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237話 登山中……

 『(前略)"瘴気の山の頂上にはとてつもない量の財宝が眠っている"

 いつからだろうか……このような噂が私達[財宝ハンター連合]で流れ始めていた。

 瘴気の山に入るなど死にに行くようなもの……と遥か昔から言われていたのは周知の事実だったが、近年装備の品質も上がり、魔法も発達して来ていた為、今の技術なら登頂は可能ではないかとの判断が連合に下された。

 そう決定してからは行動は早かった。ありとあらゆる装備を持ち、現段階では最強装備と言える準備を各自行った。

 私を含め、連合のメンバーは久しぶりの大仕事に対する大きな期待感を持ち、財宝は何に使うか? どうやって分けるのか? 等の話を肴に大きく盛り上がっていた。(中略)

 入山の日がやって来た。財宝ハンター連合、計50名は登頂を目指し歩みを始めたのだ。

 入山した瞬間、嵐のような瘴気が吹き荒れており、予想を遥かに超える過酷な環境だった。2時間程で隊員の3分の1は倒れ、その者達は下山を余儀なくされた。

 孫状況でも、隊長含め残りの者は歩みを止めず突き進んだ。

 それから僅か8時間後、隊員は残り5名となっていた。私自身も限界が来ており、下山を要求したが隊長は首を縦に振ってくれなかった。

 死の予感がした私は視界の悪さを利用し、そこから逃げ出し下山という選択を取った。(中略)

 その後辛うじて帰還した隊員も、吸い込み過ぎた瘴気を自身の魔力と闘気で浄化する事が出来ず、下山後に多くの者が命を落とした。(中略)

 教訓はただ一つ。[瘴気の山に近づいてはならない]ただその一言である。』

 ([財宝ハンター連合]解散 30年目の真実 著:冒険者ギルド 情報収集担当)


・・・

・・


――数日後


「よし、暗くなってきた! 瘴気も少し弱まり始めたようだぜ!」

「じゃぁ飯食ったらすぐ行くかにゃ~」


「いくら寝ても夜は眠いな……」


 シーンはそんな事を言いながら床をごろごろしている。


「シーン! しっかりしろって! 寝ぼけてる場合じゃねーぞ! てかフィアン! お前もだぜ!」

「え……もう朝……?」

「夜だぜ!」


 フィアン達はこの数日で、瘴気の山について分かったことがある。

 まず、砂嵐の様に絶え間なく吹いている瘴気の風は必ず瘴気の山を真上から見て時計回りに吹いているという事である。この風の流れは今のところ変わることがない。また、瘴気の風は夜になると少し威力が弱まるようだ。

 風の流れが読める故に、野営地(岩のお家)を建てる場合は屋根部分の風の抵抗を減らすために斜めに設置、窓部分を作る際は砂嵐が直接入らない反対側へと作った。

 入山初日にケイト達は野営地を設置しようとしたが、やはり風が強すぎる為、火を起こすことが出来ない上、簡単なテントだとすぐに吹き飛ばされてしまった。

 こんな嵐の中眠れるわけもなく俺達と一緒に野営する事になったのだ。


(これで試験失格とか言われたら俺は断固として抗議してやる……!)


 フィアンはそんな事を思いながら、準備を行っていった……。


「にしても……山の中腹すらまだ行っていないというのに、この瘴気……上に行くと更に濃くなるんだろうか」

「遠目で見る限りはそんな感じですよね。上に行くにつれて黒いですし」

「はぁー。 今ですら結構やばいのに中腹よりさらに少し上に行かないといけないとかあいつらまじで大丈夫かな……」

「心配ですね……でもフィアン、この瘴気の苦しさ……覚醒の泉に入った時を思い出しません?」

「あー……確かに! なんか知ってる感覚だと思ったんだよな。それだわ!」

「まぁ泉の時は息が出来ない上にこの瘴気のしんどさみたいなのが身体に来てましたけどね……」

「この瘴気に耐えられなかったら覚醒出来ないってのはあながち間違いではないって事だな」


「おい、そろそろ出発するぜ?」

「おっけー! 今行くよ!」


 俺達は再び、瘴気の嵐に飛び込む……


・・・

・・


――更に数日後


「はっ……はっ……」

「にゃー……」

「……」


 いつも元気いっぱいのケイト含め、皆の口数がかなり減っている。

 現在地は中腹辺りと言ったところだろうか。

 この高度を保ったまま目的の近くまでは進んでいく予定だ。


「シャドウが出てこないのが本当に幸いだな……」

「そうですね。この環境では流石にシャドウも生活が出来ないのでしょうか……」

「あいつら……マラソンの終盤みたいな顔になってんぞ……」

「休憩回数を増やした方がいいでしょうね。その点はケイトが判断するでしょう」


 そんな会話をしている時、ケイトは歩みを止め言葉を発した。


「よし、一時休憩しようぜ。ネビア! 毎度すまない! この大きな岩に立てかけるように、屋根だけ設置してくれないか……?」

「その位、朝飯前ですよ!」


――ロックウォール


 ネビアは言われたままに指さされた大岩に立てかけるように屋根を1枚設置した。


「ふー……消耗がやべえぜ……」

「なめてたにゃ……瘴気の山をなめていたにゃ!」


 4人は腰を落とし、水や干し肉に食らいついている。

 体力回復にはやはりタンパク質も重要だ。

 ……この世界ではタンパク質じゃないかも知れないが……。

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