30話 部屋の調査
途中でシャドウに出くわす事もなく、さっとその部屋までは行くことができた。
「うーん、やはりあんまり残ってなさそうですよね……」
「とりあえず落ちてる奴は全部拾って帰ろうぜ!」
そういって俺達は各々袋を持って、ぽつぽつ落ちている魂片を回収する事にした。戦闘中は意識してみていなかったのでいまいち覚えていないが、色々な色が散っていた気がするんだけどな……。
見る限り黄色か無色ばかりで、濃い黄色とかがたまにある程度だ。保存状態が悪いとだんだん劣化して言ったりするのだろうか。部屋も色々見渡しては見たが、1段上がったところに変わらず王座みたいな椅子が一個ぽつんとあるだけで、それ以外は何も無さそうだ。
一通り見渡し集めきった辺りでネビアが大きな声を出した。
「フィアン! ちょっとこっちに来てください!」
シャドウナイトが座っていた王座の後ろ側からぶんぶん手を振って来た。
「どうしたんだよそんなに慌てて……」
「これを見てください……」
ネビアの指が指した先に目をやると、1~9の数字が書かれた電子パネルの様な機械的な物と、横には数字が6桁ほど刻印されていた。電子ロックの扉を解除するパネルに非常に似ている……。
「なんだこれ、横に数字も書いているし……。えーと(414199)か。凄くわかり易いパスワードだな……」
「フィアン! 気付かないですか! この数字……パネルは英数字だし、こっちに書いている数字は漢数字、ローマ数字、あとはひらがな……全部この世界の数字ではない。僕らが居た世界の数字ですよ……」
俺ははっとし、再度数字に目をやった。さっと読んでしまったが、(四・いち・Ⅳ・一・九・きゅう)と書いているのだ。
「なんだこれ。こっちの人らがこの文字を知っているわけ無いよな……?」
「考えられるのは、僕達以外にも転生者みたいなのがいるって事ですよね……。しかもご丁寧に解読は転生者にしか分からないような文字を……。いちとか書いているから、日本人じゃないですか!?」
まぁ俺達がいるんだから、ほかに誰一人として転生者は居ないとは思っていなかったが、こんなすぐに痕跡を見つけてしまうとはな。
「これ、パネルを押せばどこか開くんじゃないでしょうか……」
「こんなの、開けるしかないだろっ!」
正直、他の転生者等どうでも良かったが、お宝とかあるんじゃないかな! という期待や好奇心が圧倒的に勝っていた。
もちろん、それはネビアも同じだった。俺はすぐにパネルに手をやり、414199と打ち込んだ。打ち込んだ瞬間、後ろの壁が扉一枚分ほど光り始めた。
「なんでしょうこれ……凄く光ってるけど、こちら側に光が全く漏れていないですね……」
「そうだな、吸い込まれるような光だ……」
少しその雰囲気に気おされてしまったが、しばらく眺めた後、
「よし、とりあえず入ってみようぜ! やっぱ気になるしな!」
「ですね……! 行きましょう!」
そういって俺達は、扉に手を入れた。途端に光に吸い込まれるようにして目の前が真っ白になったと思いきや、さっきとは明らかに違う雰囲気の場所へと移動していた。
少し薄暗く、その場でとどまっていたが次第に目は慣れてきたので周りを見渡した。すると、四方の壁は機械的なもので出来ており、少し前方には大きな電子扉の様なものがあった。真ん中には空中に飛び出した映像で赤く「OPEN?」と描かれていた。
この世界では考えられないというか、似合わないような景色が広がっていた。
とにかくそのままOPEN? と描かれた部分にそっと触れてみた。すると赤いOPEN? から青いOPENと言う文字に変わり、ガシャンという音を立てながら、前方の扉が開いた。それと同時に辺りが明るくなって、部屋の全貌が明確に見えてきた。
「な、なんなんだこれは!?」
「すごい雰囲気ですね……」
軽く全体に目をやると、真ん中に長方形型の箱の様なものがあり、機械的な管や線がたくさんごちゃごちゃとついていた。その周囲の壁沿いには機械の机があったり、冷蔵庫の様なものがあったりしたが、大半が全く見たことが無い未知の機械ばかりだった。
ここで別の転生者が生活していたのだろうか。しかし俺達の世界から来たとしても何か違和感があるな……。
ネビアも同じようにその場で周りを見渡していた。
「人の気配は無いのに、凄く清潔な状態ですね。不思議な感じです。まるでSFの世界に来た気分ですね……」
「そうだな、そうなんだよ!」
「フィアン? どうしたんです、いきなり大きな声を出して」
「いや、おかしくないか? 俺達の元の世界から来たとして、こんな見たことの無いような機械ばかり出てくるか? この世界のものではないだろうし、俺達が居た元の世界の物にしては技術が発達しすぎているような……」
「たしかに言われてみるとそうですね。でも、パスワードは日本語などでしたし、うーん……」
「とりあえず、色々触ってみるか……?」
「そうですね! ちょっと調査してみましょう!」
そういって俺達は部屋にあるものにいろいろと触れてみることにした。