240話 中心部へ
「はぁぁぁ……空気がおいしいにゃー」
「いや、リッタ……瘴気が薄い場所といえど瘴気の森以上に濃いからな? 深呼吸はやめておいた方がいいぜ……」
シャドウキメラとセンチュリオンを倒した一行は、目の前まで来ていた不自然に瘴気の薄い場所へと足を運んだ。
不思議な事に、この場所は瘴気の嵐も避けて通っており、草木も生い茂っている。まるで砂漠の中にポツンとあるオアシスの様な場所だ。
「にゃ! あそこに湖はあるにゃ! ちょっと寄っていこうにゃ!」
「おいリッタ! 勝手に行くんじゃないぜ!」
皆はリッタを追いかけるように湖の方へと向かった。
「なぁネビア、おかしくねーか? ここ」
「ええ、僕も思ってました。ここの瘴気が薄くなったのはこの前ですもんね……こんなに草木が生い茂る時間は無いはずなんですけどね……」
「サクエルは”出現した”と言っていたが、遥か前からここは瘴気が薄かったんじゃねーか?」
「可能性は大いにありますね。そもそもなぜここにこんな場所があるって分かったんでしょうか。天上要塞が飛んでいる時ならまだしも……」
「……」
「まぁとにかく今は目の前の依頼に集中しましょう。見つけたもので持ち帰れそうなものは持って帰りましょう」
「ああ、そうだな……」
一行は湖近くで食事をとり、再度歩みを始めた。
とにかく、一旦この瘴気が薄くなっている場所の中心部へ向かうことにした。
「……あ!」
「ん? どうしたんですかフィアン」
「いやーなんかこの状況既視感あるなって思っててさー」
「この状況?」
「そそ、女子が前を歩いて、俺達が少し後ろをついていく感じ?」
「あー、小学校の遠足の時ですか?」
「そうそう! 班決めが男女3人づつのグループでクジだったよな!」
「そうですねー。男子3人仲いいので集まれたのが救いでしたね。たしか遊園地でしたね、女子が元気でついてくのが精いっぱいだったのもあるけど、微妙な距離感がありましたよね……」
「話さなければいけない事とかだけは話してたけど、それだけの会話で何となくワクワクしてたような気がするな……」
「そうですね、馬鹿なことやって気を引いたり……」
「……よし、これ以上はやめよう。恥ずかしくなってきた」
「あはは。そうですね」
「フィアン! 目の前にすげえ怪しい場所があるぜ!」
ケイトが指さす方向には、綺麗な正六面体で大理石の様な光沢を放つ物体だった。
大きさは7立方メートル程で、表面には小さく光の線が不定期に走っている。
「なんだこれ! 見たことねー素材だぜ!」
「少し削って持って帰るかにゃ?」
「おい! 落ち着け! とりあえず、地面に面している部分以外、しっかりと調査しよう。多分これは俺とネビアしか分からねえ。専門的なものだ。ちょっと大人しく待っててもらえるか?」
「ちぇー。わかったにゃ」
「フィアンが言うなら仕方ねーぜ。近くで見るくらいで我慢しようぜ」
ケイトとリッタが何かやらかす前に注意しとかねーと……壊れるかもしれないしな。
「ネビア、俺はここと左の2面をみる。ネビアはそこと右の面を頼む」
「わかりました」
早速俺達は入念に面を調べ始めた。
さて、触りながらじっくりと観察しよう。箱はパッと見て機械的だが、洗練されたフォルムをしており漆黒の大理石……ってこの感想は神治さん箱と同じ感想じゃねーか!
自身の語彙力が乏しい事を改めて思い知らさせつつも、同じ要領でゆっくりと調べた。
「今回はしっかり四角形型……角が落ちてたりはしないのか……」
ぶつぶつ言いながらも2面目に突入、同じように小さな異変も逃がさぬように入念に調べ上げた。
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「おかしな点は無く、つるつるで肌触りがいいだけでしたね……」
「そうだな……となるとやはり……」
念のために側面の4面を2周調査したが結果としては何も出てこなかった。
残すは上の面と地面に面してる面だ。
「ちょっと上の面見てくる!」
「お願いします!」
そういうと俺は上面へ向かってジャンプした。
「さーて、どんな感じかなー……」
すると、フィアンが着地した瞬間。上部の面は青く光り輝いた。
「え……? 魔方陣……?」
そう認識した瞬間には、フィアンは光に包み込まれ、目の前が真っ白になっていた。
「フィアーン! 今光りましたけどなんでしょうかー!」
「返事がにゃいな……」
「ええ……まさか!」
ネビアはウォールロックで7m上までせりあがり、フィアンの乗ったはずの面を見た。
「いない……魔方陣発動の跡……? これは転送魔法ですか……!」
「それはやばいんじゃねーか! この辺りを探そうぜ!」
「いや、待ってください! 闇雲に探してもさっきの様なシャドウがまた現れるかもしれません! とにかく何かこの箱の謎を解明しましょう! もしかしたらこの中に転送されたのかもしれません!」
そういってネビア達は皆で再度正六面体の調査を行った。