239話 シャドウセンチュリオンとシャドウキメラ
「……?」
「フィアン! よそ見している場合じゃないですよ!! 鎖が解除されてしまいます! 早く止めを!」
「!? すまない!」
――ザンッ!!
光の鎖に縛られ、身動きが取れなくなったセンチュリオンを左肩から両断した。
そしてセンチュリオンはそのまま消滅した。
「ネビア、今すげえ嫌な気配を感じなかったか?」
「……? いえ、僕は気づきませんでしたね……」
「そうか。気のせいだといいが……」
(……にしてもセンチュリオンクラスになると、光の鎖で完全に行動を封じる事が出来ないか)
チェーンライトはチェーンシャドウに比べて拘束力は低い。だがそれはシャドウ以外に限っての話である。
対シャドウに関してはチェーンライトは恐ろしいほどの拘束力を発揮する。弱いシャドウであれば、そのチェーンに触れているだけで身動きが取れなくなってしまう程なのだ。
だが、センチュリオンは拘束はされつつも抵抗する動きを見せ、時間が経てば鎖を解除していた事だろう。
フィアンは、ランク25相当でこの位動かれてしまう威力なら、それ以上のランクを止めるのはもはや不可能だろうと思わざる得なかった。
(レッドから聞いている、"これ以上"のシャドウとなるともう止まりそうにないな……)
「とりあえず、ケイト達の様子を見に行こう! やばそうなら速攻助太刀するぞ!」
「ですね!」
そういって俺とネビアはケイト達の方へと向かった。
――フィアン達の別れた直後、ケイト隊
「ち……ッ! 速すぎる! リッタ、離れすぎるなよ! フォロー出来ないぜ!」
「分かってるにゃ! でも速度を緩めたら追い付かれるにゃ!」
シャドウキメラはリッタに釘付けになっている。非常に足が速くそれから逃げるのが精いっぱいである。足の速度はリッタが一番早い故に、辛うじて捕縛されていないが、他の3人がついて行けていない。
オリア、ケイト、シーンと並んでおり、大きく離れてリッタが前方を走っている。
ケイトは切り返すタイミングを伺っているが、あまり迷っている時間は無い。
「これ以上離れるとやばいぜ……! リッタ! 前方にビートスタンプを放ってくれ!」
「了解にゃ!」
獣人族が非常に耳が良く、遠くても連携がとりやすい。ヒトと獣人ならあくまでも一方的な連携となってしまうが……。
(リッタ)――ビートスタンプ!
闘気を溜め、垂直に武器を振り下ろす。武器とその周辺の大気を大きく振動させ相手を怯ませる。
リッタはケイトに言われるがままにビートスタンプを放った。
前方だけでなく、周辺に影響を与えるビートスタンプは後方にも効力がある。
~~グルルッ
シャドウキメラはその効果範囲ぎりぎりで急停止した。その反射速度は尋常ではないものである。
(ケイト)――レーザーバレット[エンチャント・ライト付与]
~~グオオオォ!!
だが、ケイトはその一瞬の停止を見逃さず、出し惜しみなく着地点にレーザーバレットを撃ち込んだ。
「ちッ! 避けられた! 急所には当たってないぜ!」
シャドウキメラは寸前で体をひねり、狙ったコアがある胸部を避け、弾は後ろ脚付近に命中しよろけた。
すぐさま再生が始まる為、油断は出来ない。
「レーザーを避けるなんて、あいつ人間じゃねえぜ!」
「いや、どうみても人間ではないですにゃ!」
(シーン)――エアブースト
ブーストオーラにて空気に触れた闘気を空気中に定着させ足場を作る。更にその足場で閃光脚を使用し、加速して移動する。
ブーストオーラは全て消費する。
「今がチャンス! 話してる場合じゃないよ!」
シーンは即座に詰め寄り、修復が始まった個所に通常弾で追撃した。
その間、オリアは魔方陣を描き終わっており、発動準備は整っていた。
「わりい、私は10分間何もできないぜ!」
「あとは任せてくださいにゃ」
(リッタ)――ウォールアタック!
闘気を全身に溜め込み、剣先を相手に向けて突撃する。
「にゃあああ!」
リッタの同じタイミングで態勢を整え、次の技を繰り出した。
――ザンッ!!
シャドウキメラは頭を伏せており、急所の胸部までは少し届き切っていないようだが、動きは完全に止まっている。
「これで決めますにゃ!」
(オリア)――ホーリーランス!
ライトウイスプを形状形態変化し、光の槍を飛ばす。
射出速度が異常に早い
~~グォォォォアア!
胸部付近全てを吹き飛ばされたシャドウキメラは形状を維持する事が出来なくなり、そのまま大量の魂片をばらまき、消失した。
「やったぜ!!」
「初のランク9討伐だにゃ!」
4人はハイタッチをして喜んでいた。
その姿をフィアンとネビアは少し遠目で見ていた。
「俺達の出る幕はなかったな」
「ですね、素晴らしい連携でしたね!」
「あいつらも強くなったんだなあ……」
「あはは、フィアン、何しみじみとしてるんですか。あっちの方が年上ですよ?」
「いや、もう精神的には俺達30を軽く超えてるんだぜ? そりゃこうなってくるだろうよ」
「そうですね……前の年齢に追いつくのもあっという間かもしれませんね……」
そんな話をしながら皆は窮地を乗り越えたことを喜んでいた。
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