27話 再び決着!
「いくわよ!」
また閃光脚で地面を蹴る音がした。やはり姿を捉えることはできないが、先ほどより母さんの入ってくるイメージが早くつかめるようになっていた。防御が余裕で間に合ったのだ。
「むっ、今度はしっかりとガードできたわね……」
「何となく……つかめてきた!」
ガードを成功したところで、母さんは一瞬で斬撃・後退を行なう為、中々攻撃をヒットすることができない。しかし、こちらから動くと隙をつかれて、やられてしまうのは必至……。
とにかく感覚を研ぎ澄まし、カウンターを狙うしかないのだ。
「ふう……フィアン、防御だけでは勝てないわよ!」
すると、母さんは剣の刀身に手を当て、地面と平行にし闘気を溜め始めた。
「剣の四重奏!!」
おいおいなんだそのまたかっけー名前の技は! とか思ってる場合ではないが……。
その名の通り鉄の刀身とは別に、光る刀身のようなものが3本鉄の剣に少し浮きながら重なり、その場で留まっているのだ。
「この3本は私の闘気で出来た剣よ。これは避けにくいわよ……!」
そう言いながらさっきの調子でまた突進してきた。少し慣れてきたのか、感覚を研ぎ澄ますことでより明確に切り込まれるイメージと場所は見えずとも判断できた。
とにかく4本の刀身を全て防ごうと考えたのだがそれは甘かった。
キィン! と金属音がなった瞬間は4本とも俺の剣で刀身を防いでいたのだが、その瞬間ぞっとするような気配を感じた。案の定、3本の闘気剣が俺の剣を軸に、回転し顔にめがけて飛んで来たのだ。
咄嗟に力押しで母さんの剣を弾き、後退したが頬に少しヒットし、切り傷が出来てしまった。このまま受けきっていたら3本とも脳天から切り刻まれていただろう……。
「いい判断ね……」
「独立して別の動きをするなんて、厄介な剣だ……でも!」
目に目をだ。俺も見よう見まねで同じように剣を地面と平行にし、闘気を溜めてみた。すると同じように光の刀身が現れ、母さんと同じように浮きながら留まっている。
「よし! 出来た!」
「うそ! さすがフィアンね! 見ただけで出来ちゃうなんてね……」
そしてこの闘気剣……俺はあることに気づいてしまった。上手くいけばこの一手で勝てる……!
俺は闘気剣の一本を触れた後閃光脚を準備した。
「は!」
ブレードブラストはそれぞれの刀身から発生し、計4本放つことが出来た。しかし、それは母さんと俺の間程の所で突き刺さり母さんまでは届かなかったのだ。
「何処を狙っているの! 4本になっても当たらなければ意味が無いわよっ!」
まぁ、それが狙いなんだけどね!
母さんがそういった瞬間、ブレードブラストはその場で爆発し、大きな砂煙が舞った。
その煙に乗じて閃光脚で瞬間的に間合いを詰めた。母さんは咄嗟に防御体勢に入り俺の攻撃に備えた。
「目が見えなくたって、フィアンの大きな闘気は感じられる……私に目潰しは効かないわ」
そんな言葉は無視して闘気を全力で溜めて、ブレードスラッシュを放った。剣は母さんに防がれ、また大きな金属音が鳴り響き、煙は晴れようとしていた。
「無駄よ! そんな攻撃じゃ私にはとどかな……ッ!」
母さんはそこで言葉が止まった。
「俺の大きな闘気に気を取られすぎたね。母さん」
母さんの背中には1本の闘気剣が深々と刺さっていた。
「す、すごいわフィアン……!」
母さんはそう言いながらどさっと倒れ、その瞬間辺りが光に包まれた。
そして、はっと我に帰ると無傷の俺と母さんが立っていた。
「フィアン! 凄いわ! 経験の差は大きいはずなのに、発想力には本当に恐ろしさも覚えるわよ!」
「母さん有難う御座います」
「す、すごい戦いじゃった……。私も頑張らねばならんのう……」
「二人ともお疲れ様! というかフィアン、ブレードブラストが爆発したのと闘気剣は一体どうやって後ろから……?」
「父さん、実はあれはブレードブラストではなくて、ソードエクスプロージョンを飛ばせないかなって土壇場でやってみたら上手くいったんだよ。その爆風に紛れて切り込んだ際に闘気剣の一本をこうやって後ろに回りこませたんだ!」
俺は闘気剣を出し、ライトペイントの球4つで掴んで、自在に動かして見せた。
「闘気剣にライトペイントが触れても、そのまま動かせることに気づいたので、これまた土壇場でやってみた!」
「ふうん。母さんにはライトペイントをそもそも飛ばせないから真似出来る芸当ではないわね……」
母さんは少し悔しそうにしていた。
「でもフィアン、煙を利用するなんて、僕と同じような作戦ですね」
ネビアはふふんと笑いながら俺を見ていた。
「そりゃそうだろ! 発想力は俺ら同じ……っと双子なんだから似てるもんだろ!」
大体思いつく作戦なんて同じに決まっている。
同じ人間が考えて実行したようなもんだからな!
「さて、二人とも見事に父さん達に勝った! 本当に強くなったね。末恐ろしいよ全く……。とにかく、おめでとう! 約束通り、もう止める理由は無いよ! 本気の父さん達に勝ったんだ! 大体何処言っても通用するだろうね」
「二人とも本当に強くなったわ。だからといって油断はしては駄目よ。しっかりと勉強と技を磨き続けなさい!」
「有難う御座います!」
俺達は声を合わせて感謝を述べた。念願の学校へ行けるんだな!
「さて、もういい時間ね! お腹もすいたし帰るわよ!」
こうして、卒業試験は無事合格に終わり、俺達は帰路についた。




