317話 本当の女神?
「なんで……こいつらがこの剣を……」
その瞬間、ヴァルキュリアの吐いた言葉がふと頭によぎった。
「今のを避けるとは……貴様らもただ雑魚ではなさそうデスネ……」
「あの時、貴様ら"も"って言ったよな……ヴィス達とも交戦したのか……?」
嫌な想像ばかりが頭をよぎる。
真っ白になりそうだった時にルーネにほっぺをつねられた。
「フィアンさん! 何を考えているのか何となくわかります。でも、今考えても仕方ないですっ!」
「ああ……そうだな」
「フィアン……」
「くそ……借りたもんはちゃんと手渡しで返せよな……ヴィス……必ず文句を言いに行くから、生きていろよ皆……」
俺は二本の剣を手に取った。その重量感、輝きは紛れもない本物……俺とヴィスの剣だ。
「フィアン、影じいの言ってたやつを……」
「そうだな。掲げてみよう」
俺は二本の剣を影じいに言われた通り、掲げてみた。
「……」
「何も起こりませんね」
「ネビア、俺達は二人で一つだ。一本持って、俺と掲げてみよう。影纏のおかげで、闘気が吸われなくなっているみたいだ」
「なるほど、外部の瘴気や魂片を遮断ってのはこんな所でも役に立つんですね……そういえば僕のカースドシールドも魔力を吸ってこないです……!」
そういって俺はシャドウノヴァの方をネビアに手渡した。
「よし、じゃぁ掲げるぞ!」
「おっけーです!」
――キンッ
剣と剣が交わった瞬間、周囲の景色が下に落ちていき、俺達は妙な浮遊感に包まれた。
「なんだ……?」
浮遊感はそのままで、辺りは宇宙空間の様な場所へと変貌した。
「ここは……ネアンの時にきた……」
「やっと……話をする事が出来ます……」
「?!」
俺達は知らない女性の声がする方へと振り向いた。
その場所には1枚の羊皮紙が浮かんでおり、その横には優しく、ぼんやりと光る発光体が浮いている。
今までは羊皮紙だけだった為、この発光体は今回初めて見る。
「貴方は……?」
「私は何者でもありません……貴方達に使命を伝える為の存在……不確定要素が重なり、ここまで干渉が遅れた事をお許しください」
「その使命とはなんでしょうか?」
「伝えるべき使命は魔王影討伐……。ですが、私が伝える前に討伐に向けて動いてくれているようですね」
「女神様、とでも呼べばいいのかな? 魔王影の場所が知りたい! 女神様ならわかるんだろ?」
「魔王影の場所は2つの祭壇の丁度中心部……そこで眠っています」
「おお、分かりやすいな!」
「ですが、そこへ入るには、祭壇に祭られている[闇の宝珠]を砕く必要があります」
「闇の宝珠……」
「[闇の宝珠]とは……瘴気に侵された宝珠の事です。宝珠を砕き、魔王影を守る瘴気の壁を取り除かなければなりません」
「なるほど、一筋縄では行かないですね……」
「よし、今祭壇には居るしさ! 探して割っちまおうぜ!」
「ですね!」
「所で……女神さまは一体何者なの? 神様?」
俺は唐突に質問をしてみた。今度こそ本当の神様って奴なら凄い事だし、サクエルに神は居たぞって自慢できるしな!
「……そうですね。貴方達から見ればそれに近いのかもしれません」
「えーなんだかパッとしない答えだな……」
「魔王影を倒せば、私が何者かを知る事になるでしょう……その資格が十分にあります」
(そう……嫌でも……ね)
「とにかく、善は急げです。早い事倒してしまいましょう」
「おう!」
「最後に……私から知識を与えましょう……貴方達ほどの力量であれば、使いこなすことが出来るでしょう……」
そういって女神さまが俺達に向かって両手を掲げた。
「フィアンには二刀剣技の知識……ネビアには複合魔法の知識を与えましょう」
――シュゥウウウ
「おお……おお?!」
「凄いです……なるほどこれは……!」
属性の知識を得た時よりさらにぎゅっと濃縮された知識が脳に染み渡る感じだ……。
俺達はその一時のその感覚を楽しんだ……。
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