219話 決着……?
俺は回復の絶好のチャンスだと思い、全てを説明した。
ギルとの出会い、その後天族にされた事、今は俺の両親とギル達が襲われどうなっているかわからない事……
「そんな馬鹿な……」
それを聞いたウェイズは軽く戦意喪失をしている。
「おい、どうしたんだよ? お前は一体何なんだ?」
一呼吸おいてウェイズは口を開いた。
「私は……ギルとミリュの父親だ……」
「……まじかよ」
「く……ッ!」
ウェイズはそのまま俺に背を向け、その場を去ろうとした。
「おい! どこ行くんだ――」
~~チェーンライト
「ぐっ!! なんだ……!?」
「フィアン君の言う通りじゃよ。ウェイズ、敵を放って何処に行こうというんじゃ?」
「大天使様……!」
「ほれ、さっさと始末せんか」
チェーンライトで縛られたフィアンは空中で留まり、そのままウェイズの前に持って行かれた。
「ぐぅぅ……!」
「大天使様、フィアンは私が始末します。ですが、一つだけ教えてください」
「こんな時に質問とはのう……」
「大天使様……壊された村の、私の子供達は天上要塞へ受け入れてくれたのですよね……?」
「……もちろんじゃよ、天上要塞の居住区で元気にやっておるわ」
「このフィアンと言う者が私の村にて、子供二人置き去りにされていたのを見たと……」
「……このような堕天使の言葉を信じるというのか?」
「完全に信じている訳ではないですが……大天使様! 私の子供たちは何処に住んでいるのですか? もはや確認せずには何も信じられません」
「こんな非常時に貴様は何を言うておるか!! これは天族全体の危機じゃぞ? 分かっておるのか!」
フィアンは今まで見てきた、温厚な大天使とはまるで別人のような大天使に驚きを隠せなかった。
「む……ヴィンティスめ! やられおったか!」
大天使はゆっくりと宝珠の方へと移動していく……
「ウェイズよ! 貴様はこのフィアンの妄言を信じここでやめるか? それもいいが、もし嘘ならどうする……? ここで動かなければ天上要塞の子供達はどうなっても知らぬぞ?」
「大天使様……くっ!!」
ウェイズはその場でかなり迷っている。ここで俺が話して説得できればいいのだが、チェーンで口を防がれていてまったく話す事が出来ない。
「ウェイズよ! とにかく貴様はヴィンティスを見てこい! 今すぐにじゃ!」
「……承知いたしました」
ウェイズは納得しきれないまま、大天使が最初に通った場所へ行き、どこかへ姿を消した。
「さて、フィアン。君は本当に邪魔をするのが好きなようじゃ」
大天使はフィアンの口を防いでいたチェーンを解除した。
「ぶはっ!」
「なぜこのような事をするんじゃ。天族を絶滅させたいのかの?」
「俺は……母さんを救いたいだけだ!」
「それが!! 天族を滅ぼし世界を終わらす事と同義なのじゃ!」
「……ッ!」
「フィアンよ、お主は何も分かっておらぬ。今、聖母達を失っても天族達は寿命が長い故に少しの間は影響は出ないじゃろう。じゃが、そのまま月日が流れると純天族は確実に数を減らす! そうなれば、覚醒の義式を行える者も居なくなり、覚醒天族も数が減る……」
「覚醒の義式……?」
「そうじゃ。フィアンが天族に覚醒したあの泉の儀式じゃよ」
「……だとしても天族の数が減るだけだ。世界を終わらすって……何の関係があるんだよ」
「そんな事を……堕天使のお主に行っても無駄じゃ。とにかく堕天使全員を止めれば今まで通り平和になるんじゃ!」
大天使は宝珠に手をかざした。すると、宝珠は輝き始め、それと連動するように牢獄のウォーターボール一つが光り始めた。
「何だこの大きな力は……!?」
フィアンは宝珠が放つとてつもない力に底知れぬ畏怖を感じていた。
その後すぐに光ったウォーターボールがばしゃっと割れ、中からこぼれ出すように一人の人が出てきた。
「フィアンよ。貴様の相手はこいつじゃ」
こぼれだすように出てきた人は俺のよく知る奴だった。
「ネ……ネビア?!」
「さて、ネビアよ。目の前の奴が敵じゃ」
「……はい」
「ネビア? おいどうしたんだよ!!」
ネビアは無表情なまま俺の姿を見た。顔に生気が全く無い。一体どうしたんだよ……!
「ふぉっふぉ。宝珠の力を使えば、長い年月この牢屋に入れてなくともすぐにこのような廃人になる! 本当に素晴らしい力じゃよ!」
「大天使……!! お前、ネビアに何をしたんだ!!」
~~シャドウスピアー
「うぉっ……くそ!」
「では頼んだぞ。ネビアよ」
「ちっ!!」
大天使はそういってまた姿を消した。
ネビアが相手とか……いったいどうすればいいんだよ……!




