320話 破影の槍
「サクエル! 無事だったんだな!! よかった……!」
逃走した先は木々で覆われた隙間に隠れていた大穴だ。
そんなに遠い場所じゃないから、すぐに見つかってしまうかもしれない……!
「フィアン君にネビア君、半年前より遥かに強くなっているようだね……! 再開を喜びたい所ではあるが、時間がないのだ。本題に入ろう」
「レッドも無事だったか! ……そうだ、ヴィスは? アリシアも居ない様だけど……!」
「……フィアン君、その話は後よ。この場所もすぐに奴に見つかるわ」
サクエルはそう言って、二本の管を俺達に見せてきた。
「……これは?」
「これは破影の槍。この槍をあいつに刺す事ができれば勝機はあるわ!」
「この管みたいなのが槍……? こんなものを刺しても奴は倒せないぞ!」
「この槍だけでは不可能よ。この槍は精々魔王影兵ならの動きを完全に止めるだけ。それも数十秒だけ……使うときには魔力を込めたら槍先が出現するわ」
こんな槍で完全に動きを止める……? 本当かよ……。
「本当に止まるのか? って顔ね。絶対に止められるとは言い切れないわ。でも、他の魔王影兵二人には十分に効果があったわ」
「他の魔王影兵!?」
「この半年間、私達も遊んでいたわけでは無いわ。魔王影兵なら二人、何とか倒したわよ」
「あんなのを二人も……! 凄いな!!」
「ふふん。まぁ細かい話は残りの一人……ベリウロスを倒してからよ!」
「でもどうやってあいつにその槍を?」
「……私が何とかするわ。フィアン君、魔王影兵には光が効果的よ。槍で動きを封じ込めた後、最大威力の剣技を叩き込んで頂戴!」
「了解!」
「ネビア君は私のフォローをお願いするわ!」
「了解です!」
「とにかく、作戦を言うわ。一度しか言わないからしっかりと頭に叩き込んで!」
そういって短時間の作戦会議が始まった。
・・・
・・
・
――ザッ!
「おや、これからそちらに向かおうと思ってたのだが……貴様達から来てくれるとは手間が省けた」
俺達はベリウロスの居た、闇の宝珠があった所まで戻ってきた。
「どうせ逃げ切れねー……ならここで倒してしまおうと思ってな!」
「その口をすぐに黙らせてあげよう」
そういってベリウロスは先ほどと同様に、手をかざそうとしたが……
(フィアン)――天衣・極光刃
(ネビア)――天衣・冥闇陣
「天衣の光で影張りを封じたか……」
「これで訳も分からず止められない!」
(ネビア)――シャドウストーム!
(ネビア)――ダークエクスプロージョン!!
ネビアは上下から魔法を発生させた。上は雷、下は爆発の逃げ場無しの攻撃……大抵の奴はこれだけで倒せそうだが……
「まだまだぁ!」
(フィアン)――双天・光裂連斬!
爆発が収まらないうちに俺は追撃した。しかし……
「ふ……何をやっても同じだ。まだ分からないのか?」
「くそ……!」
ベリウロスは攻撃を受ける際に自身を霧状にし、一切ダメ―ジを受け付けない。
徐々に霧状から元の姿に戻るその時だった。
――ガシャン!
「この時だけはどの魔王影兵も動きが鈍いわね!!」
「な……!?」
――破影の槍!!
――ザンッ!
突如地面の下からサクエルは現れ槍でベリウロスを一突きした。
「グググガガ……! これは破影の槍……ナゼ、キサマが……ッ!!」
槍から無数に光の線が現れ、ベリウロスの全身を縛った。この状態では霧状になれない様だ。
「ネビア君、いい感じに激しい魔法だったわ! フィアン君、今よ!!」
「まかせろ!!」
「天衣状態で込めれる天力全てをこの一打にかける……ッ!」
――天装・光裂斬!!
「うおおおお!」
かつてない程に光り輝く一閃はベリウロスに直撃した。
縛られた光の線も一緒に叩き切られ、槍も消滅していく……
――シュゥゥゥ……
「はぁ……はぁ……天衣が切れちまった……」
「やりましたね!!」
「まだだ……俺達は魔王影も――」
――ザンッ……
「そ……そんな……」
サクエルは霧状から復帰したベリウロスに胸部を手で貫かれた。
そして、その場に倒れこんでしまった
「そんな……サクエル!!」
「ふふ……ははは……! フィアン! 貴様の攻撃が弱くて助かったぞ!!」
「俺の最大威力の攻撃が……!」
「さて、もう私を霧状にさせる事もさせぬ。このまま……私に触れる事すらできないまま殺してあげよう!!」
「く……ッ! だめだ、もう天衣すら出ねえ……くそ!!」
「少しは楽しめたぞ。だがもう終わりだ」
どうする……サクエルはまだ消滅していない……生きているんだ!
まずはサクエルを助けたい……だが俺も天衣が出せない程に消耗してしまっている……!
どうすれば……!