246話 大天使の部屋
――理事長室
「あら、すっごく速い帰還じゃない!」
「ケイト隊無事に目標まで到達し、その場所を調べてきたぜ!」
「よくやったわ! じゃぁ詳しく教えて頂戴!」
ケイトは自身の目で見た、トリガーを作る機械の事や、全体の印象をサクエルに伝えた。
「なるほど……トリガーの出荷はここからだったって訳ね……他に怪しい物とか、持ち帰ってたりはしない?」
「うーん。私のトリガーに使えそうなパーツは少し持ち帰ったぜ? でも他には……皆なんか見つけたか?」
「リッタの目には全部ゴミにしか見えなかったにゃ……」
「オリアもですにゃ」
「そうなのね。有難う皆! 試験は合格とするわ!」
「本当か! やったぜ!」
「とにかく皆休みなさい!」
「おう! じゃぁ食堂の方へ行こうぜ!」
「ケイト、後で行くよ! 俺達はまだサクエルさんと話があるんだ!」
「お? そうか、じゃぁ先に行ってるぜ!」
そういってケイト達は先に理事長の部屋を後にした。
「サクエルさん、実は怪しい物……かどうかは分からないけどこれを見つけたんだ」
フィアンは工場で見つけた棒をサクエルに見せた。平然を装って入るが、闘気にかなりの動揺が見て取れた。
「何か知ってるんだな?」
サクエルは少し迷った後、観念したかのように話し始めた。
「ええ、それは間違いなく大天使様の部屋の鍵だわ」
「は? なんで工場に……?」
「何故かはわからないわ。ただ、ジャックと大天使様はやはりつながっていたという事ね」
「……」
「実はあの場所が分かったのは、大天使様が最後、慌てて出て行った際にしまい忘れていた書類があってね、そこにその場所が書いてあったのよ」
「成程……」
「伝える際、少しづつ嘘を交えて話した事を謝るわ。正直、貴方を完璧に信頼していたわけじゃないのよ」
「まぁそこは何も言えないな。特に俺は堕天使側だったわけだしな! ただ、俺は宝珠を取り戻して、昏睡状態の母さん達を元に戻す。その為にはなんだってするつもりだ」
「そうね。宝珠を取り戻したいのは私達も同じだわ」
「……」
少しの沈黙が続いた後、サクエルはまた口を開いた。
「とにかく……貴方達も大天使の部屋を見てみたいんじゃないかしら?」
「あ、そうだな。何か宝珠につながる手掛かりがあるかもしれないしな」
「こっちよ。ついて来てちょうだい」
俺達は言われるがままににサクエルの後を追った。
・・・
・・
・
「ここか……」
目の前に現れたのは一見神々しい扉ではあるが、棒を差し込む挿入口付近は明らかに機械的なつくりとなっている。
「さ、そのカギをここへ」
「おう」
フィアンは手に持っていた棒のカギを穴に差し込んだ」
――シュッ カシャ……カシャ……
「へんな動きで入っていくわね……」
「そう……だな」
フィアンとネビアはその動きをみて、神治さんの入っていた箱を開けた際に動きを連想していた。
つまり、近未来技術のカギの開錠の方法に似ていたのだ。
「さ、開いたわ! 調査しましょう!」
「サクエル、ちょっと楽しそうだな」
「そりゃワクワクもするわ! 大天使様以外誰も入ったことない場所よ?」
「たしかに。何か人に見せたくない趣味の物とかおいているかもしれないな!」
「あはは。それも面白いですけど、何かヒントを探しましょうね?」
・・・
扉をくぐると、短い通路があり、その先にもう一つ扉があった。
その扉には鍵は閉めておらずそのまま部屋へと侵入する事が出来た。
部屋に入るなり、中央に角柱状になった本棚が天井まで伸びているのが目についた。そこには本がびっしりと並んでいた。
部屋自体は6畳ほどしかなく、他に怪しい物等は一切無かった。
「すごいですね……見たことのない本しかないですよ……」
「やっぱり手掛かりがあるとすればこの本の山の中……か」
「これを全部読むのには相当時間がかかるわね……」
「とにかく一旦戻りましょうか。ケイト達の覚醒の儀も行わなければならないし、食事もまだでしょう?」
「そうだな。本を読むのは後回しだ。ネビア、行こうぜ!」
「ですね」
そういって俺達は一旦その部屋を後にした。
もちろん、ちゃんと鍵は閉めたぞ!