198話 ヴィスターンの過去④
目の前に居る姉さんが他の女性同様に鎖につながれている姿を見て、ヴィスターンの思考は停止した。
「お、お目が高いな。こいつを選ぶとは!」
男はヴィスターンの姉さんの身体を乱雑に触った。
「こいつは最高だったぜ? 今は使用出来る時間ではないが、その時が来たらいつも満員だ」
「……触るな」
「は?」
「その汚い手で姉さんに触るな……!」
ヴィスターンはその男の手を払った。
「何してんだお前。あんまり調子に乗ってると殺すぞ……?」
――ザンッ!
「あ……? ああああ!!」
ヴィスターンはまた姉さんに触れようとした男の手を両断した。
「お、おまえ!! なにを……! おい! 五光星を呼べ!!」
「黙れ……」
――ザッ……
ヴィスターンはそいつの首を刎ね、絶命させた。
「ひ……ッ!」
ヴィスターンは自身を止める事ができなかった。その場に居る男は全て汚物にしか見えなかったのだ。
「……全員死ね」
一瞬で残っていた男6人を殺し、姉さんの元へと向かった。
「姉さん……! 今助けてあげるからね……!」
~~チェーンシャドウ!
「ぐっ!」
「ヴィスターン……お前が全員やったのか……?」
「……」
ヴィンティスは無残な姿となり、魂片になっていく男達を見渡した。
「即死だ……もう間に合わないようだな……」
「離せよ……! 姉さんを助けるんだよ!!」
「五光星として……お前の同族殺しを見逃す事は出来ない。このまま断罪の間へ連行する」
「おい……! 父さん……いや、ヴィンティス!! お前は知っていたのか! 姉さんがこんな事になっている事を!!」
ヴィンティスは少し黙り込み、その後口を開いた。
「これも……天族が生き残り、繁栄する為に必要な事だ」
「やはり知っていたのかヴィンティス!!」
「要塞兵よ。こいつを連行しろ……」
「ヴィンティス!! 僕は……見て見ぬ振りをしたお前を許さない!!」
――ガンッ!
「うっ……」
ヴィスターンはヴィンティスの不意打ちにより、意識を失った。
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「くっ……!」
ヴィスターンは両手を鎖につながれ、武器防具も取り上げられ、上半身裸の姿となっていた。
目の前には大きな光る球の様なものが浮いており、それからは非常に強力な力を感じる。
そして、その球の横には覆面の見たことの無い人が立っている。そして、その周りには父さんと他の五光星と思われる奴らがいた。
「ようやく目覚めたかヴィスターン。私は天上要塞断罪者である」
「……」
「貴様の過ちは全て見させてもらった。神聖な天上要塞での複数の同族殺し……とても擁護できる物ではない」
断罪者と名乗る者が持っている杖をかざした。すると横にある球が更に光り輝いた。
~~強制天衣開放
「なんだ……? 僕の天衣が……」
球が大きく光ると、ヴィスターンの天衣が己の意思とは関係なく発動した。
解除する事もできない。
「ヴィスターン。貴様を堕天の刑に処す」
「ぐっ……くそ……!」
ヴィスターンの片翼に鎖の様な物が巻きついていく。
「ヴィスターンよ。天族として最後に発言を許そう」
「……あんな事を……姉さんがあんな目に遭わなければならない種族……天族など……! 滅んでしまえば良い……」
「それだけか。では執行する」
ヴィンティスの表情はよく見えなかった。何を考えているのかもヴィスターンには理解できなかった。
――ザン!
「ぐ……あああああ!! !」
片翼を落とされる痛みは想像を絶するものだった。全身に強烈な痛みが走り、失神しそうになる……。
「このまま地上へ落とせ。ヴィスターンよ。貴様は天上要塞から、永久追放である」
片翼を落とされ、地上へ投げ込まれたヴィスターンはこの時堕天使となった。
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