296話 病院内にて
――中央都市 病院内
俺とネビア、ヴィスとアリシアは今病院で待機中だ。皆来たがっていたが、大勢で病院に押しかけても迷惑なだけなので、他の皆には学園に居てもらっている。
目の前では神治さんとジートが打ち合わせをしている。
「凄いでやんす……この力があれば脳を正常に戻せるでやんすよ!」
「そうかそうか。万能な力じゃ……この宝珠はのう」
「しかし、今説明したようなものを作られる技術者の知り合いは居ないでやんす……論理的に出来るのに悔しいでやんす……!」
「安心せい。今言った機械はわしが何とかしよう」
「本当でやんすか!」
「わしは技術者みたいなもんじゃ! どーんと任せるんじゃ!」
2人は、宝珠の力をうまく流用する方法を見つけ出したようだ。
あとはその機械って奴を作って試すだけか。
「ついに……ですね」
「ああ。これで皆元に戻れば、俺達の目標は一つ達成だ」
「瘴気の山が噴火してからここまで、頑張りましたね」
「んだな……セントラルは都市としての機能は十分に回復しているが、他国はまだ混乱状態だそうだ」
「次は地上界側のシャドウ界……僕たち二人の冒険はこれからって感じですね」
「二人じゃないです! 何度言えばわかるんですかっ!」
「……失礼」
「おっと失礼いたしました。4人ですね!」
「4人どころかケイトやサクエル達も来てくれるなら沢山になるぜ!」
「そうですね!」
そんな話をしている内に、もう全ての準備が完了しているようだ。相変わらず凄く速い。
神治さん……久しぶりに動けるから凄く張り切っているのかな?
「よし、このヘルメットを着けて起動すれば脳の動きが正常になるはずじゃ」
「本当だな! 早く、早くやってくれ!」
「これ落ち着きなさいヴィスターン君。とりあえず、一旦退出して欲しいんじゃが……」
「駄目だ! 訳も分からない機械を使うのだろう?! 心配だ! 近くにいないと――」
(アリシア)――サモン:スリーピングフラワー
アリシアは小さな花を召喚し、ヴィスターンの鼻に押し付けた。
「な!? まて……zzz……」
「ごめんね神治さん☆ ぼく達は外で待ってるよ!」
「アリシアちゃん……その花は多用して大丈夫なのかの……」
「えへへーやむなしだよ!☆」
「とにかく助かった! 早速オペを始めるとするぞい。ジート君、君も手伝ってくれ」
「もちろんでやんす」
そう言って手術室のような所に次々と意識が戻らない患者が運び込まれていった。
もちろん母さんもだ……。
・・・
「んん……!? 姉さん! くそ、何だこれは!」
睡眠効果が切れたヴィスターンはばっと目を覚まし、自分が鎖で縛られている事に気がついた。
「え? 俺のチェーンライト!」
「なんだと……くそ、解除しろ!」
「おいヴィスターン……少しは神治さんを信用して大人しく待ってろよ」
「信用できない! 僕が傍に居なければ……!」
全く……ヴィスターンは姉さんの事になると本当に人が変わったようになるな……。
「ヴィスターン、お前今綺麗か? 手術中にお前の姉さんにばい菌でも入ってみろ、大変な事になるんだぞ?」
「風呂には入っているぞ! ダンジョン内とかに居なければな!」
「それにお前が突然入って驚いて失敗したらどうするんだ。ヴィスターン、医者に任せるのが一番なんだよ。お前が行っても邪魔なだけだ」
「……くそっ」
不服ながらもヴィスターンはその場に座りなおした。
なんだよこれ……お前の方が100歳以上年上だよな……? 何故俺が諭さなければならないのか。
「アリシアちゃん、ヴィスは大人しく待つみたいだからそのお花はしまおっか……」
「ちぇー残念☆」
・・・
「無事に終わったぞい!」
しばらく待つと、神治さんが部屋から出てきた。その表情には疲れが見えるが、喜んでいるようだ。
「本当か!! ぐっ!」
ヴィスターンはすかさず立ち上がり、姉たちの居る部屋に行こうとしたがすかさず神治さんが止めに入った。まぁチェーンも巻かれたままだし飛び入る事は無いが……
「待つんじゃ。今は安静第一……大事な時じゃ。焦らなくとも時期に目が覚めるじゃろうて」
「くそ……分かったよ。それより……」
ヴィスターンは首輪の様に巻かれたチェーンを触って俺をにらみつけた
「チェーンを外したと思ったらなんだよこれは!」
「ポチ……ヴィスが突然飛び出さないように念の為にな……」
「あはは☆ ヴィスったらペット見たいだね☆」
「うるさい! おいフィアン! もう分かったら外せよこれ!」
「外してやるから……お座り!」
「なっ! 言い方を訂正しろ!」
「あはは☆」
「これ! 静かにするんじゃ!!」
神治さんの一言でその後、俺達は大人しく静かに待った。