい泣いている。
黙ってぎゅってするしかなかった。でもルーネにはこんな所で絶対に死んで欲しくない。ここにきて出来た大切な人なんだ……帰らせる方法は何か……!
「俺もかっこ悪いけど、まだ死にたくないんだ。だから精霊界経由して戻って、ネビアに助けを求めて欲しい」
「でも……!」
「生き残るのはそれしかないんだ! 俺一人じゃどっちにしろやられてしまう……頼む……! 助けを呼んできてくれ! その為に一度戻って欲しい!」
「わかりました……! すぐに戻ります! 絶対に、絶対にしんじゃ嫌ですからね!」
「ああ……待ってる!」
そういうとルーネはぱっと消えて、居なくなった。
「まぁ、後ろから瘴気が迫っているから、助けはあまり期待できないが……さて、ものすごくピンチだなこれ……」