208話 作戦開始!
『かつて、最高のダンジョンアタッカー達と呼ばれた美しい女性4人組のレジェンドパーティが居た。
天族と獣人族のパーティであり、あまりの強さから、その4人で一国を滅ぼす事ができる力がるとさえ言われていた。
しかし、そのパーティはどこの国にも属さず、世間には興味も無い。目標はただ一つ……地下ダンジョンの踏破であった。
レジェンドパーティ[ヴァルキュリア隊]
突如姿を消したヴァルキュリア、トール、ベレヌス、イシス……彼女達の居場所は誰にも分からない……』
(ダンジョンマスターへの道 著:エリリア)
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――作戦日前日
「よし、全員集まったな!」
いつも集合する場所に俺達は集まった。気がつけば作戦前日の日まで来た。しっかりと作戦を叩き込み、理解しなければならない。
「むにゃ……」
アリシアは横の席で座ると同時にぐっすりと寝ている。こいつまじで大丈夫なのかよ……。
「フィアン君が持ってきてくれた情報なのだが、これがあって本当に助かったと言うべきだろう」
ガイアは俺の渡した地図をデバシーで拡大し表示させた。
「このように、天上要塞の内部はかなり大きい。これが空中を浮遊しているのかと驚愕した物だが、実際は違うようなのだ」
すると、ガイアは横から見た地図を大きく二つに分離させた。ぱっとみの感想としては、新幹線の頭の部分の形、もう一つは亀の甲羅の様な形だ。
「我輩達が侵入する予定なのは、この長細い地図の方……つまり、こっちの天空に浮いている天上要塞とされている場所だ」
そのままガイアは長細い方の地図をタップし、拡大した。ガイアもちゃんとデバシーを使えるんだな……。
「お、何だか見たことのある地形だな。中層は特によく分かるよ」
「上層の形は僕も分かる。何も変わっていないな、僕が出て行った時と同じだ……だがここは……?」
ヴィスターンは地図に映し出された上層部分に注目した。どうやら違和感のある場所があるみたいだ。
「ヴィスよ、お主が見ている場所は新たに増設された場所だそうだ。ここ数年でな」
「だろうね……。こんな場所は知らないし、断罪の間と姉さん達の捕まっている部屋はどこに行ったんだ……?」
「それはこっちだ」
ガイアは甲羅型の地図に触れた。そこには断罪の間という文字も描かれていた。ただし、正確な位置までは掴めていない様だ。
「ならこっちの甲羅型を僕達は攻めるわけだね……!」
「その通りだ。断罪の間の近くに必ず捕らえられているはずだからな。聖母達を拘束する為にはあの球の力が不可欠だからな」
「僕の天衣を奪ったあの忌まわしき球か……」
話は球の方へと向いているが俺はどうしても気になった事を質問した。
「てか、天上要塞は浮いてるんだよな? んで、このサイズ比は実際のサイズだろ……? こっちの甲羅型の地図、俺達が見てきた天上要塞の5倍くらいでかいよな……こんなサイズで浮かす事ができるのか……?」
「我輩もびっくりしたが、どうやら甲羅型の方は浮いてるのではなく、別の場所に建てられているようなのだ。入る方法は天上要塞の転送装置を使うしかない。入り口は設置されているようだから、そこに入れさえすればこの甲羅型の内部に侵入は出来るだろう」
「そこに直接レッドの大精霊で精霊界経由で飛んだりできないのー?」
アリシアが突然質問を投げかけていたので少しびっくりした。ちゃんと聞いてるんだな……。
「それが一番良かったのだが……無理なのだよ」
「えー、残念」
「甲羅型の建物はこの世界どこを探しても見当たらなかったのだ。もしかすれば瘴気の山の方にあるかもしれないが、それならばどちらにしろ探す事は出来ない。あの瘴気には耐えられる者は居ないからね」
「そういった理由で我々はやはり当初の予定通り、この天上要塞から侵入し、甲羅へ行く転送門を目指すしかないのだ!」
とりあえず、概ね状況は理解できた。
この情報に間違いが無ければ……だが、俺はネビアを信じている!
「では状況説明が終わった所で侵入後の動きを説明していくぞ」
朝から始まったこの会議は続き、気づけばその日の夕方となっていた。
その日は早めに解散し、各々作戦当日まで待機していた。
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――作戦日当日
「いよいよですね、フィアンさんっ」
「そうだな。不安は色々あるけど、やるしかねーな……」
前日の夜は眠れる気がしなかったので、極意瞑想で過ごした。下手に寝るよりかなり集中できている気がする。
俺は今となっては一番馴染む、真っ白のコートを羽織り、白金マスクを装着した。まぁこのマスクをしていた所で、天衣を使えば一発で誰だかばれてしまうけどな。
「ルーネも一生懸命サポートします! 必ず皆を救出しましょうっ!」
「そう……だな」
どうしてもネビアの事が気になってしまう。俺は……俺はネビアと戦わなければならないのか……?
「ルーネ……。テーネと戦う事になっても、お前は平気なのか?」
このタイミングでこの質問をするのは本当に俺は何を考えているのか……。
「そうなってしまったらルーネは初めてですが、精霊同士の争いは昔からよくあるんです。契約者様同士が敵対している事なんて結構ありましたからねっ」
「そうだったのか……」
「でも、その戦いたくない気持ちはネビアさんも一緒ですよっ! きっと大丈夫ですっ! さっと救って帰りましょう!」
「ルーネ! ありがとうな!」
俺はルーネを抱きしめた。ルーネには気持ちの面で助けてもらってばかりだな……。
「必ず皆を助けるぞ! ルーネ! お前は俺が守るから安心してろ!」
「はいっ! 信じてますよっ!」
腹を括った所で、俺達は作戦開始の時を待った。