206話 侵入者
――天装・光裂斬
天力を混ぜた闘気を剣先に込める。光を纏った一閃を放つ。
「油断したなヴィスターン!」
「なっ……!」
ヴィスターンは俺の一閃を受け両断され、そのまま結界は光り輝き二人は元に戻った。
「俺の勝ちだなヴィス! 助かったよルーネ」
「はいっ!」
「くそ! 最後のは完全に当たっていたはず……! 一体何故なんだ!」
「俺も隠してた技を使っちまったよ……」
「光の聖域ですっ!」
「光の聖域だって……?」
光の聖域
1秒の間、ルーネと契約者を光に変える。(一度使うと1週間程使えない)
「言ってしまえば、1秒間だけ、全ての攻撃を避ける事が出来るんだよ……!」
「な……! そんな技を隠していたなんてずるいぞ! それにこれは1対1の勝負! ルーネの技を使うなんて卑怯じゃないか!」
「何を言ってるんだ……? ルーネと俺は一心同体だぞ☆」
「そうですっ! えへへ」
「くそ……! また僕の負けか……」
「ただ、これを今使わされるとは思わなかったよ。光の聖域、一回使えば1週間は使えないからね。結界の中で良かったよ」
「は……? フィアン、クールタイムがある技は、結界で巻き戻っても解消されないんだが……?」
「え……?」
「君は馬鹿か! 何故ガイアと戦ってそれに気づかないんだ? ガイアの剛拳無頼は結界で元に戻った後は使えてなかっただろ! あれも1日1発しか撃てないからな!」
「えええ! 一緒に戻ると思うでしょ普通!」
「まぁこればっかりは僕も原理はよく知らない……。一説には結界の効果は治癒を重点的に行っている。クールタイム(代償)までは戻す事が出来ないのだろう……そもそも自然の摂理として、大きな力の代償は何があっても覆せないのかもしれない」
「え、じゃあ俺今度の作戦でこの技使えないじゃねーか……」
「そうだよ! まったく……そこまでして僕に勝ちたいのか」
「そりゃそうだろ! 勝負ってもんは勝ってなんぼだろう!」
「でも、それが無ければ僕が勝てそうだな。もう一回やるかい?」
「はっ! 望む所だ! 一回見たら対処は出来るっての」
「二人とも! 良い試合だったよ! 本当に素晴らしいものを見せてもらった。だが……今日はここまでにしておくんだ。どうやら近くに誰かが迷い込んだようだ。ヴィス、早速だが確認してきてくれたまえ。フィアンは待機だ。場合によっては戦闘になる」
「なんだと……。迷い込むような場所じゃないだろう、ここは……とにかく仕方が無い。すぐに見てこよう」
ヴィスは表情を変え完全に仕事モードに入った。
このアジトはトゥーカにあったレッドの別荘と同じく、より高度な魔力で周辺含め、大きく隠蔽されている。
そのアジト周辺に自力で入ってきたとなれば相当の実力者だと推測できる。
「ヴィス、交戦は極力避けるのだよ? 情報収集にのみ集中してくれたまえ」
「分かっている。では、行って来る」
そういってヴィスはアジトを後にした。
「ふう、このタイミングで侵入者とは、幸先悪いものだ。まったく」
「ヴィス、一人で大丈夫かな……?」
「交戦は避けるように言ったのだ。大丈夫だろう」
「そういう条件なら俺の方が良かっただろ? デバシーで連絡も取れるしさ」
「……まぁとにかく信じて待とうじゃないか」
やっぱり俺はまだ信用されていないのだろうか。今日迄一度も、一人での作戦をさせてもらったことは無い。
強いて言えばこの前の買い物が初のソロ任務か……。まぁその初の一人任務でネビアにあってしまってる時点で、レッドの考えは間違ってないんだろうな。自分で言うのもなんだが……。
「いつでも出られるように瞑想しておくよ」
「うむ。それがいいだろう」
俺はそういって自室に戻る事にした。
――――
――
(あいつらは一体……! )
ヴィスターンは闇属性に関しては非常に強く、シャドウウォーク等もフィアンに匹敵するレベルの技だ。
今の所気付かれている様子は無い。ヴィスは声が聞こえる所まで寄る事にした。耳が非常に良いヴィスなら、十分ばれない位置から音を拾うことが出来るだろう。
・・・
(天族でも、堕天使でも無さそうだね。闘気も魔力もあまり感知できないのが解せないな)
限界まで近づき、何とか声を拾えるところまで来たヴィスは会話に耳を傾けた。
「ベリウロスー、みつからねえよぉ。もうかえろうぜぇ?」
「まぁ待つんだ。別に視認する必要は無い。私の領域に入れば大体の強さは分かる。それを見れば、どちらが勝つのか、概ね判断できるだろう」
「別に、どっちが勝ってもいいんじゃねぇの? だって、最終的には……」
「ギュンよ。お前は気づいてないのか? それ以上先はNGだ」
「は?」
ヴィスはかなり遠くに居るはずのベリウロスと目が合った気がした。
(ちっ! やばい……! ばれている! )
――ガンッ!!
「がは……ッ!」
瞬時に危険を感じ、ヴィスは撤退しようとしたがその瞬間、そいつは目の前に現れ、ヴィスに重い蹴りを入れた。
「おや、何時ぞやの奴かと思えば、君は誰だ? シャドウウォークの精度が似ていたから勘違いか……」
ベリウロスと呼ばれていた男はヴィスの首を掴みながら話した。
「ぐ……何の事……だ」
「にしても、君はガイアでは無いようだな」
「ふっ。分からないぞ? 僕がそのガイアかもしれないぞ……?」
「はっはっは。君がガイアなら天族に勝てる未来は無いだろうな! 今の五光星には手も足も出ないだろう」
「お前ら……。五光星のことを知っているのか……?」
「まぁ今はどうでもいい。場所は分かった。ギュンよ、行くぞ」
「あ? ああ……。こいつはぶっころさなくていいのかぁ?」
「もちろんだ。貴重な堕天使側の戦力だからな」
(なんだ……なんで場所が分かったんだ! このまま行かす訳には行かない。僕がここで止めなければ……! )
――堕天衣・黄昏!!
「貴様ら待て。僕が相手をしよう」
ヴィスターンは戦闘態勢へと移行した。