311話 シャドウ界へ
「その後、ワレの身体に何が起こったのかはわからナイ。だが、起きた時にはこの姿で、この大陸に居たのダ」
「勇者エトワ……」
「今言われると恥ずかしいガ、昔は勇者ってやつだったノダ」
「神治さんも爆発に巻き込まれてよく生きてましたね……」
「ああ、わしも何故生きていたのかは分からないんじゃ……目が覚めると瘴気の森じゃった……吹き飛ばされたにしても遠すぎるんじゃがな……」
「話が長くなってしまったナ。ワレが宇宙等をしっている理由はこういうコトダ」
「話に出てきた女神ってのが気になるな……どんな姿だったんだ? さっきのサクエルとは違うよな?」
「……全然チガウナ」
「ネアンになった時に見た、羊皮紙と、宇宙みたいな空間はなんとなく似てますよね」
「だな。女神は居なかったけど……」
「その場所には何度も言ったヨ」
「え!? 任意でいけたの?」
「ソウダ。それには二本の剣を掲げる必要があっタ」
「二本の剣……?」
「シャイニングノヴァとシャドウノヴァだ。ワレも勇者時代に使っていたヨ……」
「……ヴィスに渡しちゃったじゃねーか! 止めてくれよ影じい!」
「いや……どちらにせよ、あの者たちがシャドウ界に入る為には必要だったノダ。渡すしか選択肢はなかっタ」
「そうか……」
「だが、女神の助言も今後必要になるかもしれんナ……。シャドウ界に行ったら、剣を二本手に取り、掲げてみるがヨイ……」
「わかった。とにかく話してくれてありがとうな影じい」
「エトワ! わしらと一緒にこんか? 今更何かを償えるとは思わん……じゃが――」
「神治、いいんダ。ワレはここを気に入ってイル。要らぬ気をまわしている暇があったら、さっさと準備してコイ」
「所で、剣も無い俺達はどうやってシャドウ界に?」
「……」
「それならわしが転送魔法の触媒紙を作ろう」
「おお! その手があったか!」
「しかし……よく考えたらシャドウ界の座標が分からん……」
「じゃぁ無理じゃん!」
「座標……デバシーの座標なら、記憶してイル」
「デバシーの事も知ってるんだな……」
影じいは長い羅列文字を触媒紙に記入してくれた。よくこんな長い数字が覚えれるものだ……。
「エトワよ……助かったぞい」
「じゃぁ早速帰って作ろうぜ!」
「そうじゃな……」
「影じい、本当に有難う。これで俺達は魔王影を倒しに行けるよ」
「アア。ワレが果たせなかった魔王影討伐……お前たちに託したゾ」
「エトワ……よかったらまたここへ来てもええかの……?」
「……好きにするとイイ」
そうして俺達は、神治さんと共に瘴気の森へと帰還した。
神治さんは戻るとすぐに触媒紙の作成に取り掛かった。
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「これが転送用の触媒紙じゃ」
「ありがとう」
「それと、レッド達と連絡が取れないんじゃろう? これを北部と南部の祭壇付近に設置するんじゃ。上手く行けば連絡がつくようになるし、マッピングも出来るようになるじゃろう」
「何で祭壇付近に?」
「祭壇ってのはたまたまじゃ。エリア的に一番効果的だと判断したまでじゃよ」
「なるほど……とにかく色々助かったよ」
「そうじゃ、ウォレックから預かっていた剣を渡しておらなんだな」
「あ……そうだよ! このままだと丸腰だ」
そういって神治はデバシーから一本の剣を取り出した。
「名は、[深き深淵の長剣・DS49]だそうじゃ」
「ありがとう!」
ロングソード程の大きさであるその剣の刀身はエメラルド色で水晶の様に透明感がある。
俺はその剣を軽く振ってみたり、力を込めてみたりした。
「……うん。シャイニングノヴァよりは違和感あるけど、なんとか使えそうだ」
「そいつはよかった。ウォレックにもそう伝えておくとしよう」
「さて……そろそろ行くか!」
「ですね!」
「気を付けて行くんじゃぞ!!」
「ああ!」
「行ってきますね! 神治さん!」
俺達はそのまま神治さんの研究室を飛び出し、開けた場所へと移動した。
・・・
「結局密着して転送しなければならないんだな……」
「ですね。これだとまだまだ僕たちにしか使えませんね……」
そんな会話をしながら俺達は抱き合った。久しぶりだから少し恥ずかしい気分だ……。
「ネビア、準備は良いか?」
「いつでも行けますよ!」
手順はいつも通りで俺が魔装魂を限界まだ高め、ネビアは魔力を魔方陣に限界までため込んだ。
サクエルやレッド達に6ヵ月の遅れをとってしまった。案外北部も南部も制圧してくれてるかもしれないな……。
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