21話 剣と魔の聖域
アルネさんから話を聞いて、学校に行きたいって思うようになったけど、両親にどう切り出そうか……。
そんな事を思いながら、いつも通り森の中で剣、魔法の特訓を行っていた。いつも通りというか、ダンジョンから帰ってきてからは少し特訓方法が変わった。
「フィアン! 光属性を乗せるときは意識を剣先に集中しなきゃですよっ!」
「それがよくわからないんだってー!」
「こう、手の延長って感じで剣をですね……」
「……ネビア、光の球だと威力が半減するから闇に変換……はやくして……」
「いや、もう少しアドバイス的なのは無いですかね……」
俺たちはルーネとテーネ先生の元、俺は光属性の剣術、ネビアは闇属性の魔法の特訓を毎日続けている。
今までは、両親が先生だったけど今はルーネとテーネ、剣術稽古にはアルネさんが付き合ってくれている。精霊や天族から直々に指導を頂けるなんてすごいことな気がする……。
ルーネとテーネは俺たちと契約し、覚醒した後は思い出したかのように光と闇の魔法のほぼ全てを理解したらしい。全てってなんだろう……。少なくとも俺たちのもらった知識以上だろうな、精霊だし。
俺たちも知識はついたが、正直それを使用するのにかなり苦戦していた。頭でわかっていても身体が理解していないというのだろうか。とにかく、試練もこない以上まずは俺は光、ネビアは闇をしっかり使用できるようになろう。
学校とかその辺はそれができるようになってからだ。
とりあえず、一旦自分なりにやりたい事をまとめてみた。
・俺は光の剣術、ネビアは闇属性の魔法を使えるようにする。
・二人が融合し、一人になった事象について調べる。
・学校に行く。
・ネビアのグローブを入手。
・試練をクリアする。(試練を貰えたらだが。)
ひとまずこんな所だろうか。
やる事いっぱいでわくわくすっぞ!
・・・
俺は光の剣術、ネビアは闇の魔法の勉強をしながら気が付けば2年。俺たちは今日で7歳になる。いつも通りに森での特訓を終え、家に帰ると――
「フィアン、ネビア! 7歳の誕生日おめでとう!」
両親とアルネさんがそこにいて、少し豪華な食卓が並んでいた。
「え! これは何ですか!」
「7歳になったら親から子供に、ライトペイントの魔法を教える大事な歳なんだ。元気に育ってくれたお祝いと、ライトペイントをうまく使えますようにって願いを込めて誕生日には美味しいものを食べるんだよ」
ライトペイントってのは7歳になって初めて親から子へ教えられるものだったんだな。
「まぁ君たちは二人ともとっくに使えるし、僕たちより断然強いけどね……」
ゼブは微笑みながらそう言った。
この世界にも誕生日的なものはあるらしい。にしてもライトペイントを教わり始めるのが7歳か……物凄く遅い気がするな。自分に子供ができたらとりあえずすぐに教えたいものだが。
「みんな! ありがとう!」
俺とネビアは声を揃えて感謝を述べた。精神的にはもういい歳だが、こんな風に祝ってもらえるのは純粋に嬉しかった。この気持ちをなんと表現すればいいのか……とても幸せな気持ちで満ちていた。
「んで、プレゼントなんだけれど、二人ともこれを受け取って!」
母さんがそういうと、俺達に綺麗な赤色の石と青色の石がついたネックレスを手渡してくれた。
「わあ、凄く綺麗ですね!」
「うんうん! 何の石なの!」
「えーっとそれわねー……。ゼブ! 説明してあげなさい!」
母さんは何の石か分からないようだ。でも透き通った色で本当に綺麗だ。よく見ると、細かい模様みたいなものが宝石内に埋め込まれている。
「赤いのは紅の瞳、青いのは空の瞳と呼ばれている宝石なんだ。お守りの様なものだよ。もし、命の危険を感じた時は、このお守りに力いっぱい魔力を込めてみなさい。それは一度しか使えないが、二人を助けてくれるよ」
どう助けてくれるのか、具体的なところは教えてはくれなかったが、大事に持っておこうと思う。
「有難う御座いました!」
「あとこれも渡しておかないとね!」
ティタがそういうと、小さな袋をそれぞれに手渡してくれた。中身を見てみると、シャドウを倒した際に出てきた塊が入っていた。数えてみると、濃い黄色が1個、薄い黄色が5個、無色が10個……ネビアも同じ量だな。
「これは、シャドウが出すやつですよね?」
「そうだね。やっぱり二人とも知っていたんだね」
「いや、見たことはあるけど……これは何に使うの?」
「それは魂片といって、お金なのよ。これでお買い物が出来るわ! 無色10個で薄い黄色1個、薄い黄色10個で濃い黄色1個分の価値があるのよ!」
なんと……これが通貨だったのか! これ、洞窟探索でも最初の方は集めてはいたけど、途中から何に使うか分からないから落としたままにしてたぞ! 後で回収に行かないといけないな。
「これがお金の役割だったんですね! でも、増えすぎると大変そうですね。無色の奴とか……」
ネビアの言うとおりだ。無色の奴とか、いっぱい落ち過ぎて拾えなかった。みんなどうしてるんだろうか。
「それは大丈夫だよ! この魂片は魔法で変質できるんだ。ちょっと見ててごらん」
ゼブはそういうと、1枚の触媒紙を取り出し、無色の魂片を12個その上に置いた。
「コンバージョン!」
そういって、ゼブが魔力を触媒紙に込めると無色の魂片は光りだして一つになり、薄い黄色の魂片へと変化した。
「こうやって、多くなったらまとめていけるんだよ」
「でも無色10個で薄い黄色1個の価値なのに、今12個だったよね?」
「そうなんだよ。術者の魔法精度によって必要数が前後するんだ。無色10個に帯びてる魂をうまく変換できれば10個でいいんだけど、もし上手く変換できなければ、全部消失してしまうんだ。そうならないように保険で余分に混ぜるんだよ」
「全部消失!? それはかなりリスクが高いですね……」
「昔は魂片を変換する両替士がパーティには必須だった。だけど、この触媒紙がでてからは、魔力さえ上手く込めることが出来れば少し余分に混ぜることで誰でも変換が可能になったから両替士は……」
「いや、便利になる事は凄くいい事ですよ! 難しかった事が便利に出来るようになったら多くの人が救われます!」
「はは……そうだね。ありがとう」
昔あった職業が機械化で無くなる事は良くあることだ……。多少の犠牲があっても、そこで立ち止まるくらいなら進む方がいい。たぶんね!
「とりあえずこれで、明日村のお店で買い物をするといいよ!」
その後も美味しい物を食べながら、お祝いが続いた。
長い、楽しい夜になりそうだ。