337話 生じ続けるズレ
(ユニオンをしてから2時間経過か……安定はしているようだ)
影纏を維持し、瞑想を続けるネアンの姿がそこにはあった。
瞳を使ったユニオンは難しくなく、何度か試している内に習得する事ができた。
方法とすればお互い完全に密着しながら、二人で二つの瞳を重ならない様に持ち、
魔力を込めるながら瞳を一つにすると言う方法だ。
「所で、この状態で天衣は纏えるんですかっ!」
「残念ながら出来なかったんだ。私の実力不足か、そもそも出来ないのか……」
(それ故に、魔力と闘気は無限だが、天力には上限がある……二人が既に貯めた分しか使用できない……)
ネアンは静かに立ち上がり、剣を構えた。
(だが、天力を込めていない技が通用する奴はこの先居ない。しっかりと容量を把握しておかねば……)
「よし、また剣技や魔法を乱発するよ。ルーネ、テーネ、小さくなっていてね」
「はーいっ!」
そういってネアンは影纏を維持しながら、剣技や魔法の練習を続けた。
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「ん……あ、解けたか!」
「フィアンさん! やっと起きましたねっ!」
「ああ、ルーネ! どのくらい寝てた?」
「んーっと、大体丁度1時間ですねっ!」
「1時間か……やっぱかなり長いな……途中で何しても起きなかった?」
「そ……そうですねっ本当に何やっても全く起きませんでしたよっ」
そういうルーネの顔は少し赤くなっている。
(と言うか……俺の服なんかはだけてない……?)
「僕も全然起きなかったみたいです。起きる時間は全く同じですね」
少しだけ離れたところからネビアが現れた。
「なるほど……というか、今のユニオンのおかげで、時間が巻き戻る前の記憶が鮮明に理解できたよ……何かを犠牲にする剣技……犠牲を最小限に抑える事ができれば相当強いが……」
「フィアン! それは危ないですよ……!」
「だけど、相手も犠牲を最小限にして使ってただろ? ならば俺もある程度は理解しとくべきだ」
「フィアン……」
「大丈夫だって! 土壇場でやるわけじゃないし、ゆっくりと理解していくつもりだ。お互い何か技とか魔法が増えたら、こまめにネアンになろう!」
「わかりました……」
「あ、後さ……見てくれ!」
(フィアン)――影纏!!
「ほら、ユニオンのおかげで完全に理解できたぞ! 俺たち二人はいつでも行けるな!」
「おお! 凄いです! これで遅れる事は無さそうですね!!」
「よし、修行を続けよう!」
そういって二人は影纏をしながら魔法や剣技の特訓に励んだ。
・・・
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――5ヵ月後……
「一向に操作は出来ないわね……」
「あれだぜ? 指を動かす感覚で操作をするんだぜ?」
「ええ、頭では理解しているつもりなんだけれど……レッドはどう?」
「サクエル君と同じような状況だ。何とも歯がゆい気分だ」
その様子をフィアンとネビアは遠目で見ていた。
「……おかしいですね」
「……おかしいよな」
二人は口を揃えた。
というのも、時間が巻き戻る前だったら全部で約半年……既にフィアンとネビアを除いて全員影纏が出来ていたのだ。
だが現状はケイトだけが習得し、サクエル、レッド、アリシアは光の操作に苦戦している。
――ゴゴゴゴ……!!
「地震……頻度がかなり上がってますね」
「この地震のせいで皆集中できないとかか……?」
時が戻る前よりここへの到着に4カ月のズレが生じている。
既に半年が経っている為、飛空艦から移動を始めて約10ヵ月経過している。
以前の時間軸なら既にサクエル達はシャドウ界へ旅立ち、既に4カ月経っている状況だ。
フィアン達も、あと2ヶ月で習得しているという状況……。
「僅かな歪みで大きく状況が変わる……よくアルコトダ」
「影じい……」
「まぁ今は信じて、彼らの習得を待つしかなかロウ」
「ですね……」
「俺達はとにかく修行だな。出来るか分からないけど、ネアンで天衣を纏う位を目指そう!」
「ええ。頑張りましょう!」