36話 試練詳細
少しだけ大天使様が言いにくそうにしているが、一呼吸置いて口を開いた。
「君たち二人の試練内容は……。剣と魔の学校を歪曲させた、堕天使レッドを倒し、正常化を図れ……じゃ!」
そういうと横に居た女神様の顔が青ざめた。
「大天使様、それは無茶ですよ! 遂行を推奨できません!」
「堕天使レッドを倒せばいいんだな! ネビア頑張ろうぜ!」
剣と魔の学校へは丁度行くところだし、かなりいい試練のように思った。
「いや、待って下さい! 堕天使レッドは……天界でA級の大罪堕天使ですよ! 数多くの天族を殺し、その後行方不明で所在は分からなかったのに今になって……! この子達が無事で済むとは思えません!」
女神様はキャラを忘れ、必死に大天使様に伝えた。
「まぁ試練を遂行するかどうかは、この子達が決めることじゃ。わしらは試練の内容を伝え、出来る限り情報を渡すのが役目じゃ。それを忘れるでない」
「しかし……!」
「女神様、心配してくださり、有難う御座います。ただ、ここで試練を投げ出すと言う選択肢は無いです。ですので、もっと具体的に内容を教えていただけませんか?」
「君たちならそういうと思ったわい。ほれ、情報を出来るだけ渡してあげるんじゃ。何を言ってもこの子らはやると思うぞ? ならその手助けを最大限に行いなさい」
「分かりました、大天使様……」
女神様は観念した様子で、俺達に情報を渡すつもりになったようだ。しかし、女神様がそんなに恐怖するなんて、一体どんな奴なんだ堕天使レッドと言う奴は……。
「こほん、では試練の詳細及び情報をお伝え致します」
俺とネビアは真剣な眼差しで話を聞く姿勢に入った。
「まず、この試練の背景をお伝え致します。というか、こんなの試練と言うよりは依頼に近いわね……」
「依頼?」
「あ、失礼致しました、こちらの話です。まず、この世には世界一と言っても過言ではない、2大学園、剣学園フラガラッハと魔学園ヴァナルカンドが御座います。二つの学園は背を向け合うように並んでおり、有名な剣豪、魔術師の大半はこの学園の生徒や卒業生が多いです。もちろん天族への覚醒率も半端ではありません。ですが……」
「種族や権力等はまったく関係なく平等で、魔力、闘気が強いものがより多くを学ぶことが出来る、というのが理念としてあったのですが、ここ5年前ほどからその理念が崩壊しかかっています」
そういうと、女神様はスクロールの様なものを取り出した。
「これは5年前の情報誌です。ここに書いている通り、何者かに当時の理事長は殺害されました。その後、新たに理事長となったのが貴族の者なのですが、その方に代わってからは魔力、闘気よりも貴族であることが優先され、何かにおいては優遇されております。学術評価は、貴族であればかなり色をつけられ、対人試合等できわどい判定の時は、必ず貴族が勝ちます。もちろん、学校としては平等に行っているとの一点張り。そのせいで、貴族以外の生徒等に不満がたまりつつあります」
「しかもそのせいで、競争力が落ち、魔法、剣術のレベルが非常に下がってきているのです。このままでは学園はダメになってしまいます……」
「これが今までの経緯なのですが、その理事長に堕天使レッドの息がかかっていることが判明致しました。それが分かった際に、すぐに討伐隊を派遣しましたが、失敗に終わりました。理由はレッドの言い放った、手を出すなら剣と魔の学園は今すぐに消失するだろう……と言う言葉、つまり学園生徒を人質にとられている状態だからなのです」
「また、学園の資金をレッドに横流し、優秀な人材をレッドが引き抜いているという情報もあります。何を企んでいるのか……とても黙認できる状況じゃありません」
「そこで! まだノーマークである貴方達が学園に入学し、レッドに近づける機会を探りそのアジトの情報の入手、レッドの討伐をして欲しいのです。貴方達程強ければレッドも必ず声を掛けてくるでしょう」
「但しこれは試練ですので、入学含め、全て自分の力で行って下さい」
一連の話を聞き終わり、頭の中で整理をした。
「つまり、レッドに勧誘されるくらい学園で力をつけて、勧誘されて所在が分かった後、そのまま倒せばいいんだな!」
「簡単に言うとそうですね……。ちなみにこの試練には明確な期間は決まっておりません。慎重に当たることを推奨いたします。あと、助言をするとすれば……。出来るだけでは目立った行動はせず、しっかりと正式な場で強さを発揮するのがいいでしょう。今後も可能な限り、情報が入り次第お伝えさせて頂きますので、どうかお気をつけて……」
「そういえば、女神様、今日は話し方が違いますね」
「そんな体裁にこだわってる場合じゃなかったんです! レッドの名前が出た瞬間すごく焦ったのですから! 本気で心配してるんですからね?」
体裁って! やっぱそういう風に伝えるようにと上司とかに言われてるのかな? もう次から女神の様な話し方されても、雰囲気がでないよな……そんな事いわれると。
「とにかく! 伝えることはすべて伝えましたので、健闘を祈ります……」
女神様がそういうと意識が遠のき、次起きた時には朝を迎えていた。




