216話 ヴィスターンvsヴィンティス②
(熱い……僕は死ぬのか……)
朦朧とした意識の中、ヴィスターンは真っ白な部屋に一人ポツンと立っていた。
(……?)
ふとその真っ白の部屋の中央に目をやると、禍々しく光る、黒い球が浮いていた。
(これはなんだ……)
――死にたくなければ……触れるがいい……
(誰の声だ……だが……)
死にたくなければと言う言葉にヴィスターンは強く反応した。
(僕は死ねない……姉さん……!!)
ヴィスターンはその黒い球に吸い込まれるように近づき、右手で思いっきりその球を握った。
その瞬間、真っ白だった部屋は黒い球から茨が伸びるように黒が侵食していき、真っ暗な部屋となった。
・・・
・・
・
「ぐ……抜けぬ」
ヴィンティスは胸に刺さった剣が何か見えない力で抜く事が出来ないことに戸惑いを隠せないようだ。
~~ゾクッ!!
「何だ……!?」
ヴィンティスは目の前で死んでいるはずのヴィスターンから放たれていた、おぞましい黒い気配に畏怖した。
「ぐっ!」
胸を貫いたヴィンティスの剣が突然ヴィスターン側から深い黒に染まっていく……
ヴィンティスはすぐさま危険を感じ、剣を離して後退した。
「何が起こっている……」
「ああ……あア……!」
胸あたりから発生したその深い黒はヴィスターンを侵食するように覆いつくしていった。
その異様な光景にヴィンティスの目は釘付けとなっていた。
――ボッ
黒の瘴気にヴィスターンは身体全てを包み込まれた。そして、静かに意識を取り戻し、ヴィンティスを見た。
その姿は全身真っ黒で深い瘴気で覆われていた。
それはまるで……
「この気配……禍々しさ……まるでシャドウ……!!」
「ヴィンティス……今なら貴様をすグに殺せそうダよ……」
――シャドウエクスプロージョン
周囲に存在する影を爆発させる。
「ぐお!!」
ヴィンティスは今回、初めてダメージを負った。
「ちっ!!」
~~闇ノ一太刀
天力を混ぜた闘気を剣先に込める。闇を纏った一閃を放つ。
すぐさまヴィンティスは態勢を整え、もう一本の剣で剣技を放った。
――シャドウアサルト
自身の身体を周りの瘴気に溶け込ませ、その状態で相手に突撃する。
「がはっ……!!」
ヴィンティスの放った剣技をヴィスターンは自身の身体を瘴気化し回避、そのままヴィンティスを切り刻んだ。
「その技……何故お前が[影型]の剣技が使えるのだ……!!」
「影型? ……聞いた事がない型だネ。だけど、これも閃きかな? 身体にとても馴染んでいくよ……!」
「馴染むとか……そういう次元の話ではない……[影型]はシャドウにしか使えない剣技……元天族のお前が使用できるわけがないのだ……」
「僕にとっては、どうでもいい話ダね。貴様を倒せるのなら、僕は何にだってなってもイいよ!!」
ヴィスターンは、満身創痍で倒れたヴィンティスに向け、剣を振り上げた。
「ふ……お前はそういう奴であったな。どうせなら……このまま突き進み、姉を救って見せろ」
――シャドウブラスト
瘴気を溜め、剣を振り切る。半月状の影と瘴気を放つ
ヴィスターンの放った剣技でヴィンティスは両断され、そのまま魂片へと還っていった。
「原因の一部である貴様の吐いていい言葉ではなイよ。最後のハね……」
「……ぐっ!!」
ヴィスターンを纏っていた瘴気は消え、そのまま倒れこんだ。
上半身の鎧は完全に消失しており、半裸状態になっていた。
「くそ……身体が動かないそれに、記憶が曖昧だ……」
ヴィスターンは仰向けで大の字になって倒れた。
そしてそのまま、意識を失うように眠りについた。
ヴィスターンの胸には放射状に伸びた、拳程の大きさに真っ黒な痣のようなものが浮かび上がっていた……。




