3話 森での遊び
試練をクリアするまでは下積みが続きますが、どうぞよろしくお願いします。
生物言語を覚えた俺達は、早速読みたかった[魔法教本水・火編]を手に持ち、家の裏をずっと行った先にある森の奥のほうへ出掛けた。そして、水の魔法からやってみることにした。
もちろん、両親が仕事で留守のときを狙ってだ。
また、ライトペイントを1年間極めてきたおかげで、この魔法には多くの応用が利くことが分かった。
指先に光を溜めることはもちろん、それを切り離して照明にしたり、指先ではなく、掌のある一定の範囲であれば光の球を瞬時に出すことが出来たのだ。
それを飛ばして攻撃! 見たいな事は出来そうに無かったが、出して切り離した光球は自分の意思である程度は移動させることが可能だった。その光球を俺は同時に3個までは出せたが、ネビアは7個まで出せるようになっていた。うーん悔しい!
そんなことを思いつつも、ネビアと一緒に水魔法の最初のページに書いていた、[ウォータースプラッシュ]の魔方陣を早速ライトペイントで空中に描いてみた。
書いた後に、手を魔方陣にかざし、押し出すようなイメージで……。
すると、魔方陣は光を放ちながらばしゃーっと音を立て、大量の水が出てきた。
「おお、すげえ……」
二人は顔を見合わせ、感動していた。
しっかりと間違わずに魔方陣を書くことで、見習い級水魔法は全て使用することが出来た。
◇水魔法
ウォータースプラッシュ
魔方陣から水を出す。ホースからでる水の様な感じ。
ウォーターボール
スプラッシュの応用で、水を球体に留める。
ウォーターバレット
ウォーターボールを真っ直ぐに射出する。
一見同じ魔法だが、プロセスが増えるごとに魔方陣が複雑になっていた。
とにかく全部覚えよう。すぐに魔法を発動する為には、魔方陣を完璧に覚えなければならない。
幸いこの3つに関しては、魔方陣の形は殆ど同じで、下に行くごとにスプラッシュの魔方陣に追加で書き足すイメージで大丈夫だったので覚えやすかった。
しかし、一緒にやり始めたのに……ネビアの方が描くの早いし、何よりも威力が高そうだ。
ウォーターボールなんて、俺の倍ほどの大きさを軽く生成していた。
切磋琢磨というよりかは、置いて行かれないように必死だ……。
魔法に夢中になっている最中、俺達はハッと我に帰った。
まずい。かなり暗くなってないか!?
「ネビア、やばい! 辺りが暗くなってきてる! 外出がばれる!」
急いで二人でダッシュしたが、ネビアが走るの遅い! いや、俺がめちゃくちゃ早いのかもしれないが……。
ネビアの速度にあわせていたら絶対に間に合わないと思った俺は、猛烈に息を切らしているネビアを仕方なく、背負ってダッシュする事にした。
背負いながらでもネビアの倍は早かったと思う。
家に帰ったとき、両親はまだ帰っていなかった。
が、息を整える間もなく二人そろって帰ってきた。
「ただいまー。あれ、どうしたのよ。ネビア、そんな息を切らして! しかも二人ともびしゃびしゃじゃない! さっさとお風呂に入りなさい!」
ずぶ濡れになってた俺達はすぐに風呂に入ることになった。
「フィアン、ものすごく体力ありますね……とても追いつけないし、足があんなに速く動かないですよ……」
たしかにあれだけ走ったのに、全然疲れてもないな。
「魔法はネビアの方がすごいけど、体力は俺の勝ちだな!」
「そうですね……羨ましいです。とりあえず、明日は火の見習い級やってみませんか? 何かあっても水ですぐ消せますし!」
魔法には俗に言う階級があるのだ。
光魔法ライトペイントは基礎級これが使えないと魔法は始まらない。
そこから派生して、火、水、風、土と、四大元素の魔法がある。
見習い級、初級、中級、上級……更に上もあるらしいがざっくりこんな感じで分かれている。
この本には水と火の見習い級と、初級が少し記載されている。
土と風の魔法も覚えたいなと思いながら。
こっそり森に行く日々が続いた。
――半年後(2歳半)
すでにこの本は読み終わっており、水と火の初級までは習得していた。
火の魔法も水とほぼ同じで、
◇火魔法
バーンファイヤ
魔方陣から焚き火のような火が燃え盛る
ファイヤボール
火を球体に丸める。
ファイヤバレット
火の球体を射出する。
ここである閃きが二人の間で出てきた。
それは指先で描くより、切り離した光の玉で描いたほうが早いんじゃないか? と言うものだ。
思いついてからすぐに実行し、難なく出来るようになった。その技を使い、俺は3個の光玉で掌の上でさっと魔方陣を描いた。
結果はウォーターバレットを描くのに約3秒程。一本の指で描いていた時は急いでも10秒くらいかかっていたから、物凄く早くなったと思う。ちなみにネビアは7つの光玉で1秒もかからないうちに描けるようになっていた。
また、詠唱も楽になった。本来は魔方陣を描いて、手をかざして魔力を込めるというプロセス。それを掌に生成しながら手を前に出し、魔力を込めることで即座に発動できるようになった。
更に、魔方陣のある法則にも気が付いた。火か水を出す際の魔方陣の模様はまったく違うものではあるが、球体にとどめたり、射出する部分に関しては、まったく同じ模様が魔方陣に入るのである。
つまり、命令系統に当たる部分はどの属性にせよ、同じ模様で動作するようだ。
即時に魔法が使えるようになって、二人で大喜びしていた。
はっとここでまた我に帰った。
辺りはもう真っ暗だったのだ……。
「やっちまった……完全に真っ暗になってるぞ!」
とにかく、荷物を片付けて、俺はネビアを担ぎまた猛ダッシュで家に走った。前の時より、更に早くダッシュできた気がする。
途中で、「あっ……」と言う声と人が見えた気がしたけど、それを置き去りにして全速力で家に帰った。
バンと扉を開けると……誰もいなかった! 良かったまだ帰ってない、と……
一息つこうと思った瞬間、続けて扉がバンと開いた。
「フィアン! ネビア!」
後ろを振り返ると、汗だくで息を切らした両親が居た。
「は、はい……」
「森の奥から走って来たのは君達だね?」
あかん! バレてましたわ! もうどうにでもなれと言う気分で、変な言い訳もせず、正直に答えることにした。
「はい……ごめんなさい。こっそり家をでて、森で遊んでました」
「その本を持ってかい?」
ネビアが持ってた魔法教本を見ながらゼブが言った。
ネビアも正直に答えるようにしたらしく、
「はい。本を勝手に持ち出して申し訳ありませんでした。ここに書いている魔法に興味が出て、森の方でやってみようと思いまして……」
「そ、それでできたの!?」
ティタがゼブを乗り出して目を輝かしながら聞いてきた。
「ちょ、ちょっとティタ……今から説教をするのにな……」
「いいじゃない! それで! 本の魔法は出来たの!」
「記述されている魔法は一通りできるようになりました。僕もフィアンも……」
父さんは物凄く驚いた顔をしていた。
「まだ3歳にもなってないのに……魔力がよく足りたね……」
「わー! 天才よこの子達! ねえゼブ! 魔法の勉強をつけてあげなさいよ!」
「いや、ちょっと早すぎるんじゃないかな……?」
「お願いします。僕たちに魔法を教えてください! 悪いことには使いません!」
流れに乗って、二人でそのままダメもとでお願いしてみた。そして、そのままティタにも……。
「あと剣術も教えてください! 魔法と剣を使えるようになりたいんです!」
ティタの顔が更に笑顔になったのが見て取れた。
「いいわよ! しっかりと叩き込んであげるわ! ゼブ、魔法も教えたあげたらどうなのよ! 可愛い子供達のお願いよ!」
同時に頼んでみたのは正解だったかもしれない。
ゼブはティタの気迫に押され、OKを出してくれたのだ。
こうして、怒られることもなく、俺達の本格的な修行が始まったのだ。
次回修行編からの試練遂行をそろそろしていきたいですね!